瑛太と栞は、すぐに帰国した。栞は記憶を失っていたが、瑛太の家族はすでに彼女の事情を知っていた。長谷川家の両親は心を痛め、瑛太の母は栞の手を握りしめて涙を流した。「いい子だね。これからはここが君の家よ。私たちの本当の娘同然だからね」栞はその温かさに感動したが、同時に疑問も抱いた。なぜ彼らは、少し悲しそうな目で自分を見るのだろうか。それから間もなく、栞と瑛太は婚約した。しかし、その話はうっかり芸能記者によってスクープされてしまった。瑛太は激怒したが、栞が優しくなだめた。「いいのよ、瑛太さん。怒らないで。どうせ結婚式を挙げたら、すぐに海外に行くつもりなんだから」瑛太は栞の穏やかな瞳に見つめられ、怒りを忘れて彼女を抱きしめた。何もかも忘れてしまった彼女が、愛おしくてたまらなかった。あの日以来、栞の周囲にはボディーガードの数が増やされた。ある日、彼女がボディーガードを連れてショッピングに出かけた時のことだ。突然、どこからともなく現れた男が、彼女を強く抱きしめた。「栞!よかった……やっぱり生きていたんだね。死んでなんかいなかったんだ!」秋彦は失われた宝物を取り戻したかのように、栞を強く抱きしめた。その目からは激動の涙が溢れ出していた。栞は反射的に彼を突き飛ばし、警戒心を露わにした。「誰ですか?何をするの!?私の婚約者がもうすぐ来るわよ。離れて!」秋彦は、栞がまだ過去のことを怒っているのだと思い込み、必死に言葉を継いだ。「栞、僕たちが間違っていた。全部美月の仕業だったんだ。僕たちはあいつに騙されていただけなんだ。でも安心してくれ、美月には相応の罰を与えた。だからもう怒らないでくれ……帰ってきてくれ!君がいなくなってから、どれだけのことが起きたか……」秋彦は感極まって目を赤くし、声を詰まらせた。「知っているか?蓮は事故で脚に重傷を負って、一生松葉杖の生活になったんだ……拓実も罪悪感からデザイナーを辞め、毎日仏前で懺悔する日々を送っている。君の兄さんの雅人もだ。君が死んだと思ってから再起不能になって、毎日君の墓の前で酒に溺れている。会社も倒産寸前だ。そして僕も……栞、君が去ってから毎日が地獄だった。もっと早く気持ちを伝えればよかった。君を騙したりしなければよかったと、後
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