All Chapters of トップシークレット☆後日談 東京~神戸 新婚ラプソディ: Chapter 21 - Chapter 25

25 Chapters

国際観光都市・神戸 PAGE5

 かくいうわたしの家、つまり篠沢家にもそれと同じくらいの長い歴史がある。 母の七代前に当たる初代の篠沢家当主が始めた〈篠沢商会〉という企業グループが現在の〈篠沢グループ〉の前身で、初代と二代目とで今のような大財閥にまで成長させたのだそう。  つまり何が言いたいのかというと、わたしの家もこの館も建てられたのは同じくらいの時代だったということ。でもわたしの家がイギリス風の建築様式なのに対して、この館は設計したのもドイツ人だったそうで、ドイツの建築様式の特徴が出ている。 「――あ、見て見て。この建物、NHKの朝ドラの題材になったことがあるらしいよ」  わたしは入り口に建てられているパネルの文字を指さした。 「ホントですねぇ。一九七七年……っていうと、もう四十年以上前ですか」 「うん、ママが生まれる前だね。でも、朝ドラの題材にまでなっちゃうなんてスゴいよね。ウチも使ってくれないかな」  篠沢家の歴史だってけっこう深いし、第二次大戦中も国の財政をだいぶ助けていたおかげで財産没収をまぬかれたらしい。そして戦後には国の復興のために尽力していた。そういうポイントが評価されたら、もしかするかも? 「……どうですかねぇ。NHKに直接売り込みます? もしくは有名な脚本家の先生に」 「う~~ん……、それはそれで厚かましいような……」  わたしはハッキリ言って、お金に物を言わせて何かを思いどおりにするという考え方がキライだ。いくら大金を積んだところで、世の中にはどうにもならないこともいくらでもあるから。……まぁ、貢を傷付けた犯人を見つけてもらうために、調査事務所に五十万円支払ったことはあったけれど。 それなら、どうにもならないという現実を受け入れることも大事だ
last updateLast Updated : 2026-05-06
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国際観光都市・神戸 PAGE6

「ブレンド一杯六百円……。マジっすか!」  ごく一般的な家庭に生まれ育った彼には、そのお値段が信じられないみたい。思わず自分の財布を取り出し、中身の心配をし始めた。 「……貢、心配しなくても払うのはわたしだから。お財布しまいなよ」 「はい……」  とはいうものの、わたしも現金の手持ちは心許ない。カードで支払うこともできるらしいけれど、貢はわたしがブラックカードを使う場面を見るたびに萎縮してしまうので、できればあまり使いたくない。 「わたしも、コンビニのATMでちょっとお金下ろしとく。たまには現金も使わないとね」  わたしたちはゆっくりと坂を下っていき、途中にあった手近なコンビニのATMで現金二十万円を引き出した。ちなみにこの北野周辺のコンビニは、街の景観によく溶け込んだ外観になっていてオシャレだ。 「――はい、これは貢の分」  わたしが半分の十万円を差し出すと、彼は目をしばたたかせた。 「えっ? ……いいんですか?」 「いいから持っときなさいって。わたしの口座のお金だって、もう夫婦の共有財産なんだもん。そのうち家族カードも作るから。遠慮しないで使って」  彼は彼なりに欲しいものがあったり、お土産を買って帰りたい人がいたりするかもしれない。だからこそ、自由に使えるお金があった方がいいのだ。 「……じゃあ、遠慮なくもらっときます」  彼はまだ遠慮がちにだけど、十万円のお小遣いを自分のシンプルな黒い長財布にしまった。 「――いらっしゃいませ」
last updateLast Updated : 2026-05-07
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お互いに知らなかったこと PAGE1

