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毎晩ソファで眠る妻に離婚を告げた

毎晩ソファで眠る妻に離婚を告げた

Par:  ポップコーン猫Complété
Langue: Japanese
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妻が特注した「座面やたら広いソファ」が家に届いてから、あいつは毎晩リビングで寝るようになった。 俺が寝室へ戻ってこいと言っても、「疲れてるの」その一言で追い返される。 ひどい時は寝室のドアまで鍵をかける始末だ。 そのくせ、夜中になるとリビングの方から妙に押し殺した物音が聞こえてくる。朝になるまで、絶対にドアを開けてくれない。 さすがに俺も限界だった。 だから出産当日―― 妻が分娩室から出てきて、まだベッドからも起き上がれない状態の時、俺は生まれた子供を抱くことすら拒否し、その場で離婚を切り出した。 妻は目を真っ赤にしながら震える声で聞いてきた。 「私が毎晩ソファで寝てた……ただそれだけで子供を産んだばかりの私と離婚するっていうの?」 俺は一切迷わず答えた。 「そうだ」

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Chapitre 1

第1話

妻が特注した「座面やたら広いソファ」が家に届いてから、あいつは毎晩リビングで寝るようになった。

俺が寝室へ戻ってこいと言っても、「疲れてるの」その一言で追い返される。

ひどい時は寝室のドアまで鍵をかける始末だ。

そのくせ、夜中になるとリビングの方から妙に押し殺した物音が聞こえてくる。朝になるまで、絶対にドアを開けてくれない。

さすがに俺も限界だった。

だから出産当日――

妻が分娩室から出てきて、まだベッドからも起き上がれない状態の時、俺は生まれた子供を抱くことすら拒否し、その場で離婚を切り出した。

妻は目を真っ赤にしながら震える声で聞いてきた。

「私が毎晩ソファで寝てたせいなの?ただそれだけで子供を産んだばかりの私と離婚するっていうの?」

俺は一切迷わず答えた。

「そうだ」

俺の迷いのない返事を聞いた瞬間、小林菜奈(こばやし なな)は病室のベッドの上で泣き崩れた。

両家の親たちも、孫が生まれた喜びから一瞬で現実へ引き戻された。

すると、彼女の助手である山田英夫(やまだ ひでお)が突然前に飛び出してきて、大声で怒鳴った。

「杉浦駿介(すぎうら しゅんすけ)!お前、本当に人の心ってもんがあるのか?菜奈さんが、お前のために、この家のためにどれだけ尽くしてきたと思ってる!

ただソファを買ってリビングで寝てただけだろ?一緒に寝なかったくらいで、離婚だなんて頭おかしいんじゃねぇのか!」

それを聞いた菜奈の父はさらに怒りを募らせた。

「なんだ、理由はそんなくだらんことか!菜奈は妊娠してたんだぞ!そんな気分になれない時だってある。それだけで離婚だと?お前、それでも男か!」

病室中の視線が一斉に俺へ向けられる。まるで罪人でも見るような目だった。

父は慌てて間に入り、取り繕うように笑った。

「まあまあ、落ち着いてください。こいつも分娩室の外で長時間待って、頭が混乱してるだけなんです。

元気な男の子が生まれたばかりなんですよ。こんなめでたい日に離婚なんて、縁起でもないこと言うわけないでしょう」

母も急いで菜奈のそばへ寄り、ティッシュで涙を拭った。

「菜奈ちゃん、気にしないでね。駿介も一時の気の迷いだから。今は身体を休めるのが一番よ。泣いたら身体に障るわ」

看護師も、隣のベッドの患者たちも、呆然とした顔でこちらを見ている。

だが、俺の態度は変わらなかった。

「親父、俺は本気だ。この結婚は終わりにする」

そう言って、俺は離婚届を取り出し、菜奈へ差し出した。

「サインしろ」

俺が本気だと分かった瞬間、菜奈の父はとうとう怒鳴り声を上げた。

「杉浦、お前みたいな恩知らずいるか!菜奈は十ヶ月もお前の子を腹で育てて、今日だって命懸けで子供を産んだんだぞ!

