بيت / BL / 恋の保護先 / Chapter 11 -الفصل 20

جميع فصول : الفصل -الفصل 20

29 فصول

#10

「寒すぎ!」夜。ドスのきいた声と共に帰って来た夕都に驚き、俊紀は目を丸くした。「夕都? ちょ、どうした?」恐々玄関まで迎えに行くと、怒りの形相だった夕都は一気に笑顔になった。「あ、俊紀さん帰ってたんだ。今日何食べる? 何か作るよ」「え。ありがとう……って……」上機嫌になった夕都を見て、先ほどの声は幻聴かと思った。が、間近で彼を見て今度こそ仰天する。「おまっ! 何で全身ぬれてんだ!?」夕都が雫を滴らせていることに気付き、慌ててタオルを取りに行く。戻ってから彼の手足をがしがしと拭いてやった。心配になって夕都の顔を覗くと、彼は気まずそうに視線を落とした。「……そこの公園の池に財布落としちゃって。中に入って探してた」「そこの公園って、足が浸かる程度のだろ? 何で胸までびしょぬれなんだよ」「……」夕都はなにか考えていたが、ため息をついて俊紀の横を通り抜けた。「ごめん。やっぱ疲れたから寝る」「はぁ!?」自分の部屋に直行する夕都に驚き、彼の腕を掴んで止めた。「このまま寝たら風邪ひくだろ、風呂入れって」「嫌だ」「駄々っ子か。洗濯もしたいし」廊下でお互い一歩も引き下がらず、睨み合う。しかし先に折れたのは俊紀だ。夕都の腕から手を離し、宥めるように彼の頭を撫でる。「俺ももうすぐ入ろうと思ってたから。一緒に入れば楽だろ?」「え」夕都は明らかに嬉しそうに顔を上げた。しかし謎の意地が邪魔をしてるのか、またすぐに顔を背ける。「……俺はいいよ。一人のほうがリラックスできるでしょ?」「全然。お前がいないと疲れが取れない」……っ。夕都は俊紀を見返す。時間が止まったようだった。見つめ合い、距離を縮め……気付いたときには唇を重ねていた。息を奪われた。身体が震える。寒さのせいじゃない。どうしようもないけど、もっと官能的なもののせいだ。薄暗い廊下で抱き合い、壁に背を預けた。「俊紀さんもぬれちゃうって……っ」押しし返そうとすると、さらに強い力で抑え込まれる。「……大丈夫だ」半ば投げやりで傾く夕都の身体を支え、俊紀は彼の顎を掠め取った。「夕都。何でもひとりで溜め込むな。……ただでさえ隠し事ばっかしてるんだから、せめて気持ちは押し殺すなよ」「俺が勝手に苛々してるだけなのに?」「あぁ。心配しなくても、全部受け止めるから」服がぬれるのも構わ
last updateآخر تحديث : 2025-12-10
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開きかけ

「俊紀さん」髪から滴り落ちる雫が、彼の頬をぬらした。「いつか必ず話すから。……本当のことを」夕都は瞼を伏せ、俊紀に手を伸ばす。「信じていいのか?」「必ずって言ってるだろ」夕都は口を尖らし、子どものように呟いた。「じゃ、信じとこうか」「……あっ!」俊紀が動いたことで、夕都は再び暴かれるような気持ちになる。それでも悦びに震えていた。愛する人と繋がっていると思えば。 ────翌日。校内に授業の終了を知らせるチャイムが流れた。「おい、梁瀬」俊紀の家に帰ろうとした夕都の前に、またあの三人組が現れた。難癖をつけられたら速攻で逃げようと考えたが、彼らは先日のゴミ箱事件について話した。「お前も今日、生徒会室に行くんだろ?」「いや、俺は呼ばれてないけど」「な、なんでだよ! お前もあの場にいただろ!」「もう説教された。挙げ句の果てに池に突き落とされたし」そう言うと、三人は露骨に青ざめていた。意地が悪いものの、その様子を見たら猛烈に盛りたくなってしまった。「後は写真撮られたり、石を投げつけてきたりして、高校生のやることとは思えなかったよ。俺より歳上のくせに、何であんなに精神ガキっぽいのか……」「誰がガキだって?」真後ろで低い声が聞こえ、反射的に振り向いた。心の中では十センチほど飛び上がりながら。「あ、生徒会の……」教室がざわめいた。生徒会長が数人の取り巻きを連れ、一年のクラスに現れたからだ。目立ちたがりだな、ほんと。空気と同化してこの場から去ろうと試みるが、それを一緒に来ていた生徒会の面々に止められる。「梁瀬、お前は俺と一緒に来い」前にいた三人も他のメンバーに囲まれていた。が、そこで夕都に味方するクラスの女子達が一斉に抗議した。「あの。梁瀬くんが何したっていうんですか?」「梁瀬くん、先輩になにかしたの?」「何にもしてないよ。それどころか以前池に突き落とされて……それで風邪ひいて、最近ずっと学校休んでたんだ……」池に落とされたのは昨日のことで、これは完全に罪をなすりつけていた。「お前……!」圭司は夕都に掴みかかろうとしたが、それはまた女子達の飛ばす野次に阻まれた。「え、暴力振るうの?」「うっそ、信じられない」「うっ……」圭司は激昂していたが、ギリギリで踏みとどまる。反対に夕都は優位な立場にいた。女子を味方につけ
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#1

