私・月島佳奈(つきしま かな)は重度の海老アレルギーだ。出汁が一滴ついただけでも、呼吸困難に陥るほど深刻なものだった。かつて、家族は私を、触れれば壊れてしまう「ガラスの姫」のように扱っていた。だから食卓に海鮮が並ぶことは決してなかったし、親戚の集まりでさえ、両親は口酸っぱく周囲に注意を促してくれていた。けれど、妹が生まれてから全てが変わった。妹は何よりも海老が好物で、いつも母にねだっていた。その時、母・月島律子(つきしま りつこ)は初めて私に向かって声を荒らげた。「あんた、少しは離れていられないの?わざわざ妹を不機嫌にさせなきゃ気が済まないわけ?」父・月島彰人(つきしま あきと)は何も言わず、ただ黙ってキッチンのドアを閉め、私に一枚のマスクを手渡すだけだった。だが、父の昇進祝いの日。悲劇は起きた。出された料理の中に隠されていた海老のすり身を、私は誤って口にしてしまったのだ。瞬く間に喉が締め付けられる。私は首を掻きむしりながら母に助けを求めた。呼吸ができず、顔は紫色に変色していたはずだ。けれど母は、私のすがりつく手を冷たく振り払った。その声は、氷のように冷え切っていた。「今日はお父さんの大事なお祝いの日なのよ。また仮病を使って気を引きたいの?みんながあんたのご機嫌取りをしてくれるとでも思ってるわけ?さっさと部屋に失せなさい!」彼女は私を寝室に突き飛ばすと、ドアを乱暴に閉め、外から鍵をかけた。私にはもう、助けを呼ぶ力さえ残っていなかった。薄れゆく意識の中で聞こえるのは、外でグラスを交わし、笑い合う祝福の声だけ。私の爪は絶望的にドアを搔き、板には幾筋もの血の跡が刻まれていった。……父の昇進祝い。家には大勢の客が詰めかけていた。喉の灼熱感は強まる一方で、まるで無数の針で刺されているようだ。私は首を掻きむしり、よろめきながら母の元へ駆け寄り、掠れた息で訴えた。「お母さん……助け……」さっき、小野(おの)さんが可愛らしい「ウサギ団子」を取り分けてくれて、私は何も考えずに食べてしまったのだ。だが中身は、海老のすり身だった。母はグラスを片手に、父の上司と満面の笑みで乾杯していた。私の苦しむ姿を見ると、その笑顔は一瞬で消え失せ、代わりに極度の嫌悪感が浮かび上がった。彼女
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