All Chapters of トップシークレット☆後日談 東京~神戸 新婚ラプソディ: Chapter 11 - Chapter 20

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神戸の初夜 PAGE1

 ――新大阪駅で山陽新幹線に乗り換えて一駅、わたしと貢は神戸市の高台に位置するJR新神戸駅に到着した。 時刻は夕方六時半過ぎ。夏至も近いので、この時間でもまだ日が高く、辺りは明るい。  わたしは改札を出ると、スーツケースを彼に任せて再び川元さんの番号をコールした。 「――もしもし、川元さん。たった今、新神戸駅に着きました」 『そうですか。お疲れさまでした。では、これからお迎えに上がります。あと十分ほどでそちらに着くかと』 「分かりました。お待ちしてます」  神戸支社は三宮の市街地にあり、そこから車でそれくらいかかるということだろう。 それなら、わたしたちの方が三宮まで下りていった方が早いのかもしれないけれど、彼の立場ではあくまでわたしたち夫婦はゲストで彼がホスト役。わざわざ出向いてもらうのは申し訳ないということなのかしら。 「――川元さん、これからこっちに向かうって。あと十分くらいで着くらしいよ」 「そうですか。……で、どうやって時間潰します?」 「十分くらいなら、その辺ブラブラしてたらあっという間に過ぎちゃうんじゃない? お店もたくさんあるみたいだし。それか、先にホテルにチェックインしちゃうか、かな。その方が楽だろうし」 「そうですね」  というわけで、わたしたちは川元さんが迎えに来る前に、予約してあった駅前のホテルにチェックインしてしまうことにした。  手続きを済ませ、先に荷物をスイートルームに運んでおいてもらうと、駅前に戻った頃にはすでに川元さんがタクシーで迎えに来てくれていた。タクシーにはそのままわたしたちも乗せるようで、ドライバーさんがドアを開けて待機してくれている。 「会長
last updateLast Updated : 2026-04-26
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神戸の初夜 PAGE2

「――では改めまして。絢乃会長、桐島さん。ご結婚おめでとうございます!」 「「ありがとうございます」」  三人はこの街での再会と、わたしたち夫婦の結婚を祝して炭酸入りミネラルウォーターの入ったグラスを合わせた。 「でも、お二人から結婚式の招待状を頂いた時はビックリしましたよ。昨年いらした時は、すでにお付き合いされていたということですか?」  喉を潤してから、川元さんがそう言った。 実は彼も言ったとおり、昨年夏に出張で神戸に来た時には、わたしたちはすでに恋人同士だったのだ。 「ええ。驚かせちゃってごめんなさい。わたしたちの関係は、婚約するまでは秘密にしようって決めてたもので」 「『仕事にプライベートを持ち込んだら、公私混同になって他の社員に示しがつかないから』って、絢乃さんが気にされてたんです。彼女、真面目な女性なんで……」  わたしに続けて、貢もそう言った。 今思えば、コソコソする必要なんてなかったのだ。わたしたちの関係は、世間的にも何ら問題がなかったのだから。 「――ところで川元さん。不躾で申し訳ないんですけど、貴方に一つ伺いたいことがあって。食べながら答えて下さって構わないんですけど」  運ばれてきたお料理に舌鼓を打ちながら、わたしは思いきって、去年の夏には訊けなかったことを川元さんに訊ねた。 そういえば、わたしは彼のプライベートなことは何も知らないのだ。 「何でしょうか?」 「川元さんって確か三十七歳ですよね? ご結婚は?」  本当に不躾な質問に、彼は目をみはった。気を悪くされたらどうしよう……と、わたしはちょ
last updateLast Updated : 2026-04-26
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神戸の初夜 PAGE4