それなのに出産直後に離婚だと?菜奈にも、俺たちにも顔向けできると思ってるのか!」

父も俺の頑固さに顔を真っ赤にし、殴りかかろうと手を振り上げたが、母が必死に止める。

父は荒い息を吐きながら俺を睨みつけた。

「お前は本当に家庭をめちゃくちゃにしなきゃ気が済まないのか!何が不満か知らんが、後々解決すりゃいいだろ?なんでわざわざ今じゃなきゃ駄目なんだ!」

「解決などできない」

俺は病床に横たわる菜奈を見る。泣き声は止まっていたが、肩はまだ小刻みに震えている。

やがて彼女は掠れた声で口を開く。

「駿介……どうして……?」

「理由なんかない」

俺は冷たく言い放った。

「俺たちは終わりだ」

そう言い残し、俺はその場を去ろうとした。

すると英夫が突然、俺の腕を掴む。

「待てよ!菜奈さんは今、一番弱ってる時なんだぞ!彼女を置いて逃げる気か!」

俺はその手を振り払った。

「お前、ただの助手だろ、俺が何しようがお前には関係ない」

だが英夫は食い下がらず、俺の胸ぐらを掴むと、正義感を振りかざすように言い放った。

「そうだ、俺はただの助手だ!でも、お前のやってることは人として見過ごせねぇ!どこの男が、お前みたいに妻が子供を産んだ直後に離婚を切り出せるんだよ!

