卒業旅行の夜、クラス委員長の高橋健(たかはし たけし)がくじ引きで部屋割りを決めようと提案した。「誰と相部屋になるかは運命次第だぞ!男女関係なく、同じ番号を引いたやつ同士でペアな。ドキドキして最高じゃん!」大学の四年間、そのうちの三年を私は瀬崎涼真(せざき りょうま)と付き合ってきた。そのことを、周りの誰も知らない。私は段ボール箱に手を突っ込み、ボールをひとつ掴み取ってペアの発表を待った。涼真の番が来て、彼が引いたのは「7番」だった。健が、ひときわ大きな声を上げた。「7号室のもうひとりは――白石莉桜(しらいしりお)!」涼真がかつて猛アタックしていた女の子が、みるみるうちに頬を赤く染めた。その場が一斉に沸き立った。運命の赤い糸だと、みんなが口々にはやし立てる。声を上げなかったのは、私だけだった。ゲームが始まる前、健が涼真にこっそり耳打ちしていたのを聞いていたのも、私だけだ。「目印のついてるボールを探せ。お前と莉桜用に、わざと仕込んでおいたからな」涼真は柔らかく笑い、莉桜のそばへ歩み寄って彼女のスーツケースを持ち上げた。それを見て、私もふっと笑った。三年付き合ってきても、彼の口から「俺たち付き合ってる」というひと言すら出てこなかった。だから今度は、私のほうから身を引くことにした。……部屋番号の発表はまだ途中なのに、その場の熱気はもう最高潮に達している。健はふたりに赤いリストバンドを配りながら、声を張った。「もう一回ルール言っとくぞ!同じ番号同士がペア、この二泊三日は完全ペア制だ。リストバンドの色が目印、単独行動は禁止!」あちこちから口笛が飛び、わざわざ涼真の肩を叩きにいく男子もいる。莉桜は耳まで真っ赤にしながらリストバンドをつけ、涼真の背中に隠れるように身を寄せた。涼真は口元をゆるめ、片腕で彼女を庇うように前に出た。「やめろって。照れてんだから」「おいおい、もう庇ってんのかよ。おまえら気をつけろよ、莉桜の機嫌損ねたら後で涼真に恨まれるぞ!」はやし立てる声が、一気に大きな渦になった。私は輪の外に立っていた。左手にボール、右手に重いスーツケースの取っ手を握ったまま。出発前、涼真は自分の荷物を私のスーツケースに詰め込んできた。「向こうに着いたら俺が荷物持つから。スー
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