長谷川勇太(はせがわ ゆうた)と付き合って7年目、彼は私・黒崎奈々(くろさき なな)のために盛大な誕生日パーティーを開いてくれた。その席で、彼の友人や同じ研究室の仲間たちに私を紹介するつもりだと言っていた。プロポーズされるのだと信じ込み、私はお気に入りのドレスを着て、丁寧にメイクをした。しかし、パーティーが終わる直前になっても、彼にその気配は全くない。ただ、途中で一本の電話に出るために席を外しただけだった。「分かってるよ母さん。奈々とは別れるつもりだ。ただ、今はタイミングが悪いんだ。彼女の母親が入院中だし、本人も失業中なんだ。もし俺と遥が付き合ってるなんて知れたら、仕事場に怒鳴り込んできたら困るだろ?彼女が再就職できたら、適当な理由をつけて別れるよ」頭から冷水を浴びせられたかのように、私はその場に立ち尽くした。私はぼんやりと自分の手を見つめる。掌の中にある、少し色あせた縁結びの組み紐が、汗でじっとりと湿っていた。あれは、勇太が私に告白してくれた時にくれたものだ。いつか結婚する時の証だと、一生一緒にいるんだと言ってくれたのに。一生なんて、こんなにも短いものだったのか。勇太の顔は闇に溶け込み、表情を読み取ることはできない。その分、声の冷淡さが際立っていた。前へ進もうとしていた足が、曲がり角でピタリと止まる。電話の向こうで、彼の母親・長谷川洋子(はせがわ ようこ)の声が少し高くなり、不快感を露わにしている。「そんな状態で遥さんに対して申し訳ないと思わないの?いつまで彼女を立場も何も与えず、付き合わせる気なの?いい、勇太。あの尻軽女との関係は整理して、さっさと別れなさい」勇太は仕方なさそうに頷き、深く溜息をついた。「分かってるよ。この件は遥も納得してくれてる。協力するって言ってくれてるんだ。奈々とはもう7年も付き合ってるし、彼女は何かと俺を頼りにしてくれるから。もし急に別れを切り出して、ショックで自殺でもされたら、俺の評判にも関わるだろ」手の中の縁結びの組み紐が、掌に食い込んで痛い。私はいたたまれず俯き、溢れそうになる涙を必死に堪えた。勇太にとって、私は何一つ取り柄がなく、彼なしでは生きていけない存在でしかなかったのか。「その時は結納金を少し上乗せして、遥への補償にすれば
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