All Chapters of 愛の終わりは空虚だった: Chapter 11 - Chapter 20

26 Chapters

第11話

静野が去ってからの3日間、翔悟はそのすべての時間を和歌奈と共に過ごしていた。この3日間、彼はほとんど静野のことを頭の片隅に追いやっていた。和歌奈を連れて旅行に出かけ、まるで付き合いたての恋人同士のようにべったりと過ごす。一緒に食事をし、一緒に買い物をし、一緒に遊園地へ行く。人混みの中で手を繋ぎ、人のいない場所では抱き合い、キスを交わした。そして3日目――ついに二人は抑えきれなくなった。ネオンがホテルの大きな窓に揺らめき、どこか妖しい雰囲気を漂わせている。シャワーを終えた和歌奈は、黒いレースのセクシーなネグリジェをまとい、ゆっくりと翔悟のもとへ歩み寄った。「翔悟」指先で彼のネクタイを引き寄せ、その声は甘く、溶けるようだった。「今夜、私を全部あげてもいい?もう立派な男になったって言ってたでしょ。どれくらい成長したのか、見てみたいの」彼女の甘い香りに包まれ、翔悟の理性が吹き飛ばされた。確かに、この日をずっと待っていた。成人してからは、彼はずっと彼女を手に入れたいと願っていた。そして今、その願いが叶おうとしている。喉が上下に動き、抑え込んでいた欲望が一気に溢れ出した。ためらいもなく、彼は彼女の腰を引き寄せ、そのまま唇を重ねる。和歌奈も熱を帯びた様子で彼のシャツのボタンに手をかけ、興奮気味に囁いた。「翔悟......優しくしてね」ボタンが外れたその瞬間――翔悟の脳裏に、静野の姿がよぎった。彼女はいつも優しく彼のボタンを外し、その手を取って、自分の服をゆっくり脱いでいった。「......私、痛いのが怖いから」その声が頭の中に響き、翔悟の動きはぴたりと止まった。まるで冷水を浴びせられたように、一気に正気へと引き戻される。「......ごめん」彼は和歌奈を押しのけ、窓辺へと歩き、慌てた様子でポケットから煙草を取り出して火をつけた。拒まれたことに、和歌奈の目は驚きで見開かれる。「翔悟......どうしたの?」「いや......なんでもないんだ」声はかすれていた。「ただ、急に静野のことを思い出して......」「こんな時に、他の女のことを考えたの?」和歌奈の声には不満が滲む。自分はすでにすべてを差し出す覚悟をしていたのに、彼は突然それを止めたのだ。
Read more

第12話

「翔悟、私のこと、もう好きじゃないの?私のほうが年上だから、来ちゃいけなかったって思ってる?それとも、スタイルが静野さんほど良くないから、嫌になったの?」彼女が泣き出すと、翔悟は動揺した。彼が幼い頃から一番見たくなかったのは――和歌奈の涙だった。3年前、和歌奈が海外へ行く前日。洋子は彼女を呼びつけ、容赦なく叱りつけた。恥知らずだと罵り、友人の息子を誘惑したのだと責め立て、ここから出て行け、翔悟から離れろと言い放った。あの日、あんなにも悲しげに泣く彼女を見て、翔悟は心の奥で誓った。もう二度と、彼女を泣かせないと。――それなのに、今日また泣かせてしまった。「違う、和歌奈、俺はそういう意味じゃない。ただ......まだ頭が追いついてないだけで......」「バカね。私たちはもう入籍してるのよ。私は翔悟の妻なんだから、こういうことをするのは当たり前でしょ。ほら、今日は本当の意味で『男』にしてあげる」そう言って、和歌奈は彼をベッドへと引き戻した。......その夜、翔悟はもう彼女を拒まなかった。翌朝早く、彼は待ちきれないようにベッドから起き上がる。今日は静野との結婚式の日。遅れるわけにはいかない。手際よく起き上がる彼を見て、和歌奈は少し拗ねたように言った。「今日、他の女との結婚式でしょ?私、寂しいのに......構ってくれないの?」翔悟は振り返り、どこか投げやりに言う。「どうしてほしい?」「今日の嫌な気分を忘れたいの。買い物に行きたいな。それでね、『旦那様』のお金を使いたいの」「ああ、それは当然」彼はポケットからカードを取り出し、彼女に差し出した。「ここに1億入ってる。欲しいものを全部買えばいい」女はベッドから飛び起き、そのまま彼に飛びつく。「今の翔悟、なんだかすごくかっこよく見える!」顔を近づけ、さらにキスをしようとする。「もう行く。遅れたら静野が心配する」「......分かった。いい子にするから」和歌奈は眉を上げ、しぶしぶ彼から離れた。――たかが結婚式。どうせ、本当の妻は自分なのだから。翔悟が静野と結婚したあと、彼女は洋子の前で騒ぎ立てるつもりだった。最終的に自分が孫と結婚したと知ったとき、どんな反応をするのか――見てみたい。3年前に受け
Read more