 ――わたしが現金で支払いを済ませ、〝にしむら珈琲店〟を後にしたわたしたち二人は最寄りのバス停から再び〝シティループバス〟に乗り、遠回りの末に南京町に辿り着いた。  メリケンロード沿いのバス停で下車し、長安門をくぐった先には、異人館街とはまた違う異国情緒漂う町並みが続く。今度は情熱的な中国へ一瞬でワープしてきたようで、赤や黄色などの原色や、中国風の音楽が溢れかえっている。 「――さて、まずは老祥記の豚まんから攻めよっか。人気あるみたいだし、売り切れてないといいんだけど」  わたしたちが目指す〝老祥記〟は十二支像で有名な南京町広場の西側にあり、ここは元祖豚まんの専門店として全国的に知られていて、数多くのガイドブックにも載っている。また、焼き小籠包も名物らしい。 「――すみませーん! 豚まん六つと焼き小籠包二人前、お願いします」  ここはイートインもあるので、わたしたちは店内でオーダーした。お冷やを飲みながら、お店や町の雰囲気を味わう。――二人とも、お腹がペコペコだ。さっき食べたピザトーストなんか、もうどこへ入ったか分からない。  中華料理店やその食材、中国茶や雑貨を扱うお店が多く建ち並ぶこの町には、独特の活気が溢れている。店先に立ちのぼる蒸籠の湯気、漂ってくる食欲をそそるいい香り、リズミカルな発音の中国語、二胡や太鼓などの中国楽器で奏でられる音楽……。「ここは本当に日本なの?」と思ってしまう。 今日は平日なのでそれほど賑やかというほどでもないけれど、休日や春節の頃にはもっと賑わうんだろう。その頃に、また来られたらいいな。 「――お待たせしました」  店員さんが、できたてのアツアツを持ってきてくれた。豚まんは小ぶりなサイズで、一人で三つは軽く食べられそうだ。
last updateLast Updated : 2026-05-08
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お互いに知らなかったこと PAGE2

「――さて、次はどこに行こう?」  スマホをバッグにしまい、シティループバスのパンフレットを広げ、行先を考えていると……。 「――なぁなぁ、そこの可愛いお姉ちゃん。ひとり?」 「オレらと一緒に茶ぁシバかへん?」  どう聞いても関西弁の若い男性二人組が、馴れ馴れしくわたしに声をかけてきた。 タイプとしては、お義兄さまによく似た感じの人たちだ。どちらも茶髪で、ヤンチャな雰囲気というかチャラチャラしているというか。 「……はい? わたし……ですか?」  「そうそう、キミや。イケてるお姉ちゃん、どっから来たん?」 「……あれ? キミ、どっかで見たような顔やな。どこやったかな……」 「あー……、えっと。東京からですけど。観光で。……あの? お二人は地元の方ですか?」  わたしには、関西弁なんてどれも同じようにしか聞こえない。だから、この二人のこともそう思ったのだけど……。 「そうそう。オレらも神戸のジモティーやで♪」 「なんでやねん、お前! オレら、尼崎の人間やんけ」 「…………はあ」  いきなり漫才のようなやり取りを始められ、わたしは首を傾げるしかない。ちなみに、尼崎市は兵庫県の南東部にある市で、大阪府との境にある。 「もう、そんな細かいことどうでもええやんー。なぁなぁ、オレらと遊ぼうやー
last updateLast Updated : 2026-05-09
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お互いに知らなかったこと PAGE3

「でも、ちょっと予想外だったなぁ。まぁ、いきなり殴りかかるよりはよかったけど」  もし万が一相手にケガでもさせてしまったら、楽しい新婚旅行どころではなくなってしまう。今はもう辞めてしまったけど、彼は一応格闘技を習っていたのだ。 「さすがにそれはマズいと思いとどまったんで。というか、ナンパされたのって絢乃さんにも原因があったんじゃないですか」 「……えっ、なんか怒ってる? わたしにも」 「絢乃さんはいつも無防備すぎるんですよ! 心配しっぱなしの僕の身にもなって下さい!」 「……え?」  どうしてわたしは彼に怒られてるんだろう? 無防備ってどういう意味? わたしの頭の中は今、「?」でいっぱいだ。っていうか論点ズレてない? 「絢乃さんは誰彼構わず愛嬌振りまきすぎなんです! あなたはあざとさ抜きに可愛いんですから、男がそれに釣られてホイホイついて来るのが分からないんですか!? あと、スキだらけで狙われやすいっていうのも自覚ないですよね!?」 「……う、うん」  わたしも勢いにつられて頷いてしまったけれど、貢の熱弁がスゴすぎる。そして顔が耳まで真っ赤だ。 「ちょ、ちょっと貢! 落ち着いて!」 「…………僕は、他の誰にもあなたを取られたくないんです。自分でも信じられないんですけど、僕の中にもこんな……独占欲みたいな感情があったなんて。情けないですよね」  わたしも信じられない。この夫の中にも、そんな感情があったなんて。 そういえば、彼は昨年の秋、わたしが調査を依頼した探偵さんと浮気してい
last updateLast Updated : 2026-05-10
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