All Chapters of 白きキキョウは光の中へ: Chapter 21

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第21話

初夏の海辺で、ささやかな結婚式が執り行われていた。柔らかな陽射しが降り注ぎ、潮風が微かに磯の香りを運んでくる。純白のウェディングドレスに身を包んだ結衣は、手に白いキキョウのブーケを持っていた。それは「永遠の純潔と希望」を象徴する花だ。バージンロードの果てで、朔が静かに手を差し伸べた。その声は優しく、しかし確かな響きを持っていた。「結衣、僕と結婚してくれるかい?」「ええ、誓うよ」彼女は微笑み、その目尻にはキラキラと光る涙が浮かんでいた。参列者席の最後列の片隅で、司は黒いスーツを着て、音のない影のように静かに座り込んでいた。朔の腕に手を添えてゆっくりと歩みを進める彼女の姿を見るたび、その一歩一歩が自分の心臓を重く踏みつけていくようだった。ふと、遠い昔の記憶が蘇る。いつだったか、彼女が自分の肩に寄りかかり、目を輝かせて言ったことがあった。「ねえ司、私たちの結婚式は海辺で挙げようね。人はあまり呼ばずに、二人きりで。白いキキョウの花を少しだけ飾って……どう?」あの時の自分は翌日の企業買収のことで頭がいっぱいで、ただ「ああ」と生返事をしただけだった。今、彼女の願いは叶った。ただ、その隣に立つ新郎は自分ではない。「健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も……」神父の厳かな言葉が波音に混じって響く。結衣と朔は指を絡ませ合い、声を揃えて答えた。「はい、誓います」その瞬間、司は静かに目を閉じた。悔しさが巨大な津波となって、彼を息もできないほどに飲み込んでいく。結衣を追い出してからのこの数年間、彼は毎晩のように不眠に悩まされた。夢に見るのは、柊家から追い出された日の彼女の蒼白な顔ばかりだった。何度も深夜に跳ね起き、無意識に隣へ手を伸ばして彼女を掴もうとしたが、触れるのは冷たい空気だけだった。酒もタバコも、贅を尽くした遊びもすべてやめたが、彼女への狂おしいほどの思慕だけは、どうしても断ち切ることができなかったのだ。それでも分かっていた。自分にはもう、彼女の幸せな世界に足を踏み入れる資格などないということを。愛の誓いが交わされたその時、結衣はふと何かの気配を感じ、無意識に最後列の片隅へ視線を向けた。だが、そこには誰もいなかった。ただ潮風が空席を吹き抜け、白いキキョウの花びらを一枚、ふわ
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