「それは……」「お前と関わる様になってからあいつはますます家に寄り付かなくなった。これはどう説明する気だよ」夕都は少し考えて、落ち着いた声で話した。「あいつが俺と同じだっただけだよ。………家が嫌いだった」「……ふざけんな!」また、圭司が振りかぶる姿が見えた。それも避けずにいようと待っていたが、乾いた音だけ聞こえて衝撃は訪れない。何かと思いそっと顔を上げると、見慣れた人物の後ろ姿があった。夕都よりずっと高い背丈、淡い栗色の髪。頼りがいのある背中。「とっ……俊紀さん」今では一番信頼してる恋人。彼は冷静に圭司の拳を流していた。「学校の前で喧嘩なんて、エリート校にはあっちゃならないんじゃないか」「……!」圭司はようやく顔色を変える。だが一歩退いて、再び俊紀の後ろに隠れる夕都を睨み付けた。「梁瀬、俺は尚太のことでお前を許すつもりはないからな。それだけは言っておく」「あっそ。別にいいけど……アンタ、今まであいつと話したことあんのかよ」「は?」夕都の質問に、圭司は怪訝な表情に変わった。「何意味分かんないこと言ってんだよ。兄弟なんだから、お前なんかとは比べもんにならない程あるに決まってるだろ」「そのわりにはあいつの本音、あんまり知らないんだな。何に関しても」「どういう意味だよ」「大事な兄弟だって言うなら訊けば良いだろ。あいつがどんな気持ちで暮らしてきたか、全部聞き出せばいい。兄貴なんだから、それが怖いとか言うなよ」「……っ」圭司は歯痒そうに舌打ちすると、一度だけ俊紀のことを見て去って行った。夕都は今さら気づいた。自身の手が震えていたこと。怒りか高揚か、恐怖によるものかも分からない。「ありがとう俊紀さん。ナイスタイミング!」「お前やっぱ一発殴られてれば良かったな」「褒めてるのに。というか既に一発もらってます。やー、焦った」夕都は俊紀の前でできるだけ明るく振る舞った。俊紀は足下に置いてある夕都の鞄を拾い、彼に手渡す。「……ま、確かにもうちょっと前から気付いてたよ。話はあんまり聞こえなかったけど」「そっか。俺は男女問わずモテモテだから一日を乗り切るのも大変だよ。じゃ、疲れたから早く帰ろ?」「……そうだな」やけに早いペースで歩き出した夕都の後を、俊紀も続けて歩く。陽が暮れそうな街道は、歩く人もまばらだった。「ん……っ!」掠
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#2

