結婚式の一週間前、婚約者の朝倉渉(あさくら わたる)が突然、私・白川凛(しらかわ りん)が二年かけて準備した世界旅行の結婚式をキャンセルした。誤操作かと思い、タブレットでウェディングプランナーに確認しようとした。LINEが彼と同じアカウントでログインされていて、渉の友人からのメッセージが次々と画面に流れてきた。【桜井綿(さくらい わた)がたった一言言っただけで、本当に白川さんの旅行テーマの結婚式をキャンセルしたの?しかも式の手配を全部桜井に丸投げしたって?】【世界旅行の結婚式は白川さんの夢だったよな!白川さんが心不全が再発しそうでも旅行の計画を立て続けてたって皆知ってる、白川さんがこんなこと知ったら、本当に婚約破棄するんじゃないか?】震える手でメッセージを開き、画面をスクロールした。渉はまるで気にした様子もなかった。【俺に命をくれた人間が、式の形式なんて気にするか?綿はただ結婚式のプランニングを一回試してみたいって、それがあいつの夢なんだ。心配するな、凛は誰より今度の結婚式を大事にしてる。俺のために半分の腎臓まで切り出したくらい愛してるんだから、知っても絶対離れない。せいぜい二日騒ぐくらいで、俺がなだめればそれで終わりだ】私は深呼吸をして、胸の動悸を抑えた。そして振り返って、後ろに立った男に言った。「私と結婚しない?私の結婚式、あと新郎だけ足りないの」……世界を旅しながら挙げる結婚式を、私は二年かけて準備してきた。北欧のオーロラグラスハウスから、モルディブのバイオルミネッセンスの浜辺まで。細部のひとつひとつを、何度も何度も磨き直した。それは単純な結婚式の形式の一つじゃなかった。半分の命と引き換えに手に入れた、残りの人生への誓いだった。なのにその誓いが全て、なだめれば終わると言われ、崩されてしまった。書斎の外で、私は全身を震わせていた。中から渉の姉・朝倉澪(あさくら みお)の声がした。「渉、あなた正気なの?旅行テーマの結婚式は凛が命がけで準備したものよ?キャンセルするって一言で片づけるつもり?」渉は苛立った声で言った。「世界旅行なんてどれだけ体に負担がかかると思ってる、凛には絶対無理だ。ホテルで式を挙げる方がどれだけ楽か分かるか、綿だって好意でやってくれてるんだ」「好意?私には下心にし
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