海外を飛び回ること一年。ようやく帰国した私を待っていたのは、ディンクスを誓ったはずの夫の鳴海朔也(なるみ さくや)と、その初恋の相手、浅見舞花(あさみ まいか)との間に子供ができたという衝撃の事実だった。激しく問い詰める私、桐谷紗雪(きりたに さゆき)に対し、朔也は悪びれる様子もなく平然としている。「舞花の夫は子供が作れない体なんだ。俺のあのどん底だった時期を支えてくれたのは彼女だし、今、俺はこの恩を返さなきゃいけないんだ」義理の両親までもが私を丸め込もうとする。「老後の備えだよ。自分の子供だと思えばいいじゃないか。将来、面倒を見てくれる人がいた方が安心だろう?」私は朔也を見つめ、ただただ胸が張り裂けそうだった。「子供は私が育ててもいいわ。でも、舞花とは一切の縁を切ってちょうだい!これが私の譲れない一線よ!」しかし、朔也は離婚協議書を突きつけて私を脅してきた。「俺と舞花はこの子の実の親だ。血のつながりを絶つなんて、俺にはできない」「分かったわ、それなら離婚しましょう!」私の言葉が終わるや否や、室内は水を打ったように静まり返った。朔也はその場に立ち尽くし、信じられないといった顔で私を見た。彼の目に一瞬の焦りがよぎり、離婚協議書に伸ばした私の手をガシッと押さえつけた。「紗雪、いい加減にしろ。いつまで子供じみた真似をしてるんだ」私は自分の手を引き抜き、ハンカチで指先を丁寧に拭った。「子供じみた真似?私が冗談を言っているように見えるのかしら?朔也、自分のことを何様だと思っているの?自分が悪いのに逆ギレするなんて、そんな理屈が通るわけないでしょ!」朔也の顔色はひどく険しかった。彼は私をじっと睨みつけた。「紗雪、俺たちは結婚して十七年になる。お前はずっと俺を気遣ってくれていたのに、どうして今回ばかりはそんなにムキになるんだ?舞花の夫は不妊症で、彼女自身の体調も体外受精にはもう耐えられないんだ。彼女はただ、子供が欲しかっただけなんだよ。あんなにプライドが高くて負けず嫌いな彼女が、あの時は土下座して死ぬ気で懇願してきたんだ。俺が彼女を見殺しにできるわけないだろう?俺はただ、彼女に子を授けることでかつての恩義を返しただけだ。俺と彼女の間には、とっくに男女の情なんてない。お前を裏切ってなんかいない!」ここまで聞いて、私
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