「へへ。ありがと!」自然に笑みがこぼれる。そういう他愛のない言葉を交わすだけで安心した。ひとりじゃないことを認識できるから。「夕都」────怖いほどの幸せに浸ってしまう。「俺はお前を信じてるよ。昔のお前じゃなくて、俺と出逢ってからの、今のお前を」「……うん」信じてもらってることを、絶対忘れない。それで会話は途切れて、夕都の意識は波に攫われた。暗闇の中、青い光が明滅している。「……?」なにか聞こえる。鼓膜に張り付いた、聴き慣れたメロディー。柔らかいベッドの枕元でエンドレスに流れる着信音に、心地いい眠りは妨げられた。 夕都は身体を起こし、瞼を擦る。隣を見ると俊紀が静かに寝ていたので、音を立てずにスマホを取った。……誰だろう。スマホの画面をじっと見つめ、少し遅れて出た。「もしもし?」『あ、センパイ? お久しぶりです』「今何時だと思ってんだよ……赤沼」相手は赤沼。言っちゃ悪いが、兄の圭司のこともあり今は大問題な人物だった。『すいません。今からちょっと会えませんか? 話したい事があって』「……」鼓動が高まっていくのを感じた。気乗りはしない。どう答えようか考えていた時、「……夕都?」「っ!」隣で眠っていた俊紀が、目を覚ました。怪訝そうな表情でこちらを見ている。「誰と電話してんだ?」「いや、あの……」『センパイ? 誰か一緒にいるんですか?』どうしよう。夕都が焦りながら考えていると、俊紀は彼のスマホを奪いとって電話に出た。「もしもし」「ちょっと、俊紀さん!?」夕都は慌てて俊紀から携帯を奪い取ろうとしたが、逆に口を手で塞がれる。「んんっ!」『……!?』夕都の声が電話の向こうにも聞こえた様で、赤沼の声のトーンが下がった。『その声って……この前会った、俊紀さんですよね。センパイといるんですか?』「尚太君か。うん、今一緒にいるけど……こんな時間にどうしたの?」電話口からは沈黙が流れた。その間にも俊紀は自分の指を夕都の口の中に含ませ、かき混ぜていく。 「んっ……俊紀、さ……」『な……何してんですか? センパイに』俊紀はわざと夕都の近くにスマホを持っていっているので、声は丸聞こえだろう。『ちょっと、答えてください』 「大したことじゃない。それより俺の質問に先に答えてくれたら、ちゃんと答えるよ」『質問? あぁ
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#3

「分かった。あれだね、俊紀さんはのめりこむと危険なタイプだね」「そりゃどういう意味だよっ」俊紀は目を細めると夕都を再び押し倒し、上に覆い被さった。「悪い意味じゃないよ。褒めてる」「フーン……嬉しいね」夕都の頬に軽く口づけし、かかっていた布団を押しのけると、彼の下半身をまさぐった。「ちょ……俊紀さん、また……」疲れて寝ていたのに、彼を見ていたらまたそういう気分になってしまった。本当に懲りないな、と俊紀は内心自嘲する。しかし、夕都の様子がおかしいことに気付き、手を止める。「ねえ、何か怒ってる?」「別に怒ってないよ。どうして?」怒るどころか、むしろもっと可愛がろうとしていた。だが夕都は不安そうな瞳を向けている。「強いて言うなら、さっきの電話のせいかもな。お前を抱きたくてしょうがないよ」「んっ!」夕都は軽く触れただけで過剰な反応を示す。そのせいか、ついつい意地悪を言いたくなってしまった。「お前、意外と面倒見が良いみたいだからな。他の子に執心しないか心配だ」動きを封じて夕都の脚の間に手を入れた。焦らすように太股を上から撫でていく。「俊紀さんってすぐそっちに走るんだからな。俺が最初に襲いすぎたせい?」夕都はシーツに顔を沈めながら、苦笑いを零した。「そ。お前のせい」本当は違うけど、冗談だって多分伝わってるから。うつ伏せにした夕都の背中に口付けを落とす。「ほんと白いよな、お前の肌。日焼けしないのか」「まぁあんまりないけどさ……それよりどんな格好させんだよ」今の夕都は、腰だけ高く上げている状態だった。「……いい格好だよ。ここなんか特に白いな?」「っあ!」後ろから触ったそこは、今は熟した果実のように柔らかくかる場所。そっと指でなぞる。傷つけないように、力加減に注意しながら。「俊紀さん。ゆび、冷たい……」「悪い。温めるよ」自身の指を口に含んだ。ついでにぬらせるからちょうど良いと思って。でも、「俊紀さん、やっぱり待って。俺もやる」夕都は俊紀のぬれた指を引き寄せ、丁寧に舐めていく。嫌そうにしていた割には積極的だ。「サンキュー、もういいよ。次は、こっちが欲しいから」「あっ」彼にキスし、舌を入れる。夕都は片手で俺の肩を掴み、もう片手でベッドのシーツを強く握りしめていた。ヤバい……感じすぎて。何でこんなに気持ちいいのか。
last updateآخر تحديث : 2025-12-14
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#4