「そういえば、川元さんはどうして神戸まで出てこられたんですか?」  彼の話からは、出身の島が大好きだという気持ちがダダ洩れだ。とても、島の暮らしがイヤで都会に出てきたとは思えないのだけれど……。 「それは、たまたま島の中に僕が進みたい学部の大学がなかったからです。進学を機に明石海峡を越えて、十八年神戸に住んでますが、今でも長期休暇の度に故郷には帰ってますよ。同じ兵庫県内ですし」 「そうなんですね……。わたしも彼も東京生まれ・東京育ちなんで、〝ふるさと〟っていえる場所がないんです。いいなぁ、ふるさとがある人って……」  生粋の都会っ子同士であるわたしたち夫婦。この旅行をキッカケに、淡路島が〝ふるさと〟と呼べる土地になったらいいなぁと思った。  お喋りに花を咲かせながら、美味しいデザートまで平らげてお腹いっぱいになったところで、わたしたち三人はお店を後にした。 「――川元さん、今日はお付き合い頂いてどうもありがとうございました。ここの支払いは、わたしに持たせて下さい」  わたしが愛用のピンク色の長財布からブラックカードを取り出すと、川元さんが遠慮がちに首を横に振られた。 「いえ、この店をお二人に紹介したのは僕ですから。僕が支払いますよ」  彼はやっぱり、自分がもてなす側なのだから、支払いも自分がすべきだと思っているらしい。 でも、仕事での接待ならともかく、これはわたしと貢だけのプライベートな旅行でのお食事。お誘いしたのもわたしなのだから、支払いもわたしがするのが筋だと思う。 「ううん、いいから! これは接待じゃないし、お誘いしたのもわたし。だから、ここの支払いもわたしが。お願いします、川元さん!」 
last updateLast Updated : 2026-04-27
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神戸の初夜 PAGE3

「……何だか、野暮なことを訊いてしまったみたいで。ゴメンなさい」 「いえ、大丈夫です。僕は気にしてませんから」  心なしか、食事中の雰囲気が気まずくなった気がする。もちろんわたしが原因だ。砂を噛むような気持ちでお肉を頂きながら、わたしは猛省していた。 「――ところで、お二人は神戸に二泊されるんでしたっけ」  川元さんが機転を利かせて話題を変えて下さったので、わたしは少しホッとした。 「ええ。明日は一日、神戸市内の観光スポットを回ってみようかと思って。本当は貴方に案内役をお願いするつもりだったんですけど、明日は平日だし、ムリでしょうね」 「……ですね。ああ、市内観光をされるんでしたら、シティループという周遊バスを利用されるといいですよ。一日乗車券というのを買っておけば、その日一日何度でも乗り放題になりますから。僕はご一緒できませんが、観光を楽しんでいってください」 「へえ……、そんな便利なのがあるんですか。ありがとうございます」  さすがは地元民。わたしたち東京の人間が知らなかった情報を、川元さんは親切に教えて下さった。 「明後日からは淡路島に泊まるんですよ。わたし、行ってみたい場所がたくさんあって」 「淡路島ですか。僕は淡路島の南あわじ市出身なんです。本当にいいところですよ。残念ながら、ご一緒できませんが……」 「ああ、そういえば去年そうおっしゃってましたよね」  その事実を始めて知った時、わたしも貢もビックリしたものだ。だって、川元さんがあまりにも都会的な人なんだもの! 「なんか意外でした。川元さ
last updateLast Updated : 2026-04-27
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神戸の初夜 PAGE5