杉浦駿介、お前は男失格どころか、人間失格だ!」

次の瞬間、俺は英夫の手を振り払い、そのまま拳を叩き込んだ。

鈍い音が病室に響く。

英夫は数歩よろめき、そのまま床へ倒れ込んだ。頬を押さえ、信じられないという顔で俺を見上げる。

菜奈は顔色を変え、無理やり身体を起こそうとした。点滴の管が大きく揺れる。

「やるなら私にして!どうして関係ない人まで巻き込むのよ!」

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第1話
妻が特注した「座面やたら広いソファ」が家に届いてから、あいつは毎晩リビングで寝るようになった。俺が寝室へ戻ってこいと言っても、「疲れてるの」その一言で追い返される。ひどい時は寝室のドアまで鍵をかける始末だ。そのくせ、夜中になるとリビングの方から妙に押し殺した物音が聞こえてくる。朝になるまで、絶対にドアを開けてくれない。さすがに俺も限界だった。だから出産当日――妻が分娩室から出てきて、まだベッドからも起き上がれない状態の時、俺は生まれた子供を抱くことすら拒否し、その場で離婚を切り出した。妻は目を真っ赤にしながら震える声で聞いてきた。「私が毎晩ソファで寝てたせいなの?ただそれだけで子供を産んだばかりの私と離婚するっていうの?」俺は一切迷わず答えた。「そうだ」俺の迷いのない返事を聞いた瞬間、小林菜奈(こばやし なな)は病室のベッドの上で泣き崩れた。両家の親たちも、孫が生まれた喜びから一瞬で現実へ引き戻された。すると、彼女の助手である山田英夫(やまだ ひでお)が突然前に飛び出してきて、大声で怒鳴った。「杉浦駿介(すぎうら しゅんすけ)!お前、本当に人の心ってもんがあるのか?菜奈さんが、お前のために、この家のためにどれだけ尽くしてきたと思ってる!ただソファを買ってリビングで寝てただけだろ?一緒に寝なかったくらいで、離婚だなんて頭おかしいんじゃねぇのか!」それを聞いた菜奈の父はさらに怒りを募らせた。「なんだ、理由はそんなくだらんことか!菜奈は妊娠してたんだぞ!そんな気分になれない時だってある。それだけで離婚だと?お前、それでも男か!」病室中の視線が一斉に俺へ向けられる。まるで罪人でも見るような目だった。父は慌てて間に入り、取り繕うように笑った。「まあまあ、落ち着いてください。こいつも分娩室の外で長時間待って、頭が混乱してるだけなんです。元気な男の子が生まれたばかりなんですよ。こんなめでたい日に離婚なんて、縁起でもないこと言うわけないでしょう」母も急いで菜奈のそばへ寄り、ティッシュで涙を拭った。「菜奈ちゃん、気にしないでね。駿介も一時の気の迷いだから。今は身体を休めるのが一番よ。泣いたら身体に障るわ」看護師も、隣のベッドの患者たちも、呆然とした顔でこちらを見ている。だが、俺の態度は
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第2話
菜奈の父は、俺が殴ったのを見てさらに激昂する。「本当に見る目がなかった!まさか菜奈をこんな男に嫁がせるなんてな!」英夫は菜奈の母に支えられながら立ち上がると、悔しさを堪えるような顔で口を開いた。「おじさん、おばさん、駿介さんを責めないでください……全部、僕が悪いんです。こんな時に口を挟んで、駿介さんを怒らせた僕が悪かったんです。駿介さんだって、きっと色々抱えてるんですよ。菜奈さんは出産したばかりなんですから、これ以上、僕のせいで空気を悪くしないでください」菜奈はそんな英夫を見て、余計につらそうな顔になる。「英夫、あなたは悪くないよ。悪いのは駿介が……」そこまで言いかけたところで、また喉を詰まらせた。しばらくしてようやく落ち着くと、小さな声で続ける。「気にしないで、駿介は最近ちょっとおかしいだけだから……」英夫をなだめたあと、菜奈は改めて俺を見る。その目には、まだわずかな懇願が残っている。「駿介……私たち、もう子供もいるんだよ?あんなに可愛い子なのに、どうしてそこまでして離婚したいの?」だが、菜奈の父はもう我慢できなかった。一歩前へ出ると、怒りを剥き出しにして俺を睨む。「こんなにも頑固に離婚したいのか!お前、まさか外に女がいるんじゃないだろうな?そうでもなきゃ説明がつかん!普通、妻が子供を産んだその日に離婚なんて言い出すか!」英夫もハッとした顔になり怒鳴る。「なるほどな!