……昨夜は幸せだった。朝まで俊紀さんとイチャイチャした。何回思い出しても最高。夕都は油断すると笑みがこぼれそうなほど夢の時間に浸っていたが、現実を思い出してため息をつく。昨夜の良いことも掻き消されてしまうぐらい、今の彼は憂鬱が頂点に達していた。「で……ほんとに、いい加減にしろって。……赤沼」少し乱暴にコップをテーブルに置いた。平日の真っ昼間、場所はファミレス。夕都と向かい合う席に座る少年は、口元を手で隠してひっそりと囁いた。「俺は真面目に言ってるんです、……先輩」彼は夕都の反応を分かりきっていたようで、余裕を崩さず堂々と言った。「本気です。俺と俺と付き合ってくたさい」「……」同じテーブルにいるのは、赤沼尚太。白昼堂々、彼は夕都に告白した。しかし夕都自身、感情の機能していなかった。嬉しい、悲しい、恥ずかしい、照れ臭い……告白をされたら真っ先に抱くような感情が一切生まれない。怒り半分、戸惑い半分で彼を睨み、次いで周りを見回した。「も~大丈夫ですよ、誰にも聞かれてませんって」「そういう心配はしてない」「じゃ、何が心配なんですか赤沼は頬杖をつき、口を尖らした。……良くない。このままじゃただの口争いに発展する。夕都は額に手を当てて、溜め息を吐いた。そもそも何でこんな話になったんだろう。今日は祝日の為学校が休みだった。でも俊紀さんは普通に仕事だから、ひとりで暇をもて余していた。そこで赤沼から会えないか連絡がきたから、呼ばれるまま来たけど。こんな話なら来るんじゃなかったと後悔してる。「先輩? 考え終わりました? 返事は」「せっかちだなあ……も少し心に余裕を持てよ。大体、お前ゲイだったの? 悪いけど全然知らなかったよ」「そうですね。でも先輩もでしょ? それが分かったから、今こうして告白してます。先輩は考え出すと長いから、時間をかけず一気に畳み込むのが正解だと思って」「畳み込むって、お前ホントは俺のこと好きじゃないだろ!」「大好きですよ。誰よりも先輩のことを想ってます。だから、もう待てないんです」待てない、か。どこまで本気か分からないと思った。彼は自分以上に気まぐれなところがある。けど自分もずいぶん変わった。意中でない相手の告白をこんなに厄介に感じるとは、昔だったら思わなかっただろう。以前なら誰彼かまわずオーケーし、
last updateآخر تحديث : 2025-12-15
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#5

「……おい。おい、起きろよ」感情も何もない、無機質な声。────夕都は白い息を吐きながら眉を顰めた。「このクソ寒いのによく寝れるな。寝てる間に死ぬかもしんねぇぞ」「別に寝てねえよ。暇だからボーッとしてただけ」まるで氷の上に座っている感覚。冷蔵庫の中にいるようだ。本当に、この寒さで寝れるわけない。じっとしていたら震えてしまう。「相変わらずボケてんな。梁瀬、お前俺らに何か言うことあんだろ」……もう疲れた。この質問も何回目だろう。さすがにうんざりだ。時計がないから分からないが、どれぐらいの時間、ここに監禁されているのか。────国道から少しそれた森の中にある、暗い廃屋。夕都はそこの小さな部屋の中に居る。いや、居るというよりは拘束されていた。地べたに座り込んでいる状態だが、両手両足を硬いロープでキツく縛られている。そんな彼を見下ろしているのは、二人の少年。「はー、なんか反応薄すぎて萎えるわ。ちょっと出掛けようぜ」「そうだな。おい、俺らが戻るまで生きてろよ? 死んでたりしたらビビるからさ」二人はそう言い残すと、夕都の頭を軽く叩いて部屋から出ていった。やがて響く足音も聞こえなくなり、部屋は静寂に包まれる。やっと行ったか。そう思った時、隣の部屋からそう小さくない声が飛んできた。「おい。あいつらどっか行ったか?」少し声が枯れてる気がする。姿は見えなくても、隠しきれない疲労感が伝わってきた。「あぁ、飯でも食いに行ったんじゃない? 束の間の平穏だよ。良かったな、お兄様」「何も良くないだろ。お前のせいで俺までこんな目に遭って、最悪だっつーの」壁の向こう側にいる声の主。それは、夕都と全く同じ状態で拘束されている赤沼圭司だった。今は昼か夜か。それすらわからない。 静まり返った、窓のないコンクリの部屋で夕都はため息をついた。気温が低いのは確か。だがこの部屋は廊下から冷たい風が流れ込んできて寒いため、おおよその時間帯も見当がつかなかった。……嫌だな。ここにいると、また昔を思い出しそうになる。「梁瀬、お前ちょっと大声出せ。もしかしたら誰か気付くかもしんないぞ」「はあ? お兄さんがやればいいじゃん。何で俺が」圭司の突然の提案に、夕都は怒気を含んだ声で返した。直後、忌々しいと言いたげな舌打ちが聞こえる。「誰のせいで、俺までこんなことに
last updateآخر تحديث : 2025-12-16
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追憶

