朝、律が目を覚ました時、普段と違い頭がやけにぼんやりしていて少し頭痛がした。寝起きなのに気分が沈んでいて、昨晩のことを思い出して律はようやく納得する。──蓮が、泣いた。それだけではなく 昨晩、蓮が泣き止むまでずっと律は抱き締めていて、そのまま眠ってしまった。ベッドにも入らず、床でまだ腕の中に蓮がいる。目元が泣いたせいで赤くなっており、心なしか寝顔に影が差しているようで律の気持ちがざわつく。修治と父の言葉が律の脳裏を掠めた。 ──普段通りにしていれば戻ります。 ──ああいう類のやつは本人次第ってのが一般論だろうが。 恐らくどっちも正しいのだろう。けれど、律の不安は増す。普段通りにとは、本人次第とは。どうしていれば普段通りで、本人次第──蓮次第と言われてもまるでかわからない。律にできることがわからない。ずっと一緒にいてあのような素振りも兆候も見せたことがなかった蓮に律は戸惑っている。 無神経に怒鳴り散らして、蓮のこと、壊しちゃったんだ。 焦って判断力が低下していた。そんなことは言い訳にならない。後悔と罪悪感と恐怖が律の中で綯い交ぜになる。明るくて強くて活発な律の知っている蓮と、昨晩の蓮は別人のようだった。「蓮」 無意識に律は片手で頭を撫でようと手を伸ばした。けれど、抱いていた手が離れて茶色の癖っ毛に触れた瞬間、腕の中の蓮がびくりと震えた。手に伝う体が緊張に強張っていて、律の胸が軋む。しばらくした後に、掠れる声が小さく聞こえた。「……り、つ?」「うん。そう。おはよ」 できるだけ平静を装って返事をすると、蓮がほっと溜息をつき、ゆっくりと律の手に伝う緊張がほどけていった。修治は普段通りにしていればいいと言ったが、普段通りに触れることもいまは駄目なのだと律は反射的に理解してしまった。「おはよ。……なんで律、ここにいるん? なんか……寝落ちた?」 昨日よりちぐはぐではないが、蓮は昨晩のことをあまり覚えていないらしい。もしかしたら、律が怒鳴り散らした後の記憶ごと。そんな予感がして律は確認できなかった。「うん。寝落ち」 しかし、それでは蓮を抱きしめて眠った説明がつかないが、律は蓮の安易な仮定をそのまま肯定した。ほかにもっといい回答があったのかもしれないが、眠っている無意識の間にも触れようとしただけで震えた蓮に、律も動揺していた。いまも少し、動悸がする
최신 업데이트 : 2026-02-10 더 보기