菜奈さんはまだお前を庇ってるのに、お前は浮気かよ!たとえ他に女がいたとしても、なんで今日なんだよ?菜奈さんの出産の日に離婚を切り出すなんて!」菜奈も涙を浮かべたまま俺を見る。「駿介……本当に他に女がいるの……?」英夫の「菜奈さん」という呼び方が耳障りだった。だが俺は表情一つ変えない。「他に女がいるかどうかなんて、どうでもいい。大事なのは、俺と小林菜奈が離婚するってことだ」その瞬間、菜奈の父は完全にブチ切れた。入口を指差しながら怒鳴る。「いいだろう!お前みたいな薄情者、こっちから願い下げだ!お前たちも全員出て行け!離婚したいんだな?分かった!五日後に裁判所で会おうじゃないか、お前みたいな不倫男、社会的に終わらせてやる!」俺の両親は何か言おうとしたが、菜奈の両親の険しい視線に押し黙る。病室を出た
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第3話
これ以上、先輩に迷惑をかけたくなかった。俺はホテルまで送ってもらい、そのままチェックインする。気づけば明け方近くになっていて、俺はぼんやりしたまま眠りに落ちていた。翌日の昼過ぎ。激しいノックの音で目を覚ます。ドアを開けた瞬間、大勢の人間が一斉になだれ込んできた。「杉浦駿介さん!奥様が出産したばかりなのに、なぜ離婚を切り出したんですか?」「結婚中に浮気していたという噂がありますが、本当ですか?」「奥様は命懸けであなたの子供を産んだんですよ?罪悪感はないんですか!」フラッシュが次々と焚かれる。録音機やマイクが、俺の顔の目の前まで突きつけられた。記者たちはスマホを掲げ、生配信や動画撮影をしながら、まるで俺を極悪人扱いしている。騒ぎを聞きつけた野次馬まで集まり始め、廊下はあっという間に人で埋まった。事情を知った途端、連中もまた露骨な嫌悪の目を俺へ向けてくる。一人の女性記者が強引に前へ割り込み、鋭い声で問い詰めた。「関係者によると、小林菜奈さんとは妊娠中から別室で生活していたそうですね、つまり以前から夫婦関係は破綻していたということでしょうか?出産当日に離婚を切り出したのも、最初から計画していたんですか?」続けて別の男性記者も畳みかける。「看護師の証言によれば、あなたは生まれた赤ちゃんを抱くことすら拒否し、両家のご両親の前で、出産直後の奥様に離婚届への署名を迫ったとか。この件について説明をお願いします!」そこでようやく俺は知った。昨日の出来事が、誰かによって撮影され、ネットへ投稿されていたことを。たった一晩で、俺は全国から叩かれる「最低の夫」になっていた。無数のカメラを前にしても、俺は淡々と口を開く。「……別に、説明することはありません」その一言で、周囲の怒りはさらに爆発した。「うわ……実際に見るまで信じられなかった。奥さんの出産当日に離婚を切り出す男が本当にいるんだな……」「どうせ外に女がいるんでしょ。クズ男と愛人同士、お似合いじゃん」「こんなの絶対離婚した方がいいよ。こんな父親いたら、子供だって将来恥ずかしく思うに決まってる」罵声が飛び交う中――突然、人混みが割れた。俺の両親に支えられた菜奈が、ゆっくりと姿を現す。出産のダメージはまだ抜けきっていない。顔
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第4話
そんな俺の態度を見て、父は怒りで全身を震わせた。次の瞬間――バチンッ!!乾いた音とともに、父の平手が俺の頬に叩きつけられる。「駿介!お前、いつまで意地張ってるつもりだ!菜奈がどれだけお前のために苦しんだと思ってる?目も心も腐ったのか!親子鑑定の結果まで出てるのに、それでもまだこの家庭を壊す気か!」容赦のない一撃だった。頬が一瞬で熱を持ち、ヒリヒリと痛む。周囲のざわめきが、一気に爆発する。「人でなしが!」と俺を指差して罵る者もいれば、スマホのカメラへ向かって、「今の男ってなんでこんなに薄情なんだろうね」と呆れたように話す者もいた。罵声が飛び交う中、菜奈は涙で目を潤ませながら俺を見つめていた。だが、その瞳に残っていた最後の希望も、少しずつ消えていく。「……裁判所で会おう」俺は腫れた頬を押さえながら、静かにはっきりと言い放つ。その瞬間、菜奈の肩がビクリと震えた。涙が堰を切ったように零れ落ちる。彼女は枯れた声で聞いた。「駿介……本当に、もうやり直す余地もないの?」俺は菜奈を見ない。