一ノ瀬颯太(いちのせ そうた)と、最も深く愛し合っていると信じていた。私は都内でそこそこ名の知れた経済記者で、彼は投資界の寵児だった。しかし、私との単独取材の当日、彼はまたしてもすっぽかした。私のことが気に入らない上司の町田が、小馬鹿にしたように嘲笑った。「八年も寝てりゃ、一度くらい取材に応じてくれてもよさそうなのにね?もう飽きられちゃったんじゃないのか?そりゃそうよ!自分から飛び込んで、ただで抱かせる女なんて、軽く見られるに決まってるだろ!」相手にするのも馬鹿らしく、私は颯太に電話をかけようと外へ出た。すると、目の前に彼の愛車、ロールス・ロイス・カリナンが停まっているのが見えた。歓喜が込み上げ、声をかけようとしたその時。ドアが開き、颯太がエスコートするようにある女性を降ろした。二人の距離は、あまりにも親密だった。横にいた町田が、意地悪く囁いた。「おい、お前の男が宿敵とイチャついてるぞ?浅川さん、寝取られたな」私は唇を噛みしめ、カリナンから目を逸らさずにスマホを耳に当てた。「……ええ、回収の手配をお願い。粗大ゴミを出すから」電話の内容が理解できない町田は、怪訝な顔で私を覗き込んだ。けれど、私は寄り添い合う二人の背中をじっと見つめていた。八年も付き合っているのに、颯太は極端な秘密主義で、外で手を繋ぐどころか、私に笑いかけることすら稀だった。なのに今、彼は白石凛花(しらいし りんか)に向けて、見たこともないほど甘く、熱を帯びた瞳で微笑んでいる。視界が滲みそうになるのを必死に堪え、彼に電話をかけた。彼は画面を見て、眉をひそめた。 少し間を置いてから、電話がつながった。「……今どこ?」私は平静を装って聞いた。「忙しいんだ」「どこで?今日は約束したはずじゃ……」私の問いかけを、彼は容赦なく遮った。「誰の許可を得て俺の予定を探っている?楓、立場をわきまえろ」電話は切れた。彼はそのまま、凛花の唇に軽くキスを落とした。指の爪が掌に食い込み、折れた。八年――三千日近く。私は何度も彼に会いたいと願った。返事はいつも「忙しい」私が凛花とプロデューサーの座を争っていて、今回の彼への取材が昇進の決定打になると知っていたはずなのに。それでも彼は「忙しい」と言った。凛花の取
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