LOGIN「姫、どうか俺と一生を添い遂げてください」 九歳のアリアは、兄の幼馴染であるダリウスにごっこ遊びで求婚された。手の甲に落とされた騎士のキス。幼心に刻まれたその言葉は、アリアの初恋となった。 八年後——長い戦争が終わり、ダリウスは英雄として帰還する。 寡黙で無表情な彼は、さらに精悍で魅力的な男性になっていた。 舞踏会で美しい令嬢たちに囲まれるダリウスを見て、アリアは胸が苦しくなる。嫉妬に駆られ、幼い日の約束を持ち出して身体の関係を持ってしまった――。 ※溺愛・独占欲強めのヒーロー×一途なヒロインの甘々ラブストーリーです。
View More「あのときの求愛の言葉は、有効かしら」
ベッドにいる私は、小さく呟いた。部屋を出て行こうとしているダリウスの足が止まる。
窓の外で光る月で照らされているダリウスの目が泳いだ。
「あのとき……求愛?」
ダリウスの声が、僅かに戸惑っているように聞こえた。
ああ、彼は覚えてない――。
あれは、ごっこ遊びに過ぎない。記憶に残っている方がおかしい。
わがままな友人の妹に、付き合ってくれただけ。あの後、ダリウスは屋敷に来なくなったのが何よりもの証拠だ。
私のせいで、兄とダリウスの時間を奪ってしまった。
「一生添い遂げるって、言ってくれた」
私は顔を上げて、ダリウスを見つめた。彼の瞳が、僅かに見開かれる。そして——私は、彼の唇に自分の唇を重ねた。
触れるだけの、軽いキス。ダリウスの唇は、温かかった。柔らかく、優しい感触。
心臓が破裂しそうなくらい、激しく打っている。顔が熱く身体中が、火照っていた。
我に返った私は、顔を真っ赤にして布団に潜り込んだ。
(なってことを! 私はしてしまったんだ)
嫉妬に狂って、こんなことをしてしまった。恥ずかしさと、後悔と、どうしようもない感情が、胸の中で渦巻いている。
布団の中で、私は身体を丸めた。このまま、消えてしまいたい。心臓が早鐘を打ち、息が荒くなる。
布団の中に隠れたはずなのに、あっという間に布が剥がれた。ダリウスの手が、私の手を掴む。
「アリア……その気にさせておいて、逃げるのはずるい」
低い声が、耳元で響いた。
ダリウスの指が、私の指と絡み合う。手が繋がれた。温かい手。大きな手。彼の手が、私の手を包み込んだと思ったら、両手をベッドに押し付けられて、身動きを封じられる。
(――え?)
ダリウスの顔が、近づいてきた。彼の唇が、再び私の唇に重ねられる。今度は、触れるだけではなかった。深く、濃厚なキス。舌が唇をなぞり、口を開けるように促してくる。
口を開くと、舌が中へと侵入してきた。舌が絡み合い、甘い吐息が漏れる。息が苦しい。頭の中が、真っ白になっていった。
だんだんとキスが深まっていく。ダリウスが私の口の中を探るように、舌を動かしてきた。
吸われて舐められ、身体が熱くなる。彼の唾液が、私の口の中に流れ込んでくる。濃密で、甘い味がした。
ダリウスの手が、繋いでいた手を離して、私の身体を撫で始めた。ドレスの上から、肩を撫で、腕を撫で、腰を撫でていく。
さらに身体が、熱くなる。彼の手が触れた場所が、まるで火傷したみたいに火照っていく。ドレスの布地越しでも、彼の手の温かさが伝わってきた。
「アリア」
ダリウスの低い声が、耳元で響く。彼の声を聞くだけで、身体の奥が熱くなる。
ダリウスの手が、ドレスの紐を解き始めた。背中の紐が解かれ、ドレスが緩んでいく。肩から滑り落ちると肌が露わになっていった。冷たい空気が肌に触れ、鳥肌が立つ。
「寒いか」
ダリウスが囁く。私は首を横に振った。寒くない。彼の体温が、私を温めてくれている。
ドレスが完全に脱がされ、下着姿になる。恥ずかしさに、腕で胸を隠した。ダリウスが優しく、私の腕を掴む。
