私・瀬川清葉(せがわ きよは)の母が突然危篤になった。救急処置の前、母は私の手を握り、必ず夫の瀬川諒(せがわ りょう)を呼んでほしいと懇願した。伝えたいことがあるのだと。私は手術室の外で、諒に何度も電話をかけた。だが医師が出てきて、残念そうに首を振るまでかけ続けても、諒は出なかった。私の中で張り詰めていた糸が、ぷつりと切れた。ふいに電話が繋がった。出たのは白川雪菜(しらかわ ゆきな)だった。「清葉さん、先生は私の親からの結婚の催促をかわすのを手伝ってくれて、その後飲みすぎちゃったんです。何かあれば私に言ってください」母の遺体を見つめながら、私は氷のような声で言った。「諒に伝えて。母が亡くなったわ。あの実験機材がまだ欲しいなら、病院に来なさい」だが母の葬儀が終わっても、諒は現れなかった。……母が亡くなってから葬儀まで、わずか三日。だがこの三日間、諒は一度も姿を見せなかった。親戚や友人たちは陰で不満を漏らしていたが、私は聞こえないふりをするしかなかった。だが私にはわかっていた。諒とのこの形ばかりの結婚は、もう終わりにすべき時が来たのだと。離婚協議書を作成した後、私は再び諒に連絡を試みた。だが電話は相変わらず繋がらない。きっと忙しいのだろう。自分で彼のための言い訳を作ったところで、ドアを開けると、玄関に彼の革靴が置いてあった。その横には、小さな白いスニーカー。私のものではない。靴を履き替えて部屋に入ると、半月も姿を消していた諒が袖をまくり上げ、血のついた下着を洗っているところだった。そしてこれもまた、私のものではない。私を見て、彼は少し意外そうな顔をしたが、手は止めなかった。「清葉、今日はどうしたんだ?病院でお母さんに付き添ってないのか?」お母さん?母はもう葬儀も終わったというのに、どこに付き添えというの?地獄?それとも天国?諒と再会した時のことを、私は何度も想像していた。きっと口論になり、泣き叫び、声を枯らすのだろうと。だが今の私は、自分でも驚くほど冷静だった。なぜ他の女の下着を洗っているのかと問い詰める気力すら湧かないほどに。私が洗面器の中の下着を見つめているのに気づいて、諒はさらりと言った。「雪菜が生理で汚しちゃってね。あの子、生理痛がつらそう、代わりに洗って
Read more