二十世紀。 技術の加速度的発展。そして同時に、自然破壊の加速化。 気候が変動し始めていた。人間が放出する二酸化炭素。フロンガス。その他無数の化学物質。それらが、大気を変えていた。 私は、その変化を最も直接的に感じていた。 雨の酸性化。酸性雨が、森を枯らし、湖を死なせていた。海の温度上昇。サンゴ礁の白化。氷河の急速な融解。 そして、二十世紀末から二十一世紀初頭へ向かう中で、変化は加速度的になった。 台風の規模の巨大化。洪水の頻度の増加。干ばつ。砂漠化。 人間たちは、ようやく気づき始めていた。自分たちが、何をしてきたのかに。 けれど、気づくのは遅かった。 地球の平均気温は、三度上昇していた。そして、その上昇はもう止まらないと思われていた。大陸の一部が海に沈み、難民が大量に発生していた。 その中で、人間たちが選択したのは、技術への依存だった。 地下都市。人工生態系。遺伝子操作による新しい作物。 人間は、自然から離れて、人工的な環境を作ろうとしていた。 だが、その工程で、一つの現象が起きた。 氷河の融解。 北極圏と南極圏の氷が、急速に融けていた。その融けた水が、私だった。 何千年も凍結されていた私が、再び液体となり、海へ流れ込んでいた。 その水の中には、古い地球の記憶が含まれていた。恐竜の時代の気候データ。古代文明の時代の気象条件。全てが、氷の中に保存されていたのだ。 そして、その氷が融けるということは、その古い記憶が、新しい世界へ解放されるということだった。 海面が上昇した。急速に。 かつて人間が建設した都市が、水に沈んでいった。ニューヨーク。ロンドン。上海。東京。 億単位の人間が、失地民となった。 その時点で、人間の文明は、一つの転機を迎えていた。 一部の富裕層は、地下都市に避難していた。けれど、多くの人間たちは、上地に留まることを選んだ。運命を受け入れて。 やがて、太陽の膨張が始まっ
Last Updated : 2025-12-04 Read more