ただ群がる連中へ向かって冷たく言う。「どけ」両親が俺を止めようとしたが、俺はその手を振り払った。ドアの方を指で刺しながら言った。「全員出ていけ、ここはお前らの来る場所じゃない」それからの五日間。俺はスマホの電源を切り、ホテルに籠もり続けた。そして裁判当日――俺は開始時間ぎりぎりに法廷へ入る。原告席には菜奈が座っていた。顔色は相変わらず悪い。その隣には英夫がぴったり張り付き、敵意むき出しの目で俺を睨んでいる。傍聴席には両家の親たち。俺の両親は重苦しい顔で溜息をつき、菜奈の両親は今にも俺を殺しそうな目をしていた。席に着いた瞬間、母が小声で話しかけてくる。「駿介、お願いだから今からでも菜奈に謝りなさい。お父さん、知り合いに相談したのよ……このままだと、あなた本当に全部失うわ」すると英夫が突然立ち上がり、俺を指差した。「杉浦!もう意地張るのやめろよ!菜奈さんは、お前がちゃんと謝れば許すって言ってるんだぞ!本当に全部失う気か?」菜奈の父も机を叩きながら怒鳴る。「この薄情者が!今ならまだ土下座して許しを請えば間に合うぞ!でなきゃ、お前なんか路頭に迷わせてやる!」だが俺は椅子にもたれたまま、無
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第5話
その言葉を聞いた瞬間、法廷は水を打ったように静まり返った。弁護士は無言でUSBメモリを再生機器に差し込み、【証拠】と書かれたフォルダを開く。その中には複数の動画ファイルが入っていた。そのうちの一つを再生した瞬間――大画面に、俺の家のリビングが映し出される。菜奈はゆったりした部屋着姿でソファに座っていた。呼吸に合わせて身体が微かに上下し、カメラの角度からは赤く染まった頬まではっきり見える。最初は何の変哲もない映像だった。だが数分後――菜奈の様子が徐々におかしくなっていく。肩を震わせ、無意識のようにソファの肘掛けを強く掴み始めた。法廷が静まり返る。誰もが顔を見合わせていた。「これは……」裁判官が眉をひそめる。傍聴席からも戸惑い混じりの声が漏れ始めた。映像の中の菜奈は頬を赤く染め、額には細かな汗が浮かんでいる。明らかに、言葉にしがたい状態に陥っていた。菜奈の両親はその映像を見た瞬間、顔を真っ赤にして視線を逸らす。服の裾を強く握り締めていた。次の瞬間、菜奈が勢いよく立ち上がった。彼女の声は震えていた。「あ、あなた……家に監視カメラなんて付けてたの……?」法廷がざわつく。「え、ちょっと待って……彼女は何してるの……?子供の前で、いや、妊娠中なのに……?」「こんな状態で無茶して、子供に何かあったらどうするつもりだったんだ?」その時だった。英夫が突然立ち上がる。「菜奈さん!もうこの期に及んで、まだ杉浦を庇うつもりなんですか?」英夫は痛ましげに顔を歪め、見ていられないという表情を浮かべていた。菜奈は呆然としたまま彼を見る。何を言われているのか理解できていないようだった。だが英夫はそのまま陪審員たちへ向き直り、声を張り上げる。「皆さん、騙されないでください!この映像、あなたたちが思ってるようなものじゃありません!」菜奈がまだ混乱している中、英夫は拳を握り締めながら叫んだ。「菜奈さんが妊娠五ヶ月だった頃、杉浦駿介は毎日のように無理やり関係を迫ってたんです!妊婦の身体なんて一切気にしない!自分さえ気持ちよければそれでよかったんだ!菜奈さん、何度も出血してました!医者にも、このままだと子供が危ないって言われてたんです!菜奈さんがソファで寝るようになったのは、駿介から逃げるため
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第6話
どれだけ罵倒されようと、俺の心は一切揺れなかった。俺は、この日のためにずっと耐えてきたんだ。俺は静かな声で口を開く。そして、得意げな表情を浮かべる菜奈と英夫へ視線を向けた。「裁判長。次の映像を再生させて頂きたいです」許可が下りると、弁護士がすぐに機材を操作する。大画面の映像が、夜のリビングへ切り替わった。カーテンの隙間から差し込む月明かりだけが、ぼんやりとソファの輪郭を照らしている。すると次の瞬間――ソファの背もたれ部分が、ゆっくりと持ち上がった。法廷中がざわつく。「は……?なんだあれ……?高級ソファの機能紹介でも始まったのか?」「収納付きソファか?ブランケットとかを入れるには便利そうだが、なぜ今これを流すんだ?」