第13話

彼は近くにいた一人をつかまえて尋ねたが、その人は首を振った。「ないですね。数日後ならありますけど......「そういえば今日、結婚式があったみたいなんですけど、数日前にキャンセルされたらしいですよ。ほら、あそこの飾り付けも、ここ二日ずっと撤去してましたし」「は......?キャンセル?」翔悟は呆然とし、よろめいて数歩後ずさった。――キャンセル?誰が?自分と静野の結婚式が、どうしてキャンセルされるはずがある?「そうですよ。海城でも有名な結城家の結婚式だって聞きましたけどね」その人は彼を見ながら続けた。「参列者の方ですか?だったらもう帰ったほうがいいですよ。3日前、大勢の人が来てから延期って言われて......挙句の果てに延期ところかキャンセルされたんですよ。お金持ちってほんと、やることが違いますよ」それ以上、何を言われたのかは耳に入らなかった。翔悟は顔を上げ、目の前の荘厳な教会を見つめると、再びスマホを取り出し、静野に電話をかける。だが、相変わらず繋がらない。メッセージも、既読すらつかないままだった。これ以上考える余裕もなく、彼はすぐに車へと戻り、本家へ向かった。もし結婚式がキャンセルされたのなら、祖母が知らないはずがない。――なぜ自分に何も言わなかったのか。......結城家の本家。翔悟が家に入ると、何人もの使用人が荷物の整理をしていた。プレゼントや寝具など、目に入るものはすべて新品だった。「若様、お帰りなさいませ」彼に気づいた一人が声をかける。「洋子様ならリビングにいらっしゃいます」「君たちは何をしているんだ?」「片付けです。これらは砂川様とのご結婚のために用意されたものです。洋子様がたくさんご用意されたので......」その言葉を聞き、翔悟の胸に一瞬希望が灯る。――結婚式は、まだ中止になっていないのかもしれない。「ばあさん!」彼は足早にリビングへ向かい、ソファでテレビを見ている洋子の隣に腰を下ろした。「こんな大事な日なのに、なんでのんびり座ってるんだよ」「大事な日って?」洋子は彼を一瞥することもなく、淡々と答えた。「俺と静野の結婚式の日だよ!今日、教会に行ったのに、誰もいなかったんだよ。静野は?上にいるのか?」翔悟は一方的に
Read more

