All Chapters of 運命の過ちは、あなただけを想っていたから: Chapter 1 - Chapter 7

7 Chapters

第1話

瀧井雄一(たきい ゆういち)が7度目に挙式を延期した時。私・丹山梨帆(たんやま りほ)はウエディングドレスショップで、体に合わないウェディングドレスに無理やり身を包もうとしている。「梨帆、式を延期してくれ。砂絵子の鬱病がまた再発したんだ。彼女を放っておくわけにはいかない!今回は約束するっ!赤ちゃんが生まれる前には、ぜーったいに盛大なウェディングをあげるからな」私が口を開く間もなく、雄一は電話を切った。ドレスショップの店員が困ったように言った。「丹山様、お腹の赤ちゃんはもう五ヶ月です……こちらのドレスはすでにサイズが合いません。大きいサイズにお取り替えになりますか?」私は首を振り、静かに7度も繰り返し修正してきたこのドレスを脱いだ。――ドレスが体に合わなくなったから、もう要らない。雄一がこれだけ多くの機会を逃してきたのだから、私ももう彼のために立ち止まる必要はない!ちょうど電話を切られたその時、お腹がずきりと痛んだ。赤ちゃんに何かあったらと恐れ、私は急いでタクシーで病院へ向かった。不運なことに、降りた途端、路肩でキスを交わしている雄一と砂絵子の姿が目に入った。瀧井砂絵子(たきい さえこ)――雄一の両親が引き取った妹で、雄一とは幼い頃から一緒に育ってきた。私が来たのを見て、雄一は慌てて砂絵子を離し、説明しようとした。「梨帆っ!誤解しないでくれ――砂絵子の機嫌が悪くて、ふざけてただけなんだ――!」砂絵子は憎しみに満ちた眼差しで私を見つめ、大声で叫んだ。「お兄ちゃんは私のものよぉぉッ!!あなたがっ!私から奪い取ったんだ――!」彼女の言葉が終わらないうちに、周囲の人々が私に視線を注ぎ、軽蔑の眼差しを向けた。「人の恋人を奪うなんて、まったくひどい女だ!!」「顔がよくたって中身が伴わなきゃね。他人の彼氏を掠め取るなんて……!お腹の子も誰の落とし子か分かったもんじゃないわよ」私は思わず言い返した。「何も知らないくせに、でたらめを言わないで!私が雄一の妻です!」通りかかった看護師が私を一瞥し、嘲るように言った。「近頃の愛人はみな嘘つきよね。こちらの奥様が入院してる二ヶ月間、ご主人が毎日付き添ってるのをこの目で見てるわ!よくも図々しく、正妻の前で威張れるものね。まったく、腹の子をてこ
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第2話

それは、私が雄一の恋人になったちょうど一年目のことだった。写真の中の二人は、これ以上ないほどお似合いに映っている。震える手で、その受理証明書にに押印された公印を検索すると。検索結果が即座に表示された。――雄一は私を騙していた。私の婚姻届受理証明書は、偽物だった。涙が止まらず、かつては宝のように大切にしていたその書類を濡らした。何度も何度も見つめた……偽物だった。まるで、雄一との夫婦としての関係そのもののように。携帯を開き、雄一に電話をかけようとしたその時。――砂絵子のSNS投稿が表示された。【雄一の妻になって10年目~変わらず愛してるよ】写真は、雄一と彼女が十指を組んだものだ。コメント欄には数え切れないほどの【お幸せに!】が並んでいる。流れで「いいね」を押してしまった……しばらくして、雄一からの着信がきた。声には疲れがにじんでいる。「梨帆、ここまでなるとは思わなかった。動画はもう削除させたから。すべてが片付けるまで、しばらく外に出ないでくれ」その言葉が、私の最後の期待を粉々に打ち砕いた。必死に悔しさを押し殺し、喉の詰まりをこらえて聞いた。「雄一、あの受理証明書はどうなの?」雄一の声には、わずかな後ろめたさが混じった。「梨帆、あの時砂絵子の病状はかなり深刻だった。お前と付き合ってると知ってから、彼女は何度も自殺を図ったんだ。彼女を落ち着かせ、これ以上自分を傷つけさせないために、婚姻届を出すしかなかった……でもその後、お前が結婚を迫るから……仕方なく業者に頼んで場所を設け、あの証明書を作ったんだ……」彼の口から直接聞いて、ついに涙をこらえきれなかった。「私が迫ったっ!!?その時、私たち付き合ってからもう十年よ!それに……妊娠に気付いたんだから。結婚を望んだって、どこが間違ってるの!?ねえ――雄一!」「じゃ、どうしろっていうんだぁああああ!砂絵子と離婚して、お前と結婚しろって?彼女を死なせたいのかぁっ!?」彼の声には隠し切れない苛立ちと嫌気が込められ、やがて深い諦めに変わった。「梨帆、少しは俺の立場も察してくれよ……」私は黙ったまま涙を流した。――私が察しなかった?砂絵子のために7度も挙式を延期し、親しい人たちの間ではもう笑い種だった。あれほど待
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第3話