「いや待てよ、開き方おかしくないか?普通の収納には見えないぞ」その時だった。英夫の顔に、初めて明確な焦りが浮かぶ。菜奈も一瞬で血の気を失っていた。だが俺は止めない。映像はそのまま再生され続ける。ソファの中から、黒影が這い出してきた。暗くてはっきりは見えないが、男の体格であるのは明らかだった。その男は真っ直ぐソファで丸くなっていた菜奈へ向かい、彼女を抱き寄せる。そしてそのまま、二人は身体を寄せ合いながらキスを交わし、やがて深夜のリビングで、親密な時間を過ごし始める。夜明け前になると、男は再びソファの中へ戻っていった。さらに映像が続く。どの動画も同じ光景だった。毎晩、男がソファから現れ、菜奈と一夜を共にしている。法廷が完全に静まり返る。誰も状況を理解できていなかった。数秒後、その場は一気にざわめきに包まれた。「はぁ?ソファの中に男を隠してたってことかよ!さすがにヤバすぎるだろ!寝室があるのに、毎晩わざわざリビングのソファで寝てた理由、これだったのか!」「嘘でしょ……しかも妊娠中だったんだよね?そんな状態で別の男を家に連れ込んで、しかもこんな隠し方するとか。もし現場を押さえられてたら、大騒ぎじゃ済まなかったでしょ」「杉浦さん、気の毒すぎるだろ。自分の家が他人のデート場になってたなんて。そりゃ病室で即離婚を決意するわ。たぶん前から違和感はあったんだろうな。こんな裏切り、誰だって耐えられないって……」さっきまで俺を責めていた連中の視線が、一斉に同情へ変わっていく。
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第7話
俺は法廷で取り乱す二人を見下ろしながら、冷たく口を開く。「こいつらが白昼堂々、不倫行為に及ぶほど図々しくなければ、俺も、ここまで決定的な証拠は掴めなかった」その瞬間、傍聴席が完全に沸き上がった。「うわ、マジで最低だろこの二人!人って見かけによらないんだな……!」「杉浦さんかわいそうだな、完全に身内に裏切られるなんて」「そりゃ離婚もするわ!こんなの誰だって耐えられねぇ!」怒号とざわめきが法廷中に響き渡る。俺は軽く手を上げ、周囲を静めた。そして顔面蒼白の菜奈へ視線を向ける。俺はスクリーンに映されたソファの構造図を指差した。「見れば分かる通り、このソファの下部は完全にくり抜かれている。成人男性一人が隠れられるよう、最初からそう設計されてたんだ」弁護士がすぐに次の映像へ切り替える。画面には、俺の家のリビングが映っていた。家具屋の作業員が実際にソファの仕掛けを実演している。肘掛け部分の隠しボタンを押すと、ソファ下部がゆっくり開いた。その中には、深さ1メートル以上ある収納空間が隠されている。体格普通の男が簡単に中へ潜り込み、閉じた後は外見からまったく分からない。「――これが一つ目の証拠だ」続いて弁護士は、家具店の店主とのビデオ通話を接続した。弁護士が尋ねる。「店長。このソファを注文した人物、覚えていますか?」店主はすぐに頷いた。「覚えてますよ!去年の秋頃、男女二人で来ました。ソファの中に隠しスペースを作ってほしいって指定されましてね、しかも通常の倍の手付金まで払われたんです。変だとは思ったんですが、『特別な用途がある』って言われまして……」俺はスマホを持ち上げ、菜奈と英夫へカメラを向ける。「店長。この二人で間違いないですか?」店主は目を細めながら画面を見つめ、即答した。「はい、この二人です!女性の方は妊娠してました。男の方もずっと付き添ってて、『絶対に他人へ漏らさないでくれ』って何度も念押ししてましたよ」話終わらないうちに、英夫が突然狂ったように飛び出した。「デタラメ言うな!!」彼はスマホを奪おうと手を伸ばす。だが俺は身体をずらして避けた。英夫はそのままバランスを崩し、床へ転倒する。これでもう、言い逃れの余地は完全になくなった。菜奈の両親は、自分の娘を怒りと失
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第8話
