「――藤川君、こないだの提案、先方さんもすごく喜んで下さってたわよ。『センスがいい』って」 今日も雑貨メーカー〈ユアサプロダクツ〉・商品デザイン部のオフィスで、幸樹さんが部長の江坂恭子さんから褒められている。でも、実際にそのコラボ商品の提案書を作ったのはあたしだった。それを、彼はまた自分の手柄にしたのだ。でも、それを主張したところで部長はおろか、ここにいる人はほとんどみんな信じてくれないだろう。「ははっ、ありがとうございます。いやぁ、あれはたまたまいい提案書が書けただけで……」(……よく言うよ。自分では何も考えてなかったくせに) あたしはそんな彼のことを苦々しく思いつつも、口に出しては言えずに怯えていた。そんなことをしたら、彼に殴られるだろうことは目に見えていたから。「……よく言うよねー。あの提案書って、由衣が夜遅くまで残業して作ったんじゃんねぇ」 隣のデスクから、柴崎玲奈がヒソヒソと小声であたしに毒を吐いた。彼女はあたしの高校からの親友で、この会社の同期入社組でもある。周りの人たちがみんな幸樹さんの外ヅラにコロッと騙されている中で、彼女だけが唯一あたしの言うことを信じてくれる味方なのだ。「しっ! そんなこと、あの人に聞こえたらあたしがヤバいんだからね!」「あ、ゴメン! そうだった」 あたしはすかさず玲奈を窘める。あたしの数少ない味方でいてくれるのはすごくありがたいのだけれど、あまり目立つような言動は控えてほしい。「それに、どうせ信じてくれるのは玲奈だけだよ」「そっか……。なんかそれって悲しいよね。せっかく頑張っても、誰にも認めてもらえないって。目立たない日陰の存在で、アンタはそれでホントにいいわけ?」「…………よく……はないけど。あたしはただ、平和に日常を送れたらそれでいいからさ」 下手に目立って彼から睨まれるくらいなら、波風を立てないように大人しくしていた方がいい。「アンタ……、それで息苦しくないの? あたしでよければ逃げ場所になってあげようか?」「……………………いい。玲奈までひどい目に遭わされたくないし」 多分、飲みながらグチくらいは聞こうか? という意味で言っているんだとは思うけれど。あたしの問題で、親友に迷惑をか
Last Updated : 2026-02-02 Read more