「隠さないで。アリアを見たい」
低い声に、私は腕を下ろした。ダリウスの視線が、私の身体を舐めるように見つめる。熱い視線。欲望を含んだ視線。見られているだけで、身体が熱くなって溶けてしまいそうだ。
ダリウスが、私の胸に手を伸ばす。柔らかい膨らみを包み込む。優しく揉まれ、吐息が漏れた。
「ん」
声が漏れた。慌てて口を押さえる。ダリウスの唇が、私の首筋に移動する。熱い舌が肌を這い、鎖骨を舐める。吸い付かれ、赤い痕が残る。彼の痕が、私の身体のあちこちに刻まれていった。
ダリウスの唇が、胸の先端に触れる。舐められ、吸われ、身体が跳ねる。腰が浮き、シーツを握りしめた。
「――っ、ん」
「声を出していい。聞きたい」
囁きに、頬が熱くなった。恥ずかしさと、得体の知れない感覚が、胸の奥に広がっていく。ダリウスの手が腹を撫で、腰を撫で、太腿へと滑っていく。内側を撫でられ、息が荒くなった。
ダリウスの指が、下着の中に入ってくる。直接、肌に触れる。熱い指先。今まで誰にも触れられたことのない場所。自分でさえも触れたことのない場所に、彼の指が触れている。
「力を抜け」
低い声に従い、身体の力を抜く。ダリウスの指が、秘所に触れた。ゆっくりと撫でられ、熱が集まっていくのが分かる。指が割れ目をなぞり、入口を探る。濡れていく自分が分かり、羞恥心が込み上げてくる。
「ここ、初めてか」
問いに、私は頷いた。ダリウスの指が、ゆっくりと中に入ってくる。異物感に、身体が強張った。痛くはないが、居心地の悪い感覚。
「痛いか」
「平気、です」
ダリウスの指が動き始めた。出し入れを繰り返し、中を探るように動く。痛みと、くすぐったいような感覚が混ざり合い、身体が熱くなっていった――。
春の午後、エリオット伯爵家の中庭で剣の稽古をしていた。カレルと木剣を交え、基本の型を確認する。日差しは柔らかく、風が心地よく頬を撫でていく。「もう一本行くか」 カレルが木剣を構え直した。俺も構えを取る。互いに視線を交わし、間合いを測る。「お兄様、ダリウスお兄様!」 甲高い声が聞こえた。振り返ると、アリアが中庭に駆け込んできた。淡い金髪が風に揺れ、大きな淡緑色の瞳が輝いている。白いドレスの裾を翻し、息を切らしながら俺たちに近づいてくる。 九歳になったアリアはとても可愛い。心臓が、不規則に跳ねた。「お姫様ごっこしましょう!」 アリアが無邪気に笑う。俺とカレルを交互に見上げ、期待に満ちた瞳を向けてくる。「アリア、今は剣の稽古中なんだ」 カレルが苦笑しながら妹の頭を撫でた。アリアは頬を膨らませる。「いいじゃない。少しだけ」「仕方ないな」 カレルが俺を見た。俺は頷く。アリアの願いを断ることなど、できるはずがなかった。「それじゃあ、お姫様に結婚を誓うのは、勝った方よ!」 アリアが無邪気に提案した内容に俺の心臓が激しく打った。結婚を誓う。「妹のごっこ遊びに、そこまで本気になる必要はないだろう」 カレルが笑いながら言った。ごっこ遊び。子どもの戯れ。カレルにとっては、妹を喜ばせるための遊びでしかない。 だが俺は違う。 木剣を構え直した。視線をカレルに向ける。今日は負けられない。絶対に勝つ。アリアに誓いを立てる権利を、手に入れる。 いつもなら、ぎりぎりのところでカレルに勝利を譲っていた。友人の面子を潰さないように。兄として妹の前で格好をつけさせてやるために。俺が本気を出せば勝てる相手だと分かっていたが、それを表に出すことはなかった。 でも今日は違う。 カレルが剣を振るってくる。俺はそれを受け流し、反撃に転じる。速い。いつもより速い動き。カレルの目が見開かれた。「おい、ダリウス」 カレルが驚いた声を上げる。俺は答えない。ただ剣を振るい続ける。カレルの剣を弾き、隙を作る。 剣先が、カレルの首元に触れた。 勝った。「やったぁ! ダリウスお兄様が勝った!」 アリアの歓声が響く。俺は木剣を下ろし、膝をついた。アリアの前で、片膝をつく。 小さな手を取った。柔らかく、温かい手だった。華奢で、儚い。 手の甲に、唇を寄せた。「憎きライバルに
