二木和光(ふたき かずみつ)とおせち料理の食材を買いにスーパーへ向かう途中、久しぶりに同じ大学出身の竿代敦(さおしろ あつし)と出会った。和光を見るなり、敦が口にした最初の言葉はこうだ。「知ってる?小賀坂葵(おがさか あおい)が帰国したんだって」私は思わず和光の顔を見た。すると、彼も微笑みながら私を見つめている。「悦子、また変な想像してるか?葵とはもう、とっくの昔に終わったことだ」彼は顔を上げ、改めて敦に私を紹介した。「紹介しよう。俺の彼女、夕部悦子(ゆうべ えつこ)だ。彼女も俺たちと同じ大学の出身だけど、学部は別だ」正直に言うと、私は変な想像はしていなかった。というのも、和光と葵の別れ方はお世辞にも綺麗とは言えず、さらに葵は皆の目の前で和光をブロックし、縁を切ったのだ。その後、長い間葵の話題が出るたびに、和光は苦々しい表情を浮かべていた。二人が昔話に花を咲かせている間、私は隣の棚へ食材を選びに行った。戻ってくると、ちょうど敦のこんな言葉が耳に入った。「実はさ、昨日、小賀坂から君の連絡先を教えてほしいって頼まれて……」帰り道、和光はスマホを握りしめたまま、ずっと心ここにあらずの様子だ。三度続けて名前を呼んで、ようやく彼は我に返った。スマホをしまい、優しく私の手を引いた。「ごめん、悦子。今晩何を作ってあげようか考えてたら、ついぼーっとしちゃった」私は答えず、身をかわして彼の手に触れられるのを避けた。そして、彼のスマホを指差した。「小賀坂さんに友だち追加されたの、見えちゃった」和光は一瞬たじろいだが、すぐに私の目の前で彼女をブロックした。道すがら、彼はしつこく説明と謝罪を繰り返したが、私は一切取り合わなかった。角を曲がった途端、耳元で続いていた喋り声がふっと消えた。振り返ると、いつの間にか和光の姿が見えなくなっている。込み上げてくる惨めさに、五年前に私が和光を好きになった時、周囲から言われた忠告が頭をよぎった。「諦めて。二木が一生愛するのは、小賀坂ただ一人よ」「あの二人は正真正銘の幼馴染なんだ。後から現れたあなたが、どうして取って代われるなんて思うわけ?」「はっきり言うけど、たとえいつか二人が本当に別れたとしても、二木が小賀坂を忘れることはないよ」考えれば考えるほ
Ler mais