生まれつき、驚異的な自己治癒能力を持っていること。それが私、望月知尋(もちづき ちひろ)という人間のすべてだ。沢田修平(さわだ しゅうへい)にとって、私は彼の「想い人」のために用意された、ただの生きた薬箱に過ぎない。彼女を生かすため、修平は私の心臓から99回も血を抜き取った。最初は彼の巧みな手口に騙され、最後には自ら差し出すようになった。そこに至るまで、たったの5年。修平が角膜をよこせと言えば、私は差し出した。富永麻里奈(とみなが まりな)と腎臓を交換しろと言えば、大人しく従った。そして、修平が100回目の心臓の血を求めてきた時、私はただ静かに微笑んだ。彼は知らない。私の心臓が100回傷ついた時、この世界から完全に消滅してしまうことを……*修平は小切手を私に投げつけた。「今回の代金だ」私の体の一部を奪うたび、彼は決まって小切手を押し付けてくる。まるで私たちの間には、金銭の取引以外の関係などないと言わんばかりに。周囲に咲く花に目をやり、修平は不快そうに眉をひそめた。「麻里奈は花粉症だ。次はここに来るな」麻里奈に最高品質の血液を提供するため、この数年間、修平は彼女の生活習慣を私に強要し続けてきた。麻里奈が花粉症だという理由だけで、庭の花をすべて引き抜いてしまったこともある。彼は忘れている。その花がかつて、彼と一緒に植えた思い出の花だということを。私は彼の言葉を無視し、花畑の奥へと歩を進めた。その態度に、修平が苛立ちを募らせる。彼は乱暴に私の腕を掴んだ。「戻れと言っているのが聞こえないのか?」声のする方へ顔を上げるが、彼の瞳と視線が合わない。焦点が定まっていないことに気づいたのか、修平は怪訝な顔をした。「お前の目……」「見えないの」私はどうでもいいことのように答えた。修平は一瞬呆気にとられたようだったが、すぐに嫌悪感を露わにして私を突き放した。「可哀想なフリはやめろ。もう回復しているのは分かっている」確かに、私の治癒能力は高い。どんな怪我も短期間で治ってきた。だが、修平はすでに99回も私の心臓から血を抜いている。回数を重ねるごとに、治癒力は著しく低下していた。彼が麻里奈への角膜移植を強要した時、まだ治ると思い込んでいたのだろう。けれど
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