All Chapters of 推しの女形は花道の向こうに ~舞台で輝くあなたと、日常のあなたを、あたしはすべて知っている~: Chapter 11 - Chapter 12

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第六章「二人の舞台」

 新春大歌舞伎の公演は大成功に終わった。 初日のハプニングがあったにもかかわらず――いや、むしろそれがあったからこそ――蓮杖の演技は高く評価された。「鳳凰院家の新しい風」「若手女形の希望」。新聞や雑誌の評価は軒並み高かった。 しかし、蓮杖自身は、そうした外部の評価よりも、もっと大切なものを得ていた。 それは、「自分自身であることの自由」だった。--- 二月に入り、真澄は会社を辞めることを決意した。 蓮杖との生活を続けるには、もっと時間が必要だった。そして、真澄自身も、新しい道を歩みたいと思っていた。「本当にいいの?」 辞表を出した後、葵が心配そうに尋ねた。「うん。もう決めたから」「新しい仕事、見つかったの?」「ええ。知り合いの伝手で、歌舞伎関係の仕事を紹介してもらったの」 それは本当だった。蓮杖のマネージャーが、真澄を気に入り、歌舞伎座の広報部門で働かないかと誘ってくれたのだ。「歌舞伎? 真澄、そんなに詳しかったっけ?」「最近、すごく興味が出てきて。勉強してるんだ」 真澄は笑った。葵は少し不思議そうな顔をしていたが、最後には微笑んだ。「そっか。じゃあ、頑張ってね。でも、たまには会おうね」「もちろん」 二人は抱き合った。真澄は胸が熱くなった。葵は良い友人だ。いつか、蓮杖のことも紹介したい。--- 三月、桜の季節が訪れた。 真澄は正式に蓮杖の家に引っ越した。自分のアパートを引き払い、鳳凰院家の一室を借りることにしたのだ。「本当にいいの? 一緒に住んで」 引っ越しの日、蓮杖が心配そうに尋ねた。「もちろん。私、ここで蓮杖と暮らしたいの」「でも、僕の稽古や公演で、迷惑かけるかもしれない」「迷惑なんかじゃないわ。むしろ、そばにいたい」 真澄は微笑んだ。蓮杖も笑顔で応えた。「ありがとう、真澄。これから、よろしくね」「こ
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エピローグ「世界で一番の特等席」

 それから半年が過ぎた。 十二月、再び師走がやってきた。真澄と蓮杖が出会ってから、ちょうど一年が経った。 真澄は歌舞伎座の広報部門で、順調にキャリアを積んでいた。歌舞伎の魅力を多くの人に伝える仕事は、やりがいがあった。 蓮杖は、若手女形のホープとして、さらに活躍の場を広げていた。テレビのドキュメンタリー番組にも出演し、歌舞伎の世界を広く知らしめることに貢献していた。 二人の生活は、穏やかで幸せだった。--- ある夜、真澄は居間で一人、考え事をしていた。 蓮杖は稽古に出ていて、まだ帰ってきていない。 真澄は窓の外を見た。庭の木々が、冬の風に揺れている。 一年前の今日、自分は蓮杖と出会った。 あの日、扇子を拾ったことが、すべての始まりだった。 推しだった蓮杖が、今は夫になっている。 それは、夢のような出来事だった。 玄関の扉が開く音がした。「ただいま」 蓮杖の声だ。真澄は立ち上がって迎えに出た。「おかえりなさい」「ただいま、真澄」 蓮杖は真澄を抱きしめた。その体は冷たかった。「寒かったでしょう。お風呂沸かすね」「ありがとう」 蓮杖は真澄の頬にキスをした。--- 夕食の後、二人はソファに座ってお茶を飲んだ。「真澄、覚えてる? 一年前の今日」「ええ。私たちが出会った日」「あの日から、僕の人生が変わった」 蓮杖は真澄の手を取った。「真澄がいてくれたから、僕は自分自身を見つけられた。完璧である必要なんてない。ただ、自分らしくあればいい。それを教えてくれた」「私も、蓮杖に出会えて幸せよ」 真澄は微笑んだ。「推しだった蓮杖が、今は夫になっている。これ以上の幸せはないわ」「これからも、ずっと一緒にいようね」「ええ。舞台で輝く蓮杖も、日常で私の隣にいる蓮杖も、す
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