第14話

「この馬鹿者!何度言えば分かるの、あの豊島和歌奈という女はろくでもない女だって!あの子があなたのそばにいるのは、最初から下心があるからよ!静野はいい子なのに、あんなにあなたに尽くしてくれたのに......あなたはあの子のお腹の子まで奪った!あなたにガッカリよ、翔悟!」あまりの怒りに、洋子は息を荒くする。執事がすぐに茶を差し出した。「洋子様、落ち着いてください。お体に障ります」「落ち着いていられるものですか!」洋子は茶碗をテーブルに叩きつけるように置き、茶が机に飛び散った。「どうして結城家に、こんなにも薄情な子が生まれたのよ!静野はあれほど心を尽くしてくれたのに、あなたは何度も何度も、あの女のために傷つけて......!」祖母の言葉は、重い鉄槌のように彼の胸に叩きつけられた。彼はその場に立ち尽くし、顔色は一瞬で蒼白になる。しばらくして、ようやく取り乱した声で言った。「ばあさん......子どもの件は事故だったんだ。ちゃんと償うから......だから今、彼女がどこにいるのか教えてくれ。俺が迎えに行くから!」「知らない。自分で探しなさい」洋子は深くため息をついた。「まったく自業自得ね......」祖母が場所を教えない以上、自分で探すしかない。彼女はあのとき、病院にいた。医者も3日間の入院が必要だと言っていた。今日はちょうど退院の日。まだ時間は早い。もしかすると、まだ病院にいるかもしれない。翔悟はすぐに車を走らせ、病院へ向かった。だが到着してみると、静野がいたはずの病室には、すでに別の患者が入っていた。その瞬間、翔悟は崩れ落ちそうになる。彼は通りかかった看護師の腕を掴み、問い詰めた。「ここに入院していた女性はどこへ?」「......あ、結城様?砂川様のことですか?3日前にもう退院されましたよ。ご存じなかったんですか?」その言葉に、彼の手はさらに強く看護師の手首を握り締める。彼は顔を上げ、震える声で問い返した。「何だって?3日前に退院した?一体どこへ?!」「さあ......車に乗って、そのまま振り返りもせずに行かれましたけど......」――その瞬間、ようやく理解した。静野は、本当にいなくなったのだと。......あの日から、翔悟は狂ったよう
Read more

第15話

二人は話しながら、足早にその場を離れていった。「静野を探してる?でも3日前に翔悟と結婚したんじゃなかったっけ?何かあったのかしら?」和歌奈は社長室のドアを押し開ける。中はひどく散らかっていた。書類は床に散乱し、いつも使っているカップでさえ床に叩きつけられ、粉々に割れている。翔悟は窓際に立ち、スマホを強く握りしめていた。何度も何度も静野に電話をかける。だが、彼女は出ない。電源すら切っていないのに。どうしてなのか、彼には理解できなかった。彼女は一体、何を考えているのか。和歌奈は彼の苛立った様子を見ながら、ゆっくりと歩み寄った。「翔悟、ここ数日ずっと探してたのよ?どうして電話に出てくれないの?」彼女を見ると、翔悟の声はわずかに落ち着いた。「静野がいなくなった」「そう?」和歌奈は眉を上げ、表面上は驚いたふりをしながらも、内心ではほくそ笑む。「いなくなったなら、それでいいじゃない。どうせ本気で結婚するつもりなんてなかったんでしょ?もともとおばあさんを安心させるための口実だっただけだし。私たちはもう入籍してるんだから、いっそ正直に話してしまえばいいんじゃない?」彼女は近づき、彼の引き締まった腰に腕を回した。「翔悟、分かってるでしょ。私はね、翔悟の影に隠れるよりも、堂々と隣に立ちたいの」その言葉を聞いた瞬間、翔悟の眉が深く寄る。彼は彼女の手首を掴み、問い詰めた。「あんたはずっと、関係を公にしたくないって言ってたはずだろ。どうして急に考えを変えた」「もう入籍したんだし。これ以上、おばあさんに隠す必要なんてないって思っただけよ」強く掴まれた手首が痛み、和歌奈は思わず顔を歪める。「どうして?私をおばあさんに紹介したくないの?まさか、本当にあの子に惹かれたの?」その問いに、翔悟の心が大きく揺れた。――そんなこと、考えたこともなかった。自分は本当に、静野を愛しているのか?あり得ない。愛しているのは、ずっと和歌奈のはずだ。静野はいい女だ。だから好きだった。だが、心の中で一番大切な存在は、ずっと和歌奈だったはず――それなのに、どうして彼女がいなくなった途端、こんなにも会いたくなるのか。あの笑顔が恋しい。彼女が手料理を作ってくれた日々が恋しい。あの淡く優
Read more

