婚約者は98回も結婚式をすっぽかした。花嫁を迎えにくる道中、彼の初恋の人はいつも、彼が必ず通る道で事故に遭う。そして彼は、彼女を病院へ運ぶために迷わず式を延期するのだった。99回目の式当日も同じ。結婚式の時間が過ぎても、陸田大輔(りくだ だいすけ)は一向に姿を現さなかった。ゲストたちの間では彼への不満が高まっていた。私は胸が締め付けられる思いを我慢しながら、笑顔で皆をなだめた。なぐさめの言葉が終わるやいなや、大輔から電話が入った。案の定、迎えに来る途中で彼の初恋の人がまた事故に遭ったという。電話の向こうからの言い訳を聞きながら、私の気持ちは徐々に冷めていった。彼の謝罪と約束、私は98回も聞いてきた。最初は悲しく、やがて慣れ、今となってはただばかばかしく思える。電話を切り、ゲストたちを送り出した。ゲストが去った後のホールはひどく空虚で、メインテーブルに飾られた真っ白なカサブランカの芳醇な香りが、皮肉にも私の惨めさを引き立てていた。何度も夢見た結婚式。けれどその期待は、彼の欠席のたびに削り取られ、今では何も残っていない。片付けを終えた頃、大輔がやってきた。オーダーメイドのスーツに身を包み、申し訳なさそうな顔で言った。「夏海(なつみ)、すまない。陽可(ひより)が急に飛び出してきた原付にぶつけられて……病院まで付き添って、今ようやく戻れたんだ」私は冷静に答えた。「わかったわ。彼女の命の方が大事だものね」大輔の瞳には驚きが満ちており、彼は探るように尋ねた。「……本当にそう思っているのか?」彼はきっと、私がいつものように目を真っ赤にして問い詰めるか、拗ねるのを待っていたのだろう。「今まで私がこだわりすぎてただけ。命に関わることだもの、優先して当然だわ」彼は安堵し、近づいて私を抱きしめた。その腕の温度には相変わらず馴染みのある温かさだったけれど、今の私には温かさなど少しも感じられなかった。「夏海、俺が悪かった。いつも辛い思いをさせて……でも、陽可には身寄りがいない。放っておけないんだ」言い終わらぬうちに、ポケットの中のスマホが鳴った。「わかった、すぐ行く」電話を切ると、彼はためらいがちに私を見た。「陽可が病院で暴れてる。誰にも止められないらしい」私は微笑んで言っ
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