「いえいえ。ちゃんと髪を乾かしてから出てこられたんですね。じゃ、僕も入ってきますね」「うん、行ってらっしゃい。じゃあ……、貴方の髪はわたしが乾かしてあげるね」「……えっ!?」「だって、いつもやってもらってばっかりじゃ悪いもの。わたしだって、貴方に何かしてあげたいんだよ。せっかく二人きりなんだし、いい機会なんだから思い切って甘えちゃいなさいって」 こういう言い方、なんか最近母に似てきたかな。そういえば母も、父が元気だった頃にはよくこうして父をやり込めていたっけ。「…………。まぁ……、そこまでおっしゃるなら……ハイ」 どうやら彼を困らせてしまったみたい。何だか申し訳なくなって、彼がバスルームへ入ってしまうと、わたしはそちらに向かって小さく「ゴメンね」と謝った。 バスルームから水音が聞こえてくると、わたしは座り込んでいたベッドの上からストンと下りて夜景を臨む窓際へ歩み寄った。 ソファーに置いてあったバッグからスマホを取り出し、眼下に広がる神戸の夜景をカメラのレンズに収めていく。ステキな結婚式の写真を送ってくれた里歩や唯ちゃん、そしてお義兄さまに送ってあげようと思ったのだ。 撮影に夢中になっている間に、貢もお風呂から上がってきた。 彼はもうすっかり見慣れたグレーのスウェットに白いTシャツ姿で、バスタオルで髪を拭きながら、窓の外にスマホを向けているわたしに問いかけてきた。「絢乃さん、お待たせしました。……あれ、何を撮ってたんですか?」「ああ、ゴメン! 上がってたのね。――撮ってたのは神戸の夜景だよ。すごくキレイだから、写メ撮って里歩とかお義兄さまに送ってあげようと思って」  いつもはあまり色気を感じない(……って言ったら彼が気にするから言わないけれど。貢ゴメン!)彼だけれど、湯上りというのは普段の五割増しで男女問わず魅力的に見えるらしい。そのせいなのか、わたしはいつもドキドキしてしまう。「ほら、みんなわたしたちの結婚式の写真、スマホに送ってくれたでしょ? だからそのお礼に、と思って」「なるほど、それはいい考えですね。でも、兄貴には僕から送っとくんで、絢乃さんからは送らなくてもいいですよ」「なになに? お義兄さまに嫉妬してるの?」 彼のその口ぶりが何だかおかしくて、わたしがからかうと「そんなんじゃないですよ」と彼は真っ赤な顔で口を尖らせた。
last updateLast Updated : 2026-04-28
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神戸の初夜 PAGE6

「あぁ……ん、……は……ぁっ、もう……ぁあ……っ」 彼の手によってもたらされる快感に、わたしの意識がだんだん遠のいていく。 そして彼の顔が秘部へと近づいていき、吐息が当たるだけでもう、わたしは絶頂を迎えつつあった。そこで彼の舌先が、蜜に濡れた雌芯の先を捉え――。「もう……イく……っ! …………あぁぁー…………っ!」 わたしの目の前が白くスパークした。ドクドクと鼓動が早くなる中、最奥部だけは彼自身を求めてうねっている。「貢……、そろそろ……お願い」「分かりました。じゃあ……挿れますね」 初めて避妊具なしで彼のそそり立ったソレがわたしの蜜壺に挿入され、彼はゆっくりと腰を動かし始めた。 彼との性行為はもう半年くらいあるけれど、こうして生身で交わり合うのは何だか新鮮だ。それもこれもわたしが高校も卒業し、二人が結婚したことで何の支障もなくなったからだと思う。「あ……っ、あぁ……っ。いいよ、貢……」「絢乃さん、痛くないですか? 苦しかったら言って下さいね」「うん、大丈夫……」 行為の最中でも、彼はいつもわたしに優しい言葉をかけてくれる。 彼が耳元で囁くので、彼の吐息が敏感な耳にかかり、わたしの快感をより強くする。彼にも同じくらい気持ちよくなってほしくて、わたしも彼の程よく逞しい胸に頬ずりし、広い背中を手で撫でた。 その瞬間、彼の岐立が大きくなってわたしの壺の中を圧迫し、わたしもたまらなくなって「あぁっ!」と声を上げた。「あぅ……っ! 絢乃さん、そんなに煽らないで下さい……っ!」「ゴメンね。でも、貢にも同じくらい気持ちよくなってほしいの。……ああ……っ、わたしは気持ちいいよ……、あぁんっ! はぁ……んっ♡」「僕も……気持ちいいですよ。うぅ……っ、もう……イきそうだ……っ!」「わ……わたしも……っ、またイく……っ! あぁ……、貢……一緒にイこ……っ」 わたしも彼も呼吸が荒くなる中、濃厚なキスをしながら仲良く――わたしは二度目の絶頂を迎えた。   * * * *「――わたしね、結婚してからも貴方のこと、どんどん好きになっていってる気がする。もう怖いくらいに」 行為の後、乱れた呼吸が整ってからわたしは彼の胸に頭を預けてこう言った。 わたしはもう、身も心も彼の色に染まってしまっていて、彼なしでは生きていけない。「えっ? 何が怖いんですか?
last updateLast Updated : 2026-04-28
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国際観光都市・神戸 PAGE1