第16話

翔悟はこれ以上言い争う気にもならず、もう一枚、2億の小切手を取り出して彼女に放り投げた。「ほら。好きなだけ買え。この数日は俺の前に現れるな」「わかったわ」和歌奈は目元の涙を拭い、小切手を受け取ると、ハイヒールを鳴らしながら振り返ることもなく立ち去った。――男なんて、欲しければいくらでも手に入る。翔悟が自分を満たせないのなら、別の男を探せばいい。もともと彼女はずっとそうしてきた。ただ翔悟だけが、彼女を清らかで無垢な存在だと思い込んでいただけだ。和歌奈が去った直後、秘書がスマホを手に駆け込んできた。「社長!砂川さんのスマホが見つかりました。病院の入口のゴミ箱から、清掃員が拾ったそうです」「ゴミ箱から......?」翔悟は勢いよく椅子を蹴飛ばし、駆け寄った。「本人は!?彼女の行方は分かったのか!?」「申し訳ありません、まだ手がかりは......」秘書はスマホを差し出す。「ここ数日連絡がつかなかった理由がきっとこれです。彼女はとっくにスマホを捨てていたんです。誰とも連絡を取りたくなかったのかもしれません」「どうしてだ......」翔悟は首を振り、声を震わせる。「どうしてこんなことを......そんなに、俺に会いたくないのか......?」秘書が控えめに言った。「一度、中身をご確認になってみては?」スマホを受け取ると、彼は慣れた手つきでパスコードを入力した。画面には、無数の不在着信と未読メッセージ。すべて、自分が彼女に送ったものだった。チャットアプリにも大量のメッセージが並んでいる。何十通と送り続けているのに、彼女からの返信は一つもない。そして、スクロールしていくうちに、彼の指が止まった。そこには、数枚の写真とメッセージが残されていた。写真には、この数日間、和歌奈と旅行していた自分の姿。手を繋ぎ、抱き合い、キスをし、ホテルへ入る――どの写真でも、和歌奈は親しげに彼の腕に絡みつき、カメラに向かって挑発的に微笑んでいた。その下に続くのは、長い文章。【見た?あなたが子供を失ってるこの数日間、翔悟は結局、私を選んだのよ】【今私たち、旅行中なの。翔悟はすごく優しくて、ハイヒールで歩くのが大変だからって、背中に負ぶってくれたの。あなたの今の姿と比べてみたら?
Read more

第17話

彼は突然口を開いた。声はかすかに震えている。秘書はすぐに答えた。「バーに行ったようですが......」「車を用意しろ。今すぐ向かう」「かしこまりました」――バー。和歌奈はウエストが露出したキャミソールドレスを身にまとい、スカートのスリットは太ももの付け根まで深く入っている。その曲線美をあらわにしながら、彼女はカウンターにもたれ、指先でグラスを軽く揺らした。赤い唇をわずかに上げ、気だるげに言う。「ここで一番イケてる男の子、全員呼んでちょうだい」彼女が口を開くや否や、マネージャーがすぐにやってきた。「豊島様、当店の者はお安くはありませんが......」「ふふ」女は気にも留めず笑った。「どれくらい高いの?私、お金なさそうに見える?」そう言うと、札束を無造作にカウンターへ放り投げる。その様子を見た周囲はざわついた。「誰あの女?すごい美人で金持ちじゃん」「どこかで見たことある......あ、そうだ。こないだ結城グループの御曹司と一緒にいた女だよ」「マジで?でもあの人、三十代だろ?翔悟ってまだ若いのに......」耳に入る噂話など気にもせず、和歌奈は無関心なままだった。やがてマネージャーは彼女をボックス席へ案内し、端正な顔立ちの男を十人呼び寄せる。「悪くないわね、みんなイケメンじゃん」男たちを見渡し、彼女は大いに満たされた。彼らにマッサージをさせ、酒を飲ませようとしたその時――遠くからざわめきが起こる。「噂をすれば影だな、結城が来たぞ!」「何しに来たんだ?」「決まってるだろ、あの女を探しにだよ!」その名を聞き、和歌奈はわずかに眉をひそめた。――どうしてこの時間に?静野を探してるんじゃなかったの?もしここで、自分が彼の金で男を十人も呼んでいるのを見られたら......だが彼女は気にしなかった。どうせ静野のせいで自分を放置したのだ。少しくらい焦らせてやればいい。翔悟が店に入ると、すぐに目に入ったのは――十人の男に囲まれ、くつろいでいる和歌奈の姿だった。その光景を見た瞬間、彼の周囲の空気が一気に冷え込む。彼は大股で歩み寄り、和歌奈の手からグラスを奪い取った。「和歌奈、あんた、何をしているんだ」「何って?」彼女はゆっくり
Read more

