それから10年が経った。 アキラは、終焉士を続けていた。記憶を消すことはやめた。すべてを覚えている。痛みも、喜びも、10,247人の死も、アヤの笑顔も。 重い。とてつもなく重い。朝起きるたびに、その重さに押しつぶされそうになる。 でも、生きている。 そして、不思議なことに、その重さが、彼を生かしていた。 記憶の重みが、一瞬一瞬に意味を与える。今日という日は、二度と来ない。だから、大切にしなければならない。 アキラは、10年間で832人の死を見届けた。合計で11,079人。 しかし、数は問題ではなかった。一人一人の物語が、彼の中に生きている。 ある雨の日、新しい訪問者が事務所を訪れた。 若い女性だった。外見年齢は25歳ほど。長い黒髪、大きな目、どこか不安そうな表情。 「失礼します」 「どうぞ」 アキラは立ち上がり、彼女を迎えた。 「お名前は?」 「ミサキです。ミサキ・ヤマダ。125歳です」 125歳。若い。とても若い。 「終焉士の予約をしたいのですが」 「椅子をお選びください。お茶は?」 「コーヒーを」 アキラは丁寧にコーヒーを淹れながら、彼女を観察した。 彼女の目には、深い疲労があった。125年という時間は、彼女にとって十分すぎるほど長かったようだ。 「おいくつで不老
Terakhir Diperbarui : 2025-12-09 Baca selengkapnya