教会の扉が開く音がした。重厚な木の扉が、ゆっくりと左右に開いていく。中からオルガンの音色が聞こえてきた。荘厳で、美しい旋律。胸が高鳴り、心臓が激しく打ち始める。「緊張してるか?」 兄様が小声で聞いてきた。私の左腕に、兄様の右腕が添えられている。礼服姿の兄様は、いつもより凛々しく見えた。「――はい」 私は震える声で答えた。手が冷たく、膝が震えている。深呼吸をしても、緊張は解けなかった。「大丈夫。アリアは綺麗だ」 兄様が優しく微笑んだ。温かい眼差しが、私を包み込む。その笑顔に、少しだけ緊張が和らいだ。 バージンロードが、視界に広がった。真っ白な絨毯が、祭壇まで続いている。両脇には花が飾られ、甘い香りが漂っていた。参列者たちが座席に座り、私たちを見ている。 オルガンの音色が大きくなる。入場の合図だった。私は兄様と共に、一歩踏み出した。 白いウェディングドレスが揺れる。裾が床に触れ、レースが柔らかく広がる。胸元には小さな真珠が縫い付けられ、光を反射してきらきらと輝いていた。長いベールが背中から流れ、歩くたびに揺れる。 一歩、また一歩。ゆっくりと前に進む。参列者たちの視線が注がれているのを感じたが、私の目は祭壇だけを見ていた。 祭壇の前に、ダリウスが立っていた。 漆黒の礼服に身を包んだ姿は、圧倒的だった。濃紺の髪は丁寧に整えられ、鋭く整った横顔が浮かび上がる。胸には勲章がつけられ、侯爵としての威厳が漂っていた。 ダリウスの灰青色の瞳が、私を捉えていた。じっと、真っ直ぐに。私だけを見つめている。愛情が溢れている瞳。優しさと、喜びと、切なさが混ざり合った眼差し。 胸が熱くなった。涙が溢れそうになって、強く瞬きをする。 祭壇の前にたどり着いた。兄様が立ち止まり、私の手を取る。そして、ダリウスに手渡してくれた。「頼んだぞ」 兄様が小声で言った。ダリウスは頷き、私の手を握る。大きく温かい手。安心感が広がった。 兄様が席に戻り、私とダリウスだけが祭壇の前に残された。司祭が前に立ち、聖書を開く。「本日、ここに集いし皆様の前で、この二人は永遠の誓いを交わします」 司祭の声が、教会中に響いた。私は緊張で身体が強張っていたが、ダリウスの手が優しく握り返してくれる。「ダリウス・オルフェイン、あなたは、アリア・エリオットを妻とし、良き時も悪き時も、富める
朝日が眩しかった。窓から差し込む光が、目を刺すように感じられる。私は身体を起こし、ベッドから降りた。全身が痛い。昨夜、何度も激しく求められた痕が、身体のあちこちに残っていた。 ドレスに着替える。首元が広く開いていて、キスマークが隠しきれない。 ダリウスが寝室に入ってきた。整った身なりで、昨夜の激しさが嘘のように落ち着いた様子だった。「帰るのか」 低い声で聞いてくる。私は頷いた。「帰らないと、お兄様が心配します」 今まで、朝帰りをするのは兄様だった。舞踏会やパーティから帰らず、翌朝に上機嫌で戻ってくる。私はいつも、呆れながら出迎えていた。 今日は違う。私が朝帰りをする。初めての朝帰り――。 馬車が用意され、私たちは屋敷を出た。揺れる馬車の中で、ダリウスが私の手を握ってくれる。大きく温かい手。安心感が広がった。 私の屋敷に近づいてくると、胸が騒いだ。兄様に何と言えばいいのか。