菜々子は静かに最後まで聞くと、表情を少しも変えずに淡々と口を開いた。「こういう時、連絡すべきなのは私じゃなくて、彼のご家族じゃないのかしら?」「翔太が会いたいのはあなたしかいないって分かってるだろ。それに、翔太の家族は、無関心な父親か、あいつを骨の髄まで憎んでる継母だけ。そんな人たちを今呼んだら、翔太を殺すようなもんだ」そう言いながら、竜也は懇願するような声色になった。「菜々子さん、お願いだ。昔のよしみでさ。死にかけている翔太のために、会いに行ってやってくれよ。あいつを心残りのあるまま逝かせないでくれ」ところが、菜々子はそれを聞いてふっと笑った。「それはよかったわ。せいぜい、浮かばれないまま死んでくれればいいのよ。だって、翔太にされてきたことはどれも、私があの人を骨の髄まで憎むには十分なことばかりだもの」そう言い放つと、菜々子はきっぱりとした口調で背を向ける。「もう帰って。絶対に会いに行ったりしないから」竜也は菜々子の後ろ姿を見つめ、深いため息をついたが、結局どうすることもできず、その場を去るしかなかった。しかし、竜也が病室に戻ると、翔太が奇跡的に峠を越えたという知らせが届いた。すでに目を覚まして、一般病棟に移されたらしい。竜也は興奮して駆けつけると、案の定、翔太がベッドに座っているのが見えた。顔色は少しやつれていたものの、その目には力が戻っている。「安心しろ、そう簡単には死なないさ」翔太は笑ってみせた。竜也の張り詰めていた気持ちがようやく落ち着いた。しかし、落ち着くとすぐに憤りが込み上げてきた。「翔太、目が覚めてよかった。でも、もうあの酷い女のことは忘れろ。お前はあの女のために命を落としかけたのに、あいつときたら……お前の最期に顔を見せることすらしなかったんだぞ!」翔太はそれを聞いて、訝しげな表情を浮かべる。竜也は、菜々子を訪ねた時のことや、彼女が言った言葉を、そっくりそのまま翔太に伝えた。菜々子の「せいぜい、浮かばれないまま死んでくれればいいのよ」という言葉を聞いた時、翔太は、息を吹き返したばかりの心臓が、またズタズタに引き裂かれるような、息もできないほどの痛みを感じた。翔太は手の甲に青筋がくっきりと浮かび上がるぐらい、黙って拳を握りしめた。それと同時に、心の中では、ある執念深い計画
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