朝、湊より早く起きて朝食の準備をする。 その何気ない毎日が、雄一にとって今までにないほどの幸せだった。 ようやく手に入れた、愛する人。「湊……」 彼の名前を口の中で転がすだけで、胸の中がじんわりと温かくなる。 もう何年も、恋い焦がれた人だ。湊を手に入れるために、どんな手段でも使った。湊が傷つくと分かっていても、だ。 湊がこの部屋に来て、三か月が経った。 すっかりここでの生活リズムも整い、雄一が起こしに行かなくても、湊は自分で起きてくるようになった。ふたりで朝ご飯を食べ、仕事に行き、夜を過ごす。 四六時中、湊と一緒にいられる。 その事実に、どれだけ胸がときめいたか分からない。* 雄一は、小さいころから表情の乏しい子供だった。 うれしくて仕方ないのに、「うれしくないの?」とよく言われた。怒っていても、「鷹宮はそんなことじゃ怒らない」と、気づいてもらえなかった。 そうこうするうちに、本当に自分の気持ちを表にだす方法を忘れてしまった。 どうせ本気で怒っても、喜んでも、誰も気づいてくれない。 だから、無表情でいるほうが、楽だった。 感情を殺して、冷静に、理性的に。それが、雄一の生き方になった。 けれど、湊と生活するうちに、それができなくなった。 自分でも驚くほど、表情が豊かになった。うれしいと口元が緩む。目元が下がる。湊の顔を見るだけで、頬が熱くなる。 そして湊は、それを感じ取ってくれた。 雄一の小さな表情の変化を、読み取ってくれた。 そのことが、いつも心を温かくした。 やっと、分かってくれる人に出会えた。 やっと、自分を見てくれる人に出会えた。 湊さえいれば、他にはなにもいらない。 会社にも行かず、湊を腕の中でずっと抱きしめていたいとさえ思う。 けれど雄一の立場上、それは無理な話だった。 会社には行かなければならな
Last Updated : 2026-02-21 Read more