夫のズボンを洗濯しようとした時、ポケットからマンションの管理費等の滞納督促状が出てきた。記載されていた住所は、我が家の真上の部屋だった。ただし、所有者名義には、はっきりと夫の名前が書かれていた。その紙を握りしめる指先が、一瞬で凍り付く。ふと思い返せば、ここ半年、彼は「残業だ」と言って深夜帰宅が増えていた。何度もあった。彼が仕事に出かけたはずなのに、車がマンションの駐車場に停まったままだったことが。問い詰めると、彼は決まってこう言った。「最近はガソリン代もバカにならないしな。電車の方が楽だし、節約だよ。将来のためだろ?」家庭を思う彼の言葉に、私は密かに感心さえしていたのだ。だが、今ならわかる。彼の言う「残業」の行き先は、真上の部屋だったのだ。その時、玄関の鍵が回る音がした。夫が帰ってきた。私の手にある督促状を見るなり、彼は無造作にそれを奪い取った。「ああ、管理会社の誤配だろう。たまにあるんだよ」私は頷き、無理に笑って見せた。「そうね、気にしないで。……ちょっと、ゴミ出しに行ってくるわ」部屋を出た私は、そのまま上の階へと向かった。扉を叩くと、目の前に現れた女のお腹は大きく膨らんでいた。見たところ、もう臨月だろう。その膨らんだお腹を見た瞬間、私の体は硬直した。かつて彼は私に言った。「仕事が軌道に乗るまでは、子供は数年待とう」と。子供が欲しくなかったわけじゃない。私との子供が、欲しくなかっただけなのか?「はい、どなたですか?」顔を覗かせたのは、ゆったりとした綿のマタニティドレスを着て、髪を無造作にまとめた女だった。私を見ると、少し不思議そうな表情を浮かべる。「こんにちは。下の階の者です」私は声を震わせないよう必死に抑え、無理やり親しみのある笑顔さえ浮かべた。「お忙しいところすみません。うちの猫がすごくおてんばで……さっき目を離した隙に、ベランダの手すりを伝って上に行っちゃったみたいなんです。少し中を探させてもらえませんか?」これは拙い言い訳だった。うちには猫なんていない。けれど、彼女は疑わなかった。妊娠中特有のおおらかさのせいかもしれない。「あら、ご近所さんですね!どうぞ、中へ。猫ちゃんってすばしっこいから、迷子になったら大変ですわ」「ありがとうござい
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