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第2話

作者: ポップコーン猫
菜奈の父は、俺が殴ったのを見てさらに激昂する。

「本当に見る目がなかった!まさか菜奈をこんな男に嫁がせるなんてな!」

英夫は菜奈の母に支えられながら立ち上がると、悔しさを堪えるような顔で口を開いた。

「おじさん、おばさん、駿介さんを責めないでください……全部、僕が悪いんです。

こんな時に口を挟んで、駿介さんを怒らせた僕が悪かったんです。駿介さんだって、きっと色々抱えてるんですよ。

菜奈さんは出産したばかりなんですから、これ以上、僕のせいで空気を悪くしないでください」

菜奈はそんな英夫を見て、余計につらそうな顔になる。

「英夫、あなたは悪くないよ。悪いのは駿介が……」

そこまで言いかけたところで、また喉を詰まらせた。

しばらくしてようやく落ち着くと、小さな声で続ける。

「気にしないで、駿介は最近ちょっとおかしいだけだから……」

英夫をなだめたあと、菜奈は改めて俺を見る。その目には、まだわずかな懇願が残っている。

「駿介……私たち、もう子供もいるんだよ?あんなに可愛い子なのに、どうしてそこまでして離婚したいの?」

だが、菜奈の父はもう我慢できなかった。一歩前へ出ると、怒りを剥き出しにして俺を睨む。

「こんなにも頑固に離婚したいのか!お前、まさか外に女がいるんじゃないだろうな?

そうでもなきゃ説明がつかん!普通、妻が子供を産んだその日に離婚なんて言い出すか!」

英夫もハッとした顔になり怒鳴る。

「なるほどな!菜奈さんはまだお前を庇ってるのに、お前は浮気かよ!

たとえ他に女がいたとしても、なんで今日なんだよ?菜奈さんの出産の日に離婚を切り出すなんて!」

菜奈も涙を浮かべたまま俺を見る。

「駿介……本当に他に女がいるの……?」

英夫の「菜奈さん」という呼び方が耳障りだった。だが俺は表情一つ変えない。

「他に女がいるかどうかなんて、どうでもいい。大事なのは、俺と小林菜奈が離婚するってことだ」

その瞬間、菜奈の父は完全にブチ切れた。

入口を指差しながら怒鳴る。

「いいだろう!お前みたいな薄情者、こっちから願い下げだ!お前たちも全員出て行け!

離婚したいんだな?分かった!五日後に裁判所で会おうじゃないか、お前みたいな不倫男、社会的に終わらせてやる!」

俺の両親は何か言おうとしたが、菜奈の両親の険しい視線に押し黙る。

病室を出た瞬間、父が理解できない顔のまま、たまらず俺の腕を掴んだ。

「駿介、お前本当にどうしたんだ?お前と菜奈、昔はあんなに仲良かったじゃないか。それがどうして急に離婚なんだ。それもこんな時に……」

父は遠い目をする。

「付き合いたての頃なんか、お前は毎日菜奈にべったりだった。

菜奈が風邪を引いた時なんか、真夜中に街中走り回って、菜奈が食べたいって言ったお菓子を探してただろ?

びしょ濡れになって帰ってきたくせに、『買えた!』って嬉しそうに笑ってたじゃないか?

本当に幸せそうだったのに……なんでこんなことになったんだ……」

父の言葉を聞いた瞬間、俺の目から勝手に涙が零れ落ちる。

俺は乱暴に涙を拭った。

「親父……それはもう、昔の話だ」

そう言い残し、父の手を振りほどいてエレベーターへ向かう。

病院を出ると、先輩の西田和真(にしだ かずま)が車のそばで待っている。

車に乗り込んだ俺の悪い顔色を見るなり、先輩は俺をからかった。

「DNA親子鑑定はしないのか?まだ五割くらいはお前の子の可能性あるだろ」

俺は苦笑する。

「からかわないでくださいよ、五日後の裁判、また世話になります」

俺はイヤホンを耳につけ、自嘲するようにもう一度録音データを再生し始める。

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