恋人になって、初めての出勤日だった。 いつものようにシャワーを浴び、用意された服を着て、朝食をとる。 いつもと同じはずなのに、何かが違う。 雄一の視線だ。 今まで、朝食の時間の雄一は、ほとんど無表情だった。黙々と食べ、黙々と片付け、淡々と出かけていった。 でも今朝は、違う。 雄一が、湊を甘い目で見ている。口角が上がって、唇が緩やかな弧を描いている。一緒にいられることが嬉しくてたまらない、というような顔をしている。 そんな表情、見たことがなかった。 湊は、落ち着かなかった。視線を感じるたびに、頬が熱くなる。箸を持つ手が、少し震える。 ――こんなふうに見られるのは、初めてだ。 元婚約者との関係では、湊が見る側だった。相手の機嫌を窺って、相手の顔色を読んで、相手に合わせて。 見られる側になるのは、慣れていなかった。 朝食が終わると、雄一が食器を洗い始めた。 湊も手伝おうとしたが、雄一に「僕が湊のためにやりたいから」とやんわり断られた。仕方なく、食洗機に入れていた昨夜の食器を片付けることにした。 不思議に思ったことがある。 朝は手洗いで、夜は食洗機を使う。なぜそんなふうに使い分けているのだろう。 聞いてみたら、意外な答えが返ってきた。「夜は、湊とゆっくり過ごしたいから」 強いこだわりがあるのかと思っていた。でも、理由はそれだけだった。 恋人と一緒の時間を過ごしたい。そのために、家事の効率を変える。 ――この人は、本当に俺のことを大切に思ってくれているのだ。 そう思うと、胸が温かくなった。 雄一が食器を片付けている間に、湊はネクタイを締めて出勤の準備を整えた。雄一は食事前にすでに準備を終えているらしく、その時間は必要ない。 鞄を持って玄関へ向かうと、雄一はすでに靴を履いて待っていた。柔らかい笑みを浮かべている。「お待たせしました」「行こうか」 雄一がドアノブに
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