息子の五歳の誕生日、家族三人で流星群を見に行った。その途中で夫が電話を受けて急いで出て行った。真夜中に、息子が喘息で発作を起こしたが、喘息の薬は夫の車の中にあった。荒野で人気のない場所を、息子を抱きながら必死に走り回り、何度も夫に電話をかけ続けたが、返ってきたのは冷たいメッセージだけだった。【急用中だ。邪魔するな】翌日、ようやく夫から電話がかかってきたが、電話口から聞こえてきたのは夫の初恋の女の声だった。「昨夜、私の愛犬が急病で亡くなって、彼が私を心配して一晩中付き添ってくれたの。今ようやく眠ったばかりだから、何か用があれば私に伝えてくれればいいわ」息子の氷のように冷たい頬を撫でながら、私は言った。「彼に伝えて。離婚すると」……結局、桐谷蒼介(きりたに そうすけ)が言っていた急用とは、初恋の女、桜庭優芽(さくらば ゆめ)の飼い犬が死んだから、優芽が心配で仕方なかっただけだった。それが彼が立ち去った理由であり、私の電話に出なかった理由だった。電話を切った後、私は人形のように機械的に息子の後始末を始めた。息子の桐谷陽太(きりたに ようた)の骨壺が手渡された時も、私はまだ呆然としたままだった。理解できなかった。昨日までは私の耳元で「ママ」と何度も呼んでいた小さな命が、今日にはこんな形になってしまうなんて。居合わせた親族たちは口々に私を慰めながらも、蒼介への不満を隠さなかった。父親として息子が亡くなった時にすらその場にいないなんて、どんな大事があろうと駆けつけるべきだと彼を責めた。蒼介は有名な傑出した若手経営者だから、仕事が忙しいのは当然だ。だから皆、当然のように彼は仕事に縛られていると思い込んでいた。だが優芽は一分前、ちょうどSNSに投稿していた。蒼介の寝顔の写真に、こんな文章を添えて。【私の悲しみに寄り添ってくれた彼に感謝。一晩中眠らずに大変だったでしょう、ゆっくり休んでね】蒼介と一緒になって八年。周りの人たちは私たちが七年目の倦怠期を乗り越えたんだから、一生一緒にいられると言ってくれた。だが今日の残酷な現実が教えてくれた。八年の愛も、結局は空しく終わるのだと。私と蒼介が出会ったのは、彼が起業したばかりの頃だった。最も苦しかった時期を、私が彼の傍で支えてきた。結婚式の時に、彼は私の手
続きを読む