そう、私はかつて、それほど彼を愛していた。全てを許し、一度また一度と彼の行き過ぎを容認できるほどに。しかし、彼は私に何をくれた?幾度も延期された挙式、偽りの婚姻届受理証明書、多くの人々からの罵倒と、果てしないネット上の暴力。私は無意識に雄一を押しのけようとしたが、彼がぐいと抱きしめて離さない。「梨帆、俺が悪かった。許してくれないか?」そう言いながら、そっと私の額に口づけした。柔らかく、そして少し湿ったそのキスは、かすかなおずおずしさを伴っている。かつては、彼がこんな風に甘えれば、私はどんなことでも許すことを選んだ。でも今回は、もう苦しみを飲み込むことも、許すこともしたくない。――背後から鋭い女の声が響いた。「お兄ちゃん――!!何してるの!まだこの女に未練があるんでしょっ!私が本当に死ななきゃ、この女から離れないってことか!?」雄一はぱっと私を押しのけた。不意を突かれた私は、仰向けに床に転がった。お腹を押さえ思わず痛みに声を漏らしたが、雄一は一瞥もくれない。駆け出していく砂絵子を追いかけていた。その背中は、あれほど焦り、必死だった。さっきの確かな誓いなど、まるで嘘のようだ。砂絵子は、もう雄一の血肉の一部と化しているようだ。だから、彼は私と赤ちゃんのことなど、少しも気にかけていない。砂絵子は、いつだって彼の第一選択なのだ。この瞬間、私はすべてを悟った――雄一とは、ここで完全に終わったのだと。……私は病院で午後いっぱい点滴を受けた。退院する時、雄一が包帯を巻いた手の砂絵子を大事そうに抱いているところに出くわした。私が通り過ぎるのを見て、雄一はさっと身をかわした。砂絵子の視線を遮るように。――砂絵子は、そう簡単にはごまかされない。彼女は一瞬で私に気付き、目は得意げに輝き、口元をゆるめた。私の前で……わざと雄一に深くキスした。私は視線をそらさずに通り過ぎようとしたが、彼女が手を伸ばして私を引き止めた。砂絵子は雄一の手を取り、二人の同じデザインの指輪を誇示して見せた。「丹山さん、私とお兄ちゃん、明日挙式なの。ぜひ来てくださいね!」私は静かに雄一を見た。彼は少し慌てふためいた様子で。「砂絵子、梨帆には言わないって約束しただろう?」砂絵子は唇をとが
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第4話

その曲に合わせて、一歩また一歩と前へ進んでいる。側ではウェディングプランナーが位置決めの指示を出している。「はい、そのまま。それから新郎新婦はキスをお願いします」私がドアを押して出てきたのを見て、雄一はプランナーをその場から去らせた。そっと私をソファに座らせると、まだ何か企んでいる砂絵子を制した。「砂絵子、もう家に連れてきたんだ。これ以上は求めないでくれ!」雄一は私を気遣うように見つめ、乱れた私の長い髪をそっとなでながら、隠しようのない申し訳なさを浮かべている。――この表情はもう幾度も見てきた。雄一がこの表情を見せる時は、決まって私が何かしらの我慢や傷を負わされる時だった。けれど今、なぜか、心の底が妙に静かだ。「梨帆っ、約束する!!これが最後だぁ――つらい思いをさせるのはこれきりだ。砂絵子も式が済んだらもう自殺はしないと約束してくれた」――我慢し慣れてしまえば、もうどうでもよくなる。私は適当にうなずき、彼をもう一目見る気力もなくなった。ポケットの中の書類に触れ、私は雄一の方を見た。「赤ちゃんに関する書類で、あなたのサインが必要なの」そう言うと、紙とペンを取り出し、雄一の前に置いた。雄一が中身を確かめようとした時、キッチンから砂絵子の悲鳴が聞こえた。彼は細かく確認する気を失い、書類にざっとサインをすると、急いで砂絵子の元へ駆けていった。私は瞼を伏せ、書類をきちんと畳んでポケットにしまった。雄一は、包丁で切ったと見える砂絵子の指を目の前にかざすようにして見つめている。「どうしてそんなに不注意なんだ。もう少し深ければ指がもげるところだったぞ!」くどくどと言いながらも、手際よく砂絵子に包帯を巻く。明らかに、もう慣れた様子だ。砂絵子はいじらしく謝った。「ごめんなさい。お兄ちゃんのためにご飯を作りたくて……」雄一は仕方なく砂絵子の長い髪を撫でた。まるで、この世界には彼ら二人しかいないかのようだ。以前なら、きっと耐えきれないほどの心痛を感じただろう。今は、まるで感覚が麻痺しているようだ。私は静かに眼前の光景を見つめ、やがて背を向けて寝室に戻った。ドアを閉め、休息を取った。明日には、大事な用事が待っているのだ。夜中、ドアが開く音で目が覚めた。ぼんやりとスタンドライ
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第5話