 ――新婚旅行、二日目。 ルームサービスで朝食を済ませ、身支度を整えたわたしと貢は一階のコンシェルジュカウンターに立ち寄った。これから夜まで市内観光を楽しむため、ルームキーを預かってもらうつもりなのだ。「おはようございます。二〇二五号室の篠沢です」「おはようございます、篠沢様」 コンシェルジュの女性はスラッとした長身で、背筋がピンと伸びていて、同じ女性のわたしが見てもカッコいい。そして、朝からすごく爽やかだ。「すみません、これから市内観光に出るのでルームキーを預かっておいて頂けますか? 夜には戻りますので」「かしこまりました。ご用件承ります」 彼女は快くキーを預かってくれた。そのついでといっては何だけれど、彼女に質問してみる。「ありがとうございます。――ところで、〝シティループバス〟って新神戸駅前からも利用できますか? パンフレットみたいなのがあったら頂きたいんですけど」「はい、ご利用頂けます。パンフレットでございますね。少々お待ち下さいませ」 彼女はもう一人いた男性コンシェルジュにカウンターを任せ、バックヤードに戻り、数分後に戻ってきた。その手に緑色のパンフレットらしきものを持って。「――お待たせいたしました。こちらが〝シティループバス〟のパンフレットでございます。時刻表も記載されておりますので、本日の観光にご活用下さいませ。では、お気をつけて行ってらっしゃいませ!」「ありがとうございます。行ってきます!」 わたしたちはホテルを出て、新神戸駅前にあるという〝シティループバス〟の停留所を目指した。パンフレットによれば、バス停は濃い緑色だということだけれど……。「――あ、あれじゃないですか? バス停」「ホントだ。ここに載ってる写真と同じだね」 そこでしばらく待っていると、バス停と同じく深緑色のオシャレなバスがやってきた。 これもパンフレット情報だけれど、この〝シティループバス〟は「走る異人館」とも言われて親しまれているらしい。深緑色のボディやレトロな外観は、本当に北野の異人館みたいでオシャレだ。 車内に乗り込むと、可愛い制服姿の乗務員さんが優しい笑顔で出迎えてくれた。この女性はバスガイドも兼ねていて、運行ルート上に点在している観光名所の案内アナウンスもしてくれるのだとか。 昨日の夜、川元さんが教えて下さったとおりに信号待ちの時に
last updateLast Updated : 2026-05-01
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国際観光都市・神戸 PAGE2

「英会話でしたら……まあ、日常会話くらいならどうにか。大学時代に英会話教室で習ってたことがあるんで」 「ほらね。だから、貴方に恥かかせたくなくて、国内にしたの」  彼にだって沽券やプライドがあるはずだもの。新婚旅行先で恥をかいたら、今後トラウマになってしまうかもしれない。 「それは……どうも。そういえば絢乃さんって、ビジネス英語もペラペラでしたね。なぜか韓国語も」  わたしは会長に就任して間もない頃、海外からの仕事の電話に「高校生がよくこんなの覚えたな」という高いレベルのビジネス英語で応対して、彼を驚かせたことがあった。彼が今言ったのは、多分その時のことだ。 「うん。でも、わたしよりビジネス英語が堪能な人はたくさんいるんじゃないかな。わたしは将来必要になると思って覚えただけだし」 「それも〝女帝学〟の一環ですか?」 「そういうこと。――まあ、この神戸も国際観光都市だから、観光中に外国人の観光客とかに出くわすことはあるかもね。旧居留地とか南京町もあるし」 「はあ。そういう時は、絢乃さんに対応お任せしまーす……」  彼が自信なさそうにわたしを頼ってきたので、わたしはこっそり吹き出した。  〝シティループバス〟のルートは一方通行なので、わたしたちはだいぶ遠回りをしてから『北野異人館』のバス停で降りた。  そこはもう日本国内とは思えないくらいステキな町並みで、まるで古いアメリカやヨーロッパの映画の世界に迷い込んだような錯覚さえ起こす。明治時代に神戸港が開港されて以来、この神戸の街がどれほど多くの外国人で賑わっていたのか、この町並みを歩くだけで手に取るように分かるのだ。 「…&h
last updateLast Updated : 2026-05-02
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国際観光都市・神戸 PAGE3