別に困っていたわけじゃない。ただこの生活に、差し障りの無い程度に刺激を足したかったのかもしれない。あの時の俺は……。「俊紀さん」尚太は少し咳払いして、息を整えた。「少しだけ聞いてほしいんです。俺らのこと」「え」「先輩達をさらった奴らが誰かは分かってます。俺らの昔の遊び仲間。それが理由じゃないけど、まだ警察には連絡しないでほしい」「どうして?」俊紀は話が飲み込めないまま小首を傾げた。「夕都先輩は、多分そう言うから」「……そういや、俺と会ったときもあいつはそう言ってたな。でも、その遊び仲間はどういう繋がりなんだ?」「元々俺は何の関係もなくて、夕都先輩の知り合いばっかなんです。ただ集まったら遊ぶだけの仲で……学校が好きじゃなかった俺を、先輩はよく誘ってくれてた。皆俺と同じで家も学校も嫌いだったから、楽しかったんだけど」毎日にウンザリしていた。学校はつまらない。家では優秀な兄と常に比較された。だから同じ気持ちの仲間と喋って、気が楽になった。いつからか、夕都先輩より俺の方がそのたまり場に顔を出すようになった。それは一時的な現実逃避で、ずっと続くわけない。馬鹿な自分でもわかっていた。けど。『尚太、これやるよ』ある日のこと。夕都先輩が来なくなってから、グループの中心になった染谷という先輩がいた。彼が持ち出した麻薬によって、明らかに自分の住む世界が変わった。『お前の為にも少し貰っといてやったからさ。結構高いんだぜ。今回だけは俺の奢りだから、次からは自分で買えよ』手渡された袋の中に入っていたのは、テレビや教科書の中でしか見たことない薬物だった。 『え。これ、本物ですか?』『あぁ。俺らも使ってる』息を飲んだ。俺が知らなかっただけで、皆気持ち良さそうにそれを使っていたらしいから。効果は確かによく聞くけど……。その後に地獄の苦しみが待ってるというのも、よく聞く。苛々が収まってく具合なら煙草とそんな変わりないんじゃないか、と何も分からない自分は思ってしまう。『あの、夕都先輩は?』『あいつは駄目だ、頭固いから。お前は信用してるからもらってきてやったんだよ』『……』生まれて初めて、“信用”という言葉に引っ掛かるものを感じた。手に嫌な汗をかきながら、彼の気分を害さないよう穏やかに笑う。『あ……ちょっと、また今度でもいいですか? 今日は…
last updateآخر تحديث : 2025-12-17
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#1

