All Chapters of 失恋リハビリテーション: Chapter 11

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第11話

番外編:アレルゲンもう5日になる。井上理恵(いのうえ りえ)はまだ帰ってこない。哲也は少しイライラしていた。日に日に冷たくなっていく、理恵の顔が頭に浮かぶ。理恵の変化に気づいていなかったわけではない。だが、彼はそれを信じたくなかった。なにしろ、自分が理恵にとって初恋なのだから。理恵は、自分だけをひたむきに、強く愛してくれていた。その愛が、重いと感じたことさえあった。理恵はずっと、二人の結婚式を夢見ていた。海辺で、馬に乗って、たくさんの花に囲まれると。とてもすてきなことだ。でも、面倒なことでもある。おまけに、お金もかかる。今回、理恵はへそを曲げて家を出て、自分のことまでブロックした。さすがにやりすぎだと思った。哲也の心に、かすかな動揺が走った。理恵に会いに行きたかったけど、彼女は共通の友達の誰にも行き先を告げていなかった。それに――ドアをノックする音が響いた。やってきたのは睦月だった。この数日、彼女は毎日哲也を訪ねてきていた。離婚して落ち込んでいる女性を、むげに断るわけにもいかなかった。ドアを開けると、そこには綺麗に化粧をした睦月が立っていた。体にフィットしたスカートが、彼女のスタイルの良さを際立たせていた。哲也は思わず唾を飲み込み、断りの言葉がひとつも出てこなかった。睦月は酒を持ってきて、笑顔でこう言った。「哲也、一杯付き合ってよ。自由になれたお祝いにね」そうして酒を飲んでいるうちに、いつの間にか服を脱いでいた。その後のことは、あまりに突然のことだった。ほろ酔い状態というのは、酔ったふりをするには一番都合がいい。翌朝目を覚ました哲也は、体についた跡を見て、一瞬後悔した。まあいいか、今のこの状態で理恵に会いに行くのも気まずい。数日経って跡が消えたら、その時に理恵を迎えに行こうと決めた。そうして、彼はまたレストランの予約を先延ばしにした。これは、ただ一時の気の迷いだ。自分の気持ちは変わらない。心にいるのは、今でも理恵だけなんだから。それからの日々、哲也は睦月のそばにいながら、なんとかして理恵と連絡を取ろうとした。同時に、いつ睦月がここを離れるか、ということばかり考えていた。哲也は馬鹿じゃない。睦月が出て行きたくな
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