「寒すぎ!」夜。ドスのきいた声と共に帰って来た夕都に驚き、俊紀は目を丸くした。「夕都? ちょ、どうした?」恐々玄関まで迎えに行くと、怒りの形相だった夕都は一気に笑顔になった。「あ、俊紀さん帰ってたんだ。今日何食べる? 何か作るよ」「え。ありがとう……って……」上機嫌になった夕都を見て、先ほどの声は幻聴かと思った。が、間近で彼を見て今度こそ仰天する。「おまっ! 何で全身ぬれてんだ!?」夕都が雫を滴らせていることに気付き、慌ててタオルを取りに行く。戻ってから彼の手足をがしがしと拭いてやった。心配になって夕都の顔を覗くと、彼は気まずそうに視線を落とした。「……そこの公園の池に財布落としちゃって。中に入って探してた」「そこの公園って、足が浸かる程度のだろ? 何で胸までびしょぬれなんだよ」「……」夕都はなにか考えていたが、ため息をついて俊紀の横を通り抜けた。「ごめん。やっぱ疲れたから寝る」「はぁ!?」自分の部屋に直行する夕都に驚き、彼の腕を掴んで止めた。「このまま寝たら風邪ひくだろ、風呂入れって」「嫌だ」「駄々っ子か。洗濯もしたいし」廊下でお互い一歩も引き下がらず、睨み合う。しかし先に折れたのは俊紀だ。夕都の腕から手を離し、宥めるように彼の頭を撫でる。「俺ももうすぐ入ろうと思ってたから。一緒に入れば楽だろ?」「え」夕都は明らかに嬉しそうに顔を上げた。しかし謎の意地が邪魔をしてるのか、またすぐに顔を背ける。「……俺はいいよ。一人のほうがリラックスできるでしょ?」「全然。お前がいないと疲れが取れない」……っ。夕都は俊紀を見返す。時間が止まったようだった。見つめ合い、距離を縮め……気付いたときには唇を重ねていた。息を奪われた。身体が震える。寒さのせいじゃない。どうしようもないけど、もっと官能的なもののせいだ。薄暗い廊下で抱き合い、壁に背を預けた。「俊紀さんもぬれちゃうって……っ」押しし返そうとすると、さらに強い力で抑え込まれる。「……大丈夫だ」半ば投げやりで傾く夕都の身体を支え、俊紀は彼の顎を掠め取った。「夕都。何でもひとりで溜め込むな。……ただでさえ隠し事ばっかしてるんだから、せめて気持ちは押し殺すなよ」「俺が勝手に苛々してるだけなのに?」「あぁ。心配しなくても、全部受け止めるから」服がぬれるのも構わ
آخر تحديث : 2025-12-10 اقرأ المزيد