自分の部屋に戻って間もなく、ドアベルが鳴った。ドアの外には、同じチームの若い同僚たちが立っていた。アナリストの竹島(たけしま)と、技術担当の室谷(むろや)の二人だ。仕事を終えた後の、くつろいだ笑顔を浮かべている。竹島が首をかしげ、手にしたタブレットを軽く振った。「一日疲れましたし、まだ起きてるメンバーで集まって、ちょっとしたゲームでもしない?江戸さんだけ抜けてるから、来ます?」桐乃は一瞬、躊躇した。そして、うなずいた。「ええ、待ってて。上着を持ってくるから」……今夜の屋上バーは、前夜より少し賑やかだった。柔らかいジャズが流れ、三々五々の客が低い声で会話を交わしている。数杯の酒が進むと、場の空気は次第にほぐれていった。「真実か挑戦か」のルーレットが、タブレットの画面で回り出す。少しふざけた、気まぐれな偶然性を帯びていながら。針が、桐乃の前で止まった。「江戸さん!」竹島が問題を読み上げた。「今まで、何人、お付き合いされたことがありますか?」遠くで、ジャズののんびりとした一節が、流れ去っていく。桐乃はグラスを手に持っていた。冷たい縁が、指先に触れている。「……一人だけ」ゲームは続いた。針は、まるで見えない糸に引かれるように、再びゆっくりと、彼女の前に止まった。「今までで、一番『胸が高鳴った』瞬間は、どんな時でしたか?」桐乃の目つきが、かすかに揺らいだ。心臓が鈍器で、ゆっくりと、しかし確実に押しつぶされていくような鈍痛を感じながら、記憶が少しずつ蘇ってくる。――表面は平穏に彩られていた結婚生活の中に潜む違和感に気づく瞬間か。それとも、信頼という名の砦が、耳をつんざくような音を立てて崩れ落ちる瞬間か。「……私、今回酒を飲むわ」同僚たちが気遣うような視線を浴びせる中、彼女は手を伸ばしてテーブル上のウイスキーの小さいグラスを取り、ストレートで一気に飲み干した。針がくるくると回り、三度目も、彼女を指した。「もし元彼が、今、目の前に現れたら……一番言いたいことは?」「失せろ」桐乃は軽く笑い、淡々と言った。――何が言えるだろう?問い詰める?嘲笑う?「なぜ」と尋ねる?すべての言葉が、あまりにも無意味だ。法廷で必要とされない限り、彼女は一生、舟一に会いたくない。二度と会わない
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