その後は、退屈ではなくなった。代わりに幼稚な苛立ちが増していった。学校も家も居心地が悪い。だからか、やはり俺は壊れていく仲間達の元へ足を運び続けてしまった。そしてその結果は、わりと早く俺自身に返ってきた。『尚太。クスリ買う気ないならせめて、俺の言うこと聞いてくんね?』ある夜更け、一層暗くなった溜まり場へ行くと、染谷先輩は開口一番にそう言った。というか、やっぱり買う気がないって見抜かれてたみたいだ。『ほら、そこにいる奴、何回か来てるから顔は知ってるだろ』染谷先輩が指差す先を見る。そこには、ひとりの少年が倒れていた。一体どれだけ殴られたか分からないほど、顔面が腫れ上がった状態で。『ちょっ……大丈夫なんですか? その人』『あいつ、俺の女とヤッたんだよ。吸ってる最中に妄想入って襲ったんだと』年は俺らと同じぐらいだろうか。 顔は知ってるだろ、と言われたが、面識があるかなんて分からない。ハッキリ言って原形が分からない。それだけ重体に見えた。 『そいつにトドメさしてくんない? そんでどっかに捨ててきてくれよ』『はっ?』我ながら馬鹿みたいな声を出してしまった。いや、だって何で憎い奴を俺に……。『大丈夫だって、捕まったりしねぇよ。俺ら皆協力してやるから』先輩がそう言うと、呆然とぽかんと口を開けてた連中もゲラゲラと笑い始めた。そこでようやく彼らの魂胆がわかった。罪を被せるのに丁度いい人間を探していたんだろう。カラン、と小気味いい金属音が響いた。『ほら、そいつで首もとかっ切ってやれ』先輩が投げた、鋭利な刃物が足下に落ちていた。それを拾いはしたが、……切りつけたりなんてできるわけがない。先輩からしたら殺したいぐらい憎い人物かもしれないけど、自分にとっては赤の他人だ。『できるだろ? ……赤沼』視線が痛かった。先輩だけじゃない、ここにいる全員がそれを望んでる。その圧迫感が半端じゃなかった。……っ。でもやっぱり、俺には無理だった。ナイフを持ったまま、膝が震えそうになるのを堪えるだけで精一杯だ。『それもできないなら……どうしてやろうかな』先輩は一歩ずつ俺に近づいてきた。けど、それを止める誰かの声が響いた。『おい! お前ら何やってんだよ!!』部屋に乗り込んできたのは夕都先輩だった。『お前って……あぁ、梁瀬か。やばい久しぶりだな』染
last updateآخر تحديث : 2025-12-18
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#2

「寒い……!!」指先は悴んで完全に感覚がない。俊紀達の動向を知る由もなく、圭司は弱々しく白い息を吐いた。「あいつら、戻ってくる気配ないな。これはマジで朝まで放置パターンじゃないか」なんて彼のぼやきを聞いた夕都は悲観的になりそうなのをグッとこらえた。これ以上ネガティブにはなりたくない。寒さと空腹だけでもうこりごりだった。 「まぁ、今度こそ何されるか分かったもんじゃないし。それぐらいなら戻って来ない方がいいっていうか」「いやでも戻って来なかったら餓死する」餓死も嫌だが、リンチにあうなら同じだろう。永遠に帰れない。結局八方塞がりだ。でもずっとこのままなんて……。一体前世で俺はどんな悪行をしたんだ、と圭司は考えていた。こんな事なら常日頃から遺書を用意しとけば良かった、なんて想いまで頭によぎる。しかし二十分後、その考えは断ち切れた。「兄貴! やっぱりここだったんだ……!」部屋に反響する透き通った声。この聞き慣れた声は────、「尚太!」小走りで駆け寄ってきた少年は幻ではなく、本物の弟だった。「お前、よくここが分かったな」「まぁね。……色々ごめん。さっ、早く出よう」尚太は圭司の手を縛るロープをほどきにかかる。「梁瀬を捜してたんだろ。何で俺も一緒にいるのか聞かないのか?」「……聞かないよ。兄貴が先輩に絡む理由なんて、どうせ俺の為だろうし」尚太の物言いにムッとして言い返そうとしたが、その前にロープは解けた。「でも、先輩は良い人なんだよ。兄貴と同じで口は悪いけど、俺のことを助けてくれた……だから俺は今ピンピンしたられるんだ」尚太は、圭司の袖を震えるほど強く握った。「わかってる。やっとわかったよ。……遅すぎだけど」二人は可笑しそうに笑い、手を取り合った。「本当にごめん。俺、これからはちゃんと学校行くから。早く家に帰ろう」……良かった。仲直りできたみたいだ。丸く収まった様子の二人を廊下から眺めて、すぐに俊紀は隣の部屋へ向かった。「夕都、待たせたな。生きてるか?」夕都は、部屋の一番奥に座り込んでいた。「生きてるけど、今にも死にそう」「大丈夫そうだな。待ってろ、すぐに解いてやる」色褪せたロープは雁字搦めに結ばれていたが、力押しで強引に緩めて解いた。「痛いところは?」「体勢がずっと同じだったからそこら中痛いけど……大した
last updateآخر تحديث : 2025-12-19
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