極秘結婚から5年。ゼミの飲み会で、お節介なゼミのメンバーたちが私の夫と後輩女子をくっつけようとしていた。「ダメだよ」靜本湊(しずもと みなと)はチラッと私を一瞥して言った。「俺はフリーだけど、こういうのはノリで決めるもんじゃないよ」私は微笑みながら左手の指輪を撫でた。だが次の瞬間、その後輩の有村結衣(ありむら ゆい)がいきなり湊の頬にキスをしたのだ。「先輩が好きです」結衣は真剣な顔で言った。「私、先輩に本気でアタックしますから」周囲の爆笑の中、結衣は甘ったるい笑顔で彼の胸にすり寄った。湊は承諾しなかったが、結衣を突き飛ばすこともしなかった。飲み会の後半、結衣は湊に甲斐甲斐しく尽くしていた。どの料理も少しずつ彼の取り皿に取り分けていった。その中には、彼が大嫌いなはずだったエビまで入っていた。それなのに、湊は躊躇うことなくエビを口に運んだ。結衣が尋ねた。「美味しいですか?」「ああ、美味いよ」周りがドッと沸いた。「見ろよ、靜本先輩、口数は少ないけどめっちゃ食うじゃん!」「マジかよ、さっき涼音(すずね)ちゃんが同じこと聞いた時はガン無視だったのに。俺らにはいつも塩対応のくせにさー」「まあまあ、お前らも空気読めって……そろそろご祝儀の準備でもしとくか!」どんちゃん騒ぎの中、私は隅の席で静かに押し黙っていた。私と湊は極秘結婚してもう5年になる。湊が「大学でバレるとマズい」と言ったせいで、私は周りに「夫は長期の単身赴任中」と嘘をついていた。今日の飲み会でも、湊から一番遠い席に座るように配慮しているのだ。それなのに今、湊が他の女とカップル扱いされるのをただ見ているしかないなんて。「その時はパートナー同伴でお願いしますね!」結衣は笑いながら、私の方を振り向いた。「涼音先輩も、旦那さん連れてきてくださいよ。何年も前からSNSで後ろ姿のツーショットしか見たことないですし」彼女は急に声のトーンを落とし、意味深な言い方をした。「もしかして、旦那さんから結婚を公表するのもNG出されてるとか?それとも……言えないような関係なんですか?」その瞬間、場の空気が凍りついた。十数人の視線が一斉に私に突き刺さったが、湊は顔を上げず、黙々と飯を食い続けていた。チクッと胸が痛んだ。バッグの中に入っている
Read more