砂絵子を病院へ送る途中。雄一は理由もなく不安に駆られた。胸の奥が、これまでにないほど騒ぎ立った。彼はふと、梨帆の腹を蹴りつけたあの一撃を思い出した。怒りに任せ、ありったけの力を込めて蹴りつけた、男としてあるまじき行為。狙ったのが腹だったこと、あそこには梨帆との赤ちゃんがいたこと――その事実が頭をよぎった瞬間、思わず後悔の念が込み上げ、雄一は自分の顔を強く平手打ちした。砂絵子が慌てて彼の手を握りしめた。「お兄ちゃん、怒っても自分を傷つけないで!全部、丹山さんのせいなんだから!あの人が私を傷つけようとしなければ、こんなことにはならなかったのに――!」砂絵子の腹から流れ続ける血を見つめ、雄一は無理やり自分に言い聞かせた。――大丈夫だ。赤ちゃんはもう五ヶ月だ。それに、今回は確かに梨帆が悪い。自分は間違っていない。だが、雄一は自分の心を納得させられなかった。砂絵子が集中治療室に運び込まれると、彼は真っ先に携帯を取り出し、慣れ親しんだあの番号に電話をかけた。しかし、受話器から聞こえてきたのは電源オフの案内音だった。雄一は梨帆の様子を見に行こうとしたその時、砂絵子が病室から運び出された。医師は傷は深くなく、一週間の入院で退院できると告げた。雄一が立ち去ろうとすると、砂絵子の涙が一筋ずつこぼれた。砂絵子は哀れっぽく雄一を見つめた。「私を一人で病院に置いていくの?お兄ちゃんがいなきゃ、私死んじゃう……」雄一は無理やり笑顔を作った。「そんなことないよ。ちょっと顔を洗ってくるだけだ」雄一は気もそぞらに、五日間も病院で砂絵子の世話をした。医師の退院許可が出るや否や、彼は待ちきれない様子で砂絵子を連れて家へ向かった。道中、砂絵子の青ざめた顔色にも構わず――この瞬間、彼に見たいのは梨帆だけだ。そして、彼女に謝りたい。車が玄関前に止まるや、雄一は背後にいる砂絵子さえ忘れ、砂絵子の呼ぶ声も耳に入らず、エレベーターへ一直線に駆け込んだ。これほどまでに梨帆に会いたいと思ったことはなかった。骨の髄まで染み渡るような、その切なる思い。そして、わかってきた。自分が愛しているのは梨帆なのだと。期待に胸を膨らませてドアを押し開け、家中を見回したが、あの慣れ親しんだ姿はどこにも見当たらなかった。
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第6話

