──先生が去って早二週間。 部屋の壁に飾ってある、雑誌や新聞記事を入れた額を眺める。 凱旋公演の次の日、高科先生が言った通り日本中が「御神 貴志」の名前で埋め尽くされた。 至るところで、公演時の風景や他の写真が踊った。 その中でもやはり一番多かったのは、アンコール後の微笑姿を大きくアップにした写真だった。 まるで何処かのモデルかアイドルスターのような扱いに、先生は一言も報道陣の前で発することなく、機上の人となった。 由紀様が後で教えてくれたが、日本のクラッシック音楽界の底上げには莫大なお金を必要とし、その為の広告塔となることは先生にとっては、幼少期より課せられた任務のようなもので、今更彼がそれを気にすることはないから、安心して。と微笑まれた。 御神の家に産まれた者の宿命だからと。 何かそんなの可哀想…… 音楽が仕事や任務だなんて。 ──ヴゥッーーヴゥーー 電話? こんな時間に? 時計を思わず見る。 23時。画面に発信者の名が表記される。『神』 嘘!「はい!」「寝てたか?」「いえ! 先生を見ていました!」「はぁ?」「新聞の!」「くだらないの見てないでさっさと寝ろよ」「大事です! 一日の癒しタイムです!!」「悪かったな。オケ中で移動多くて連絡出来なかった」「いえいえそんな。存在を覚えて頂けただけで光栄で御座います! 今フランスですか?」「お前怖いわ……」「当然で御座います! 神の居場所は常に把握しております!」「で、どうなんだ、そろそろ半分になったぞ?」「……順調です?」「明日、まとめて総評送るから、それ見て高科と練り直せ」「本当で御座いますか?」「あーーお前足のサイズいくつだ?」「へ?」「いくつだ?」「23でございますが?」「明日送っとくわ。春コンまでには届くはずだ」「ぇ? ええええええ?」「最後の日になるかもだしな?」「ひどおおぉおいですううぅう!!」「そろそろ時間切れ。じゃあな」「はい!! 有難う御座います!!」 ──ツーツーツゥー ほんの数分だけの神の声だったが、私は涙が止まらなかった。 会いたい! そのたった四文字を言ってしまえない自分に。 いや、言ってはいけない人に。 何で私を放って行ってしまったの! と、罵ってやりたい気持ちと、先生の殺人的過密スケジュールの中
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