本がどんどん多くの人に読まれるようになり、夏美のSNSには、たくさんのダイレクトメッセージが届くようになっていた。【作者さん、ファンミーティングを開いてください!絶対に行きます!】【この本が出版されたら絶対に教えてくださいね!絶対、書店まで買いに行きますから!】【この文章、すごく好きです。いつか一度お会いできませんか?】……そんなダイレクトメッセージが増え続けるなか、夏美の元に出版社から連絡が来た。出版社は、ぜひ夏美と一緒に本を作りたいと、彼女の意向を尋ねてきたのだ。【はい、ぜひお願いします】3ヶ月後、新刊の発売を記念したファンミーティングが開催された。はるばる全国から駆けつけてくれたファンを目の前にして、夏美は、自分の作品がこれほど愛されているのだと初めて実感した。「次回作はどんなお話ですか?いつ頃でますか?絶対読みます!」「この文章は本当に素晴らしいです。ただ、結末がどうも腑に落ちなくて……ヒロインは最後に、相手の男性を許したのでしょうか?」「次回作が始まったらSNSで教えてくださいね!絶対読みますから。私は、この結末が大好きです」……ファンとの交流がひと通り終わった頃には、もう真夜中になっていた。夏美がイベントスタッフと一緒に後片付けをしていると、祐介が会場にやってきた。彼はまた一段と痩せていた。着ているスーツが、まるでジャージのようにぶかぶかに見えた。そんな彼はまるで全ての精気を吸い取られたようで、ただの抜け殻だけが残されているようだった。祐介は本を手にすると、夏美の前に進み出て、向かいの椅子に座った。「この結末はどういう意味なんだ?夏美、俺を許す気はないのか?」まっすぐな視線を受け止めても、夏美は目をそらさなかった。そして、彼をただの一人のファンとして扱った。「ヒロインには、許す理由もあるでしょ。でも、許さない権利だってある。あなたは彼女じゃない。彼女の気持ちが分からないのなら、コメントを控えてもらいたいものだわ」夏美がそう言うと、祐介が何か言い返そうとした。でもその時、彼のスマホが震えた。祐介は電話に出ると、そのまま戻ってはこなかった。彼の背中を見送ると、夏美は片付けを終え、カフェへと向かった。小説を書いていた間、空が支えてくれなかったら、きっとここまで続
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