雄一は、一ヶ月もの間、昼夜逆転した虚ろな日々を送った。この一ヶ月、彼は誰とも口を利かなかった。腹が減ればパンをかじり、喉が渇けば酒をあおった。まるで路頭に迷った乞食のように。砂絵子や友人たちが順番に説得に訪れた。だが雄一は彼らを一瞥することさえせず、ただ梨帆がいる夢の中に閉じこもっていた。ある日、砂絵子の傷口が炎症を起こして高熱を発し、彼の目の前で昏倒するに至って、ようやく雄一はよろめきながら立ち上がり、彼女を病院へ運んだ。不思議なことに、砂絵子が命の危機に瀕したこの瞬間でさえ、彼の頭の中は、相変わらず梨帆のことでいっぱいになっている。病院で手早く傷の処置を終え、砂絵子に点滴が打たれるのを見届けると、雄一は外へタバコを吸いに出た。中庭を通りかかった時、二人の看護師の会話が耳に入った。「看護師長、あの瀧井砂絵子って人、いったい何の力があるんですか?うちの院長まで動かして、偽の診断書を書かせるなんて」「院長の愛人だって噂よ。高校の時から囲われてたらしいわ。本気らしいよ」「院長ったら、父親くらいの年齢なのに……よくそんな気になれますね。彼氏のほうがお気の毒ですわ。すべてが芝居だって、まだ知らないんですから」タバコが指先まで燃え尽きようとしていることにも気づかず、雄一は耳を疑った。ふと、梨帆が幾度も言っていた言葉を思い出した。「鬱病の人って、彼女のような状態じゃないの。私も両親を亡くした時、鬱になったから」だが彼は、それを女の嫉妬と思い込み、むしろ梨帆に不快感すら覚えていた。初めから終わりまで、欺され続けていたのは自分だけだった。彼こそが、この世で最も愚かな男だ。最愛の梨帆を、自らの手で失った……雄一は院長室へと急いだ。ドアの前で、甲高い女の嬌声が聞こえた。鍵のかかっていないドアをそっと押し開けると――砂絵子が肌を露わにして、太鼓腹の男の上で腰を振っている。男の手は、砂絵子の背中をなぞっている。「砂絵子ちゃん、いつ俺の子を産んでくれるんだ?」砂絵子は甘えた声で答えた。「お兄ちゃんが結婚してくれるようになったら、その時よ!」雄一は無表情でその光景を見つめた。ただ、全てが茶番だと悟った空虚感が、彼の瞳を覆っている。……雄一はその動画をネットに公開した。その日の
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第7話

声が嗄れるまで、幸彦は子守歌を歌い続けてくれた。昼夜を問わず、私に寄り添い続けた。昼間は会社の仕事をこなしながらも。さらに家中の窓を全て封鎖し、一瞬たりとも私を一人にさせなかった。――ある日、幸彦が深く眠り込んでしまった時のことだ。目を覚ますと隣に私の姿がないと気づき、彼は慌てて家中を探し回った。そして、キッチンで私を見つけた。あれほど大柄で何でもできる男が、私を抱き締めて声を上げて泣いていた。幸彦のここ数日の支えがなければ、私はとっくに生きていなかったかもしれない。目の縁を真っ赤に染めた彼の顔を仰ぎ見て、私は、彼が呆然とするその視線をまっすぐ受け止めながら、微笑みを浮かべてそっとつま先を立てた。そして、命よりも私を愛してくれるこの男の唇に、そっと口づけした。闇の中から私を救い出してくれたこの男に――……半年後の今、私は幸彦と婚姻届を提出した。雪山のふもとの教会で、牧師の立ち会いのもと、結婚式を挙げた。ウェディングドレスに身を包み、15年も私を待ち続けてくれた幸彦に嫁いだ。新婚旅行を終えた後、妊娠に気付いた。でも幸彦には言わなかった。一日後が彼の誕生日だから。誕生日当日。わざわざ一日休みを取って家で過ごすことにした。幸彦が心配して付き添おうとしたが、私はきっぱりと断った。午後いっぱいかけて、テーブルいっぱいの料理と、手作りのケーキを完成させた。夕方、突然インターホンが鳴った。少し不思議に思った。幸彦は鍵を持っているはずだ。ドアを開けると、そこには予想もしなかった男の姿が――雄一は私の姿を見るなり、目頭を熱くした。ドアを閉めようとすると、彼は必死に押しとどめた。「梨帆……こんなに長く探してきたんだ。一言も話してくれないのか?」雄一は私を頭からつま先まで視線を走らせ、最後に、平坦な私の腹に釘付けになった。彼はわずかに残った望みをかけて、尋ねた。「梨帆、あの子は……」言葉を終えないうちに、私が遮った。「あの子はもういない。あんたが蹴ったのよ。これで安心?私とあの子がこれ以上まとわりついて、あんたたちの邪魔をすることはもうないんだから」雄一は激しく首を振った。「梨帆!!俺が悪かった。全部俺のせいだ!!!砂絵子を盲信した俺が愚かだった。で
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