新春大歌舞伎の公演は大成功に終わった。 初日のハプニングがあったにもかかわらず――いや、むしろそれがあったからこそ――蓮杖の演技は高く評価された。「鳳凰院家の新しい風」「若手女形の希望」。新聞や雑誌の評価は軒並み高かった。 しかし、蓮杖自身は、そうした外部の評価よりも、もっと大切なものを得ていた。 それは、「自分自身であることの自由」だった。--- 二月に入り、真澄は会社を辞めることを決意した。 蓮杖との生活を続けるには、もっと時間が必要だった。そして、真澄自身も、新しい道を歩みたいと思っていた。「本当にいいの?」 辞表を出した後、葵が心配そうに尋ねた。「うん。もう決めたから」「新しい仕事、見つかったの?」「ええ。知り合いの伝手で、歌舞伎関係の仕事を紹介してもらったの」 それは本当だった。蓮杖のマネージャーが、真澄を気に入り、歌舞伎座の広報部門で働かないかと誘ってくれたのだ。「歌舞伎? 真澄、そんなに詳しかったっけ?」「最近、すごく興味が出てきて。勉強してるんだ」 真澄は笑った。葵は少し不思議そうな顔をしていたが、最後には微笑んだ。「そっか。じゃあ、頑張ってね。でも、たまには会おうね」「もちろん」 二人は抱き合った。真澄は胸が熱くなった。葵は良い友人だ。いつか、蓮杖のことも紹介したい。--- 三月、桜の季節が訪れた。 真澄は正式に蓮杖の家に引っ越した。自分のアパートを引き払い、鳳凰院家の一室を借りることにしたのだ。「本当にいいの? 一緒に住んで」 引っ越しの日、蓮杖が心配そうに尋ねた。「もちろん。私、ここで蓮杖と暮らしたいの」「でも、僕の稽古や公演で、迷惑かけるかもしれない」「迷惑なんかじゃないわ。むしろ、そばにいたい」 真澄は微笑んだ。蓮杖も笑顔で応えた。「ありがとう、真澄。これから、よろしくね」「こ
Read more