「ええっ? 君たちは夫婦なのかい? そんなに若いのに」 ダンナ様の方が、オーバーなくらいに目をみはった。「若すぎる」という単語は、貢にも通じたのか通じていないのか。「ええ。わたしは十九歳で、彼は二十七歳です」「十九歳? お嬢さん、あなたまだ学生なんじゃないの?」 年齢だけでわたしを大学生だと思ったらしい奥さまに、貢がここにきて初めて「No」と口を挟んだ。「彼女は僕の会社のトップレディです」 彼は自信ありげに英語でそう言ったけれど、「トップレディ」はなんか違うような……。それなら「プレジデント」の方がまだしっくりくるんじゃないかしら?「彼の言ってることは本当です。わたしは大きな企業グループの会長で、彼はわたしの秘書なんです。彼はわたしにとって、すごく大切な人なんです」 彼のフォローの意味でも、わたしはそう補足した。 そして、彼には多分理解できないであろう複雑な英語も使い、彼とわたしがどんな風に出会って恋に落ちたのか、どれほどわたしの心の支えになってくれているかをイギリスから来られたこのご夫妻に話して聞かせた。「あら、そうなの? そんなに可愛らしいから、学生さんだと思い込んじゃって。ゴメンなさいね?」「妻は思いついたことを、その場で何も考えずに行ってしまう悪いクセがあってね。本当に申し訳ない」 ご夫婦で謝られ、何だかくすぐったい気持ちになったわたしは「気にしないで下さい」と言って肩をすくめた。 日本には「袖摺り合うも他生の縁」という言葉がある。でも、旅先で知り合っただけの人たちに同情されるのはイヤだった。「――さあ、着きましたよ! ここが〝風見鶏の館〟です」 公園を左に折れると、キュートな風見鶏がシンボルの、茶色っぽいとんがり屋根の建物が見えた。「可愛いトップレディさん、案内ありがとうございました。いい旅を」「ええ。貴方がたも、いい旅を」 異国のご夫婦とはここでお別れして、わたしたちは周囲を散策することにした。 今日もいいお天気で、ちょっと蒸し暑い。こんな陽気の日は、冷たいソフトクリームが食べたくなる。「貢ー、そこのお店でソフトクリーム買おうよ」「ああ、いいですねぇ。行きましょう」 わたしが指さした先、さっき上ってきたトーマス坂をちょっと下ったとこ
last updateLast Updated : 2026-05-04
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国際観光都市・神戸 PAGE4

 ここでは店内での飲食もできるのだけれど、わたしたちはテイクアウトして、風見鶏の館前の公園のベンチに座って味わうことにした。 「美味しいねー。……そうだ! 別々のフレーバー買ったんだし、どうせならシェアしない?」  チョコレート味のソフトクリームも濃厚で美味しいけれど、彼が舐めているピスタチオ味も気になってきた。 しばらくじーっと見つめていると、貢が気づいて「……どうぞ」と食べかけだった淡いグリーンのそれを差し出してくれた。 「いいの!? ありがと! いただきま~すっ!」  わたしは嬉しくなって、上からパクッとかぶりついた。彼が口をあんぐり開けて固まっている。 「うん、コレも美味しい! ……あれ、どしたの?」 「どうしてかぶりつくかなぁ。スプーンもらってるんだから、ちょっとだけ|掬《すく》って食べるとかできたでしょう」 「……あ、ゴメンね。じゃあお詫びに、コレにかぶりついちゃっていいから」  わたしはテヘヘッと舌を出して謝った後、貢にも食べかけだったチョコ味のソフトクリームを差し出す。 彼もわたしに負けないくらい豪快に、大きな口でかぶりついた。二十代も後半の大人の男性なのに、すごくわんぱくな男の子に見える。 旅先の解放感がそうさせるのか、わたしたちは人目も気にせずにイチャイチャしているけど、恥ずかしいとは思わない。 「……なんか楽しいね、こういうの」 「はい? 〝こういうの〟って、二人で旅行するのが……ですか?」 「まぁ、それもあるんだけど。こうやって外で、貴方と二人でベタベタするのが、かな。わたしって、経済界
last updateLast Updated : 2026-05-05
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