妻が特注した「座面やたら広いソファ」が家に届いてから、あいつは毎晩リビングで寝るようになった。俺が寝室へ戻ってこいと言っても、「疲れてるの」その一言で追い返される。ひどい時は寝室のドアまで鍵をかける始末だ。そのくせ、夜中になるとリビングの方から妙に押し殺した物音が聞こえてくる。朝になるまで、絶対にドアを開けてくれない。さすがに俺も限界だった。だから出産当日――妻が分娩室から出てきて、まだベッドからも起き上がれない状態の時、俺は生まれた子供を抱くことすら拒否し、その場で離婚を切り出した。妻は目を真っ赤にしながら震える声で聞いてきた。「私が毎晩ソファで寝てたせいなの?ただそれだけで子供を産んだばかりの私と離婚するっていうの?」俺は一切迷わず答えた。「そうだ」俺の迷いのない返事を聞いた瞬間、小林菜奈(こばやし なな)は病室のベッドの上で泣き崩れた。両家の親たちも、孫が生まれた喜びから一瞬で現実へ引き戻された。すると、彼女の助手である山田英夫(やまだ ひでお)が突然前に飛び出してきて、大声で怒鳴った。「杉浦駿介(すぎうら しゅんすけ)!お前、本当に人の心ってもんがあるのか?菜奈さんが、お前のために、この家のためにどれだけ尽くしてきたと思ってる!ただソファを買ってリビングで寝てただけだろ?一緒に寝なかったくらいで、離婚だなんて頭おかしいんじゃねぇのか!」それを聞いた菜奈の父はさらに怒りを募らせた。「なんだ、理由はそんなくだらんことか!菜奈は妊娠してたんだぞ!そんな気分になれない時だってある。それだけで離婚だと?お前、それでも男か!」病室中の視線が一斉に俺へ向けられる。まるで罪人でも見るような目だった。父は慌てて間に入り、取り繕うように笑った。「まあまあ、落ち着いてください。こいつも分娩室の外で長時間待って、頭が混乱してるだけなんです。元気な男の子が生まれたばかりなんですよ。こんなめでたい日に離婚なんて、縁起でもないこと言うわけないでしょう」母も急いで菜奈のそばへ寄り、ティッシュで涙を拭った。「菜奈ちゃん、気にしないでね。駿介も一時の気の迷いだから。今は身体を休めるのが一番よ。泣いたら身体に障るわ」看護師も、隣のベッドの患者たちも、呆然とした顔でこちらを見ている。だが、俺の態度は
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