結婚式の誓いの言葉の最中、瀬谷蓮(せや れん)の会社に所属する駆け出しのインフルエンサーから、泣きじゃくる電話がかかってきた。「社長、うちの扇風機壊れちゃって、回るだけで風が来ないんですぅ。直しに来てくれませんか?」電話を切るなり、ためらうことなく外へ駆け出そうとする蓮を、私は呼び止めた。「今日、このドアから一歩でも外に出たら、私たち完全に終わりだからね!」彼は怒ったように振り返った。「莉愛は一回の配信で二千万円以上の投げ銭を稼ぐんだぞ。この盛大な結婚式だって、彼女が稼いだ金でやってるんだ。普段から彼女を毛嫌いしてるのは百歩譲って、会社の金の生る木を潰す気か?」しかし、結城莉愛(ゆうき りあ)が私たちの結婚式を台無しにしたのは、これが初めてではない。一度目は、結婚式の会場で倒れたふりをした。蓮は慌てふためいて彼女を病院へ運び、結婚式は中止になった。二度目は、結婚式へ向かう途中で交通事故に遭った。ただの擦り傷だったのに大げさにICUに入った。蓮は私を放り出してすぐに病院へ見舞いに行った。つい昨日、蓮は私に約束したばかりだった。今日は莉愛に仕事の配信を入れさせたから、私たちの結婚式には指一本触れさせない、と。それでも、彼は行ってしまった。……会場が騒然とする中、私、椎名結衣(しいな ゆい)はゆっくりとマイクを握った。「今日ご出席いただいた親族や友人の皆様にも証人になっていただきました。裏切ったのは瀬谷蓮であり、私ではありません。この瞬間から、私と彼との縁は完全に切れ、これをもって絶縁といたします!」世間体を気にする蓮の母親は、親戚の前で恥をかき、なおもとりなそうとした。「蓮も会社の全体を考えてのことなのよ。どうせ結婚式なんて外向けの儀式なんだから、あの子が戻ってきたらまたやり直せばいいじゃない」そう言いながら、彼女はスマートフォンを取り出して電話をかけた。しかし、十数回かけても誰も電話に出ない。彼女の顔色も次第に険しくなっていった。私はもう待たずに、控室に戻ってウェディングドレスを脱いだ。家へ帰る途中、蓮からラインのメッセージが届いた。【先に帰っててくれ。こっちが終わったら、話したいことがある】結婚式で蓮がどうしても離れようとしたあの瞬間、私はもう十分に気持ちを伝えたつも
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