朝帰りを叱られるのは分かっている。「屋敷の前で大丈夫です」 私はダリウスに告げた。玄関まで一緒だと、兄様に見られてしまう。ダリウスは首を横に振った。「玄関ホールまで送る」 彼の声は決然としていた。「でも、兄様がいたら」「構わない」 ダリウスの灰青色の瞳が、真っ直ぐ私を見ていた。迷いのない瞳に私はドキリと胸が高鳴る。「もしかしたらお兄様も朝帰りでいないかもしれません」 兄様は昨夜の舞踏会で、綺麗な貴婦人と一緒だった。私よりも帰りが遅い可能性はある。 馬車が屋敷の前に止まった。御者が扉を開け、私は馬車から降りる。玄関に向かおうとして、足が止まった。 玄関前に、我が家の馬車が停まっていた。 心臓が冷たくなった。兄様が帰っている。今日に限って、早く帰ってきている。「まずい……かもしれない」 小さく呟いた。ダリウスが私の肩に手を置く。「大丈夫だ」 彼の声が、背中を押してくれる。私は深く息を吸い、玄関の扉に手をかけた。 扉を開けると、玄関ホールに兄様が立っていた。 腕を組み、仁王立ちしている。意外と髪は整っており、礼服姿のままだった。顔は怒りで紅潮し、眉間には深い皺が刻まれている。(ええ? もしかして昨日に限って真っ直ぐ帰ってきていたの?) しかも怒っている。すごく怒っている。「兄様、ただいま帰りました」 私は震える声で挨拶した。兄様はじっと私を
馬車が止まった。ダリウスの屋敷に到着したのだ。窓の外には、見慣れた石造りの壁と、立派な門が見える。 身体がぐったりとして、力が入らなかった。馬車の中で一度頂点を迎え、全身の力が抜けてしまっている。ダリウスの胸にもたれかかったまま、私は浅い息をついていた。 ダリウスが自分の外套を取り、私の身体にかけてくれた。乱れたドレスを隠すように、丁寧に外套で包み込んでくれる。彼の匂いがして、安心感が広がった。 御者が扉を開ける。ダリウスは私を横抱きにしたまま、馬車から降りた。外套に包まれた私を、しっかりと抱きしめている。「ダリウス様、お帰りなさいませ」 使用人たちが玄関に並んでいた。皆、驚いた顔をしている。侯爵様が女性を抱いて帰ってきたのだから、当然だった。 ダリウスは何も言わずに、屋敷の中に入っていった。階段を上り、廊下を進む。使用人たちが後ろで囁き合う声が聞こえたが、ダリウスは気にする様子もなかった。 寝室の扉を開け、中に入る。扉が閉まると、外の音が遮断された。静かな部屋。大きなベッドと、暖炉の火だけが灯る空間。 ダリウスが私をベッドに降ろした。柔らかい感触が背中に伝わり、天蓋が視界を覆う。ダリウスが私の上に覆いかぶさってきた。「ダリウス」「アリア」 彼の瞳が、熱を帯びていた。灰青色の瞳が、月明かりを受けて鋼色に見える。欲望と愛情が混ざり合った、熱い眼差し。 外套が脱がされた。次にドレスの紐が解かれ、布が肌から剥がされていく。冷たい空気が肌に触れ、鳥肌が立った。ダリウスの手が、私の肌を撫でる。肩から腕へ、腕から腰へ。大きく温かい手が、私の身体をゆっくりとなぞっていく。「綺麗だ」 ダリウスが囁いた。低く、甘い声。「今日、会ったときから、このドレスを俺が脱がすって決めてた」 頬が熱くなった。会ったときって――。「会ったときって、授与式の前」 私が言いかけると、ダリウスが頷いた。「ああ、侯爵になれば、アリアを自由に抱ける。妻にもできる」 彼の手が私の頬を撫でる。「あのときの約束が叶えられると、喜びで震えた」 あのときの約束。九歳の時の、ごっこ遊びでの誓い。 忘れられていたかと思ったが、ダリウスは覚えていてくれた? キスの雨が降ってきた。首筋に、鎖骨に、胸元に。ダリウスの唇が、私の身体のあちこちにキスを落としていく。熱く、甘いキス。