王城の大広間は、普段見ることのできない荘厳さに満ちていた。天井には精巧な彫刻が施され、壁には歴代の王の肖像画が並んでいる。巨大なシャンデリアが光を放ち、大理石の床が鏡のように輝いていた。貴族席は階段状に配置され、壇上が一望できるようになっている。 私は後方の席に座っていた。末端の伯爵家である私たちの席は、決して前方ではない。でも、壇上はよく見えた。兄様は前方の席に座り、胸を張って式の進行を見守っている。 授与式が始まった。 国王が玉座に座り、宰相が名前を読み上げていく。功績を挙げた貴族たちが順番に前に出て、片膝をつく。剣が肩に当てられ、新しい爵位が授けられていく。拍手が起こり、祝福の言葉が響く。 やがて、ダリウスの名前が呼ばれた。「ダリウス・オルフェイン」 宰相の声が大広間に響いた。私は息を呑んだ。壇上に、ダリウスが進み出る。 漆黒の正装に身を包んだ姿は、圧倒的だった。濃紺の髪が光を反射し、鋭く整った横顔が浮かび上がる。背筋を伸ばし、一歩一歩確実に歩く姿には、戦場で培われた威厳があった。 壇上の中央で、ダリウスは立ち止まった。国王の前で、片膝をつく。頭を垂れ、剣を捧げ持つ。国王が立ち上がり、ダリウスの前に進む。「汝の功績を称え、侯爵の位を授ける」 国王の声が響いた。剣がダリウスの右肩に、左肩に、そして再び右肩に当てられる。厳かな儀式が進行し、会場は静まり返っていた。「立て、ダリウス・オルフェイン侯爵」 ダリウスが立ち上がった。国王から勲章を受け取り、胸につける。金と銀で作られた勲章が、光を反射して煌めいた。 拍手が沸き起こった。大広間中に響く拍手の音。私も手を叩いた。目の前がぼやけて、視界が滲む。涙が溢れそうになって、私は強く瞬きをした。 侯爵。ダリウスが侯爵になった。 壇上から階段を降りるダリウスの姿を、私は目に焼き付けた。凛とした立ち姿。迷いのない足取り。まるで生まれながらにして高貴な身分であったかのような、自然な立ち居振る舞い。 周囲の貴族たちが囁き合う声が聞こえた。「あれがダリウス・オルフェイン侯爵か」「戦場で何度も奇跡を起こした男だ」「若いのに、あの威厳。将来が楽しみだな」 賞賛の声。羨望の眼差し。ダリウスは誰からも注目される存在になっていた。 遠い人。 手の届かない、高い場所にいる人。 私は小さく息を吐い
Last Updated : 2026-01-22 Read more