第18話

「嫉妬してる暇なんてない。ついて来い!」「だから嫌だって言ってるでしょ!」二人がこれほど激しく言い争うのは、これが初めてだった。周囲にはすでに人だかりができている。それでも和歌奈が頑として動かないのを見て、翔悟は冷たくうなずいた。「いいだろう。来ないなら、ここで決着をつける」そう言って、彼は静野のスマホを取り出し、あのメッセージと写真を表示させると、そのまま和歌奈の目の前に突きつけた。「説明しろ。どうして俺のアカウントを使って、静野にこんなメッセージを送った?どうして俺たちが入籍したことまで知らせた!」その一言に、和歌奈だけでなく、その場にいた全員が凍りついた。「嘘だろ......あの二人、入籍してたのか?」「だからか、この前結城家が結婚式をやるって言ってたのに、急に中止になったのは!」「まさか本当にこの女と結婚してたなんて......前から噂はあったけどな......結城のばあさんがよく認めたな」ざわめきが広がる中、和歌奈の顔は一気に青ざめた。先ほどまでの余裕は消え失せ、彼女は息を整え、柔らかい声で言った。「違うの、これは......」翔悟の声は冷え切っている。「なぜあんな写真を静野に送った?なぜ俺たちの結婚をわざわざ知らせた?言ったはずだ、絶対に知らせるなって。それなのに自分から挑発した。和歌奈......今まで気づかなかったが、お前もああいう陰険な女と何も変わらないんだな」「私は......」その目に宿る殺気を見て、和歌奈はついに動揺した。唇を強く噛み、言い訳を探すが、言葉が出てこない。沈黙する彼女を見て、翔悟は手を伸ばし、その顎を強引に掴んで顔を上げさせた。「ってことは、静野が結婚式を取り消して姿を消したのは......全部お前のせいだな」あまりの力に和歌奈は顔をしかめ、彼の手を振りほどこうとするが、びくともしない。――もう隠せない。そう悟った彼女は、開き直るように言い放った。「ええ、そうよ。全部わざと送ったの。だから何?」彼女は睨み返す。「あなた、私のことが好きなんでしょ?好きなら私と結婚して、堂々とすればいいじゃない!自分の胸に手を当てて考えてみなさいよ。あの女と結婚しようとしたのは、私たちの関係を隠すため?それとも......もうとっくに彼女のこ
Read more

