十五夜の家族団欒の食事会で、深谷佑樹(ふかや ゆうき)は義理の妹・深谷鈴奈(ふかや れいな)にホットココアを作ってやった。今回はもう我慢しなかった。茶碗を床に叩きつけ、離婚を切り出した。佑樹は呆れ顔で言った。「ただの一杯の甘い飲み物のために?」「そうよ」「……いいさ。後悔するなよ」私の名前は小林知織(こばやし しおり)。佑樹と付き合って四年、結婚して二年。その間、義妹の影は私の世界をずっと覆い続けてきた。デートの食事にも、映画にも、記念日にも、彼女はいつもそこにいた。結婚後でさえ、佑樹は家に彼女専用の部屋まで用意した。彼女のために、佑樹は幾度も私をないがしろにした。もう、こりごりだ。ドアをバタンと閉めて家を出る時、まだ佑樹の声が聞こえている。「行きたいなら行かせろ!あれだけわがままで、些細なことですぐ離婚だなんて、本当に甘やかされ過ぎだ。ここじゃ誰も知り合いもいないくせに、どこへ行けるんだ?三日と持たずに、謝りに戻ってくるさ」足が一瞬、止まった。胸がぎゅっと痛んだ。最初、佑樹と結婚するために、故郷から遠く離れた街に嫁いだ。両親は心配でならなかった。佑樹は胸を叩いて約束してくれた。「俺がいるところが知織の家だ。絶対に帰る場所のない状況にはさせない」と。今では、それがまるで笑い話のようだ。秋風がひんやりと肌を撫でる。外の冷たさよりも、心の底から這い上がってくる寒気の方が、ずっと身に染みた。突然、スマホが鳴った。母からの着信だ。「知織、十五夜どう過ごす?お父さんと手作りした月見団子、届いた?お父さんね、朝一番で白玉粉を買いに行って作ったのよ、すごくおいしいって!」月見団子は、とっくに届いていた。五日も前のことだ。ただ、開ける間もなく、鈴奈にぶち壊されていたのだけど。あの日、届いた宅配便を受け取り、ほんの少し手を洗いに立った隙に戻ると、月見団子の箱は床に転がり、真っ白な団子は散らばっていた。傍らには、当惑したような鈴奈と、気まずそうな顔の佑樹。私が何かを聞くより先に、佑樹が口を開いた。「鈴奈はわざとじゃない。責めないでくれ」鈴奈はおずおずと私を見て、「ただ……中身を見たくて箱を開けただけなのに……」腹立たしさを必死で押さえ、平静を装って言った。
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