俺は床に崩れ落ちた菜奈を見下ろしながら、ポケットから一本のICレコーダーを取り出した。ずっと前から用意していたものだ。俺は無言で再生ボタンを押す。ノイズ混じりの電子音の後――英夫の軽薄そうな声が法廷へ響いた。「なあ菜奈、この子……生まれてきたら俺の子かな?それとも駿介の?」続いて、菜奈の気だるそうな笑い声。「そんなの分かんないよぉー、毎回ゴム付けてなかったし、どっちの精子の方が強いかって感じじゃない?」英夫が低く笑った。「もし俺に似て生まれてきたら、駿介のやつ発狂するんじゃね?」菜奈も笑いながら答える。「発狂すればいいじゃん、その時は私が泣いて見せれば、あのバカ、喜んで私たちの子供育てるよ」数秒間、録音が静かになる。その後、英夫が少し不安げな声で尋ねた。「……じゃあ、もし俺の子じゃなかったら?」すると菜奈の声が急に甘くなる。まるで英夫をあやすような口調だった。「もしあなたの子じゃなかったらいらないよ。適当に『事故』っぽくして、おさらばしちゃえばいい。その後で、また二人で作ればいいじゃない」「……事故?」英夫の声が揺れる。すると菜奈は鼻で笑った。「何怖がってんの?身体が弱かったとか、落としたとか、ミルク詰まらせたとか言えばいいだけじゃん?そんなの誰も分かんないって。駿介みたいなバカなら、自分のせいだって勝手に思い込むよ」――録音が止まる。法廷は、死んだように静まり返っていた。次の瞬間。菜奈の父が勢いよく立ち上がる。指先を震わせながら、娘へ怒鳴りつけた。「お前……!お前は自分の子供まで殺そうとしてたのか?畜生でもそう言うことはしないぞ!」菜奈の母は真っ青になり、その場で気を失って倒れ込む。陪審員たちも完全に騒然となっていた。「うわ……この女は人でなしだ!自分の子供まで始末しようとしてたのかよ!」「英夫も含めて完全にサイコパスじゃねぇか!悪辣すぎる」「杉浦さんが離婚したがった理由、全部分かったわ……!俺だったら今日まで耐えられない!」裁判官が木槌を強く打ち鳴らす。「静粛に!!」法廷が少しずつ静まり返る。俺は裁判官を真っ直ぐ見据え、はっきりとした声で口を開いた。「裁判長、これで皆、理解できたと思います。俺が出産直後に子供を抱かなかったのは、冷酷だったか
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第9話
判決は、ほどなくして言い渡された。小林菜奈は、婚姻中の不貞行為、ならびに未成年者への危害を示唆する発言が認定され、財産分与なしの全面敗訴。さらに録音内の「危害を加える計画」に関しても、実行には至らなかったものの悪質性が極めて高いと判断され、懲役一年六か月の実刑判決を受けた。山田英夫も共犯として認定され、他人の家庭を破壊した責任を問われ、一年の実刑判決を言い渡された。判決が下った直後――菜奈の両親は、その場で娘との縁を切った。一晩で十歳は老け込んだように見える二人は、裁判所を出る頃には腰すらまともに伸びていなかった。二人は菜奈を一度も振り返らない。ただ俺の前へ来ると、深々と頭を下げ、涙声で言った。「……申し訳ありませんでした。私たちの育て方が間違っていました。あなたには、本当に辛い思いをさせてしまった……」英夫の末路は、さらに悲惨だった。会社を解雇されたうえ、業務上横領と機密情報漏洩の責任まで追及されたのだ。調べによれば、英夫は以前から職務権限を利用し、俺の会社の顧客情報を競合他社へ密かに売り渡していたらしい。複数の罪が重なり、出所後も業界では完全に信用を失った。今では、誰からも相手にされない存在になっている。一方、菜奈の獄中生活も悲惨なものだった。同じ雑居房に住む受刑者たちは、彼女のやったことを知ると露骨に軽蔑した。誰一人、まともに口を利こうとしない。しばらくして、菜奈から何通も手紙が届いた。そこには、後悔の言葉が並んでいた。【本当に間違っていた。子供のために、一度だけ許してほしい。せめて子供に会わせてほしい。全部捨ててもいいから、母親として一目だけでも……】俺はその手紙を読んだあと、無言でゴミ箱へ捨てた。世の中には――「ごめんなさい」の一言では、絶対に埋められない傷がある。子供は俺が引き取り、今は両親と一緒に育てている。この子は、驚くほど元気に育っていた。俺の顔を見るたび、嬉しそうに声を上げて笑う。その笑顔を見るたびに、あの日々を思い出す。ソファの裏へ監視カメラを設置した時の恐怖。録音を聞いた瞬間、全身の血が凍った感覚。産婦人科で、無理やり冷酷な夫を演じ続けた苦しさ。胸を切り裂かれるような日々だった。――だが。今、腕の中で温もりをくれるこの子を見ていると、全部間
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