第19話

「そうだ!俺はとっくに静野を愛していた!俺がバカだったんだ、お前に対してまだ昔みたいな感情が残ってると勘違いしてた......だから、もう終わりにしよう、和歌奈。離婚だ」「離婚?まだ結婚して一週間しか経ってないのに......?」和歌奈はほとんど崩れ落ちるように取り乱した。ついに焦りが表に出る。彼女は地面から這い上がり、翔悟にしがみついた。「ごめんなさい、翔悟......私が悪かったの。もう二度と彼女に手を出さないから。今回戻ってきたのは、あなたと一生一緒にいたかったからなの。お願い、捨てないで......!」激しく泣き続け、化粧はすでに崩れきっている。先ほどまでの妖艶で華やかな姿とは、まるで別人だった。「もう一度言う。俺たちは離婚だ」翔悟は冷たい顔で彼女を振りほどき、そのまま背を向けて歩き出す。「すぐに離婚届を用意させる。さっさとサインしろ」......バーを出ると、すぐに秘書が駆け寄ってきた。「社長、新しい情報が入りました。あの日、砂川さんが病院を出たあと、乗ったの結城洋子様の車だったようです」「ばあさんの?」「はい。洋子様は警戒して、名義のない車を使っていました。そのまま車は空港へ向かったようです。おそらく、砂川さんの失踪には洋子様が関わっています」「すぐに本家へ向かえ」翔悟の目が鋭く沈み、そのまま車を走らせた。屋敷に着くと、洋子は庭で執事と将棋を指していた。彼が来ても、視線すら向けない。「私に何か用?」「ばあさん......静野を連れて行ったのは、ばあさんなのか?」洋子は手を止めることなく、一瞬だけ彼を見やる。「どうして?」その反応で、翔悟は確信した。――静野は、祖母に連れ出されたのだ。「ばあさん、お願いします。静野がどこにいるのか教えてください!」一歩踏み出し、その声には抑えきれない焦りが滲んでいた。「知る必要があるのかしら?翔悟、あの豊島と結婚したんでしょう?だったら、わざわざ静野を探す必要なんてないじゃない。どうせ好きでもないんだから」「全部、知ってたのか......?」翔悟は眉をひそめた。まさか、すでに全て知られているとは思っていなかった。後悔はしている。だが、どうすればいいのか分からない。「ふん。私に分からないとで
Read more

第20話

「誰だい、こんなに騒がしいのは?」洋子は眉をひそめた。せっかくの上機嫌も、どうやら台無しになりそうだった。「豊島和歌奈さんです。どうしても中に入ってお会いしたいと......」「そう......入れなさい」洋子は翔悟をちらりと見やり、ため息まじりに首を振った。「いい歳をして、こんな厄介ごとばかり持ち込んで......まだ祖母である私に後始末をさせるつもりかい」「......ばあさん」翔悟はうつむいたまま、何も言えなかった。今回のことは、すべて自分の責任だ。最初から和歌奈がこういう人間だと分かっていれば、関わることなどなかった。今となっては、静野がどれほど大切な存在だったかを思い知らされる。自分は、それを大事にできなかっただけだ。「おばあさま、どうか私の話を聞いてください!」和歌奈は部屋に入るなり、いきなり洋子の前に跪いた。「あらあら、何をしているの。立ちなさい」「私と翔悟は、もう婚姻届を出しています。おばあさまが以前、私のことをお嫌いだったのは分かっています。でも今は......法律上、私は翔悟の妻であり、結城家の嫁なんです!」口調こそ柔らかく、取り繕うような響きだったが、その目の奥にある得意げな光は、洋子の目をごまかせなかった。「そうかい?でも豊島さん、もう忘れたのかしら。私はこの一生で、あなたを認めることはないって言ったはずよ」和歌奈は眉を上げた。「もちろん、ちゃんと覚えています。でもおばあさま、今は状況が違います。婚姻届が提出された以上――」「豊島さん、その婚姻届、本当に提出されたと思っているのかい?」――ヨーロッパの北西部。ここはまるでいつも同じ天気のようだった。小雨が降り続き、空気には重たい湿気がまとわりついている。この地に来て5日目、静野はようやく大学の入学手続きをすべて終えた。彼女はもともとジュエリーデザインの才能に恵まれており、提出した作品も教授から高く評価された。「とてもいい出来です。ここでさらに学べば、きっともっと良い作品が生まれるでしょう」「ありがとうございます」その言葉を受け、静野は初めて「認められた」という実感を得た。ここ数日、彼女はとても穏やかに過ごしていた。洋子がすべてを整えてくれており、住まいに至るまで何一つ
Read more
PREV
123
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status