目を開けると、妹の白石沙耶(しらいし さや)が私、白石奈緒(しらいし なお)の目の前でへたり込み、手首にフルーツナイフを押し当ててしゃくり泣いていた。「奈緒お姉ちゃん、誓ってわざとじゃないの。お酒を飲みすぎちゃって……陸さんとどうしてあんなことになったのか、私にもわからなくて……」私は危うく吹き出しそうになった。だって、この茶番は前にも見たことがあるのだから。前世でもそうだった。私の婚約者である有馬陸(ありま りく)とベッドを共にした後も、沙耶はまるで自分が被害者であるかのように泣き喚いていた。周りの人間は皆、そんな彼女を慰めた。陸は彼女の体面を守るため、沙耶を妻に迎えた。そして私は、沙耶に捨てられた元婚約者、西園寺弦(さいおんじ げん)との政略結婚に追いやられたのだ。結婚式の直前、陸は手首に彫った私の名前のタトゥーを見せ、「愛しているのは君だけだ」と誓った。私はその言葉を信じてしまった。妹を渇望する夫の傍らで5年もの歳月を無駄にし、妹と結婚した男を待ち続けたのだ。その後、沙耶が死んだ。これでようやく、陸は私の元へ戻ってくる。そう思った。だが、斎場で私が目にしたのは、最愛の女性を失ったかのように彼女の遺影を強く抱きしめる彼の姿だった。「あいつは俺の妻だったんだ」彼は私にそう告げた。「もう諦めてくれ、奈緒」私の誕生日パーティーの夜、陸と弦は屋上で沙耶のことを巡り、殴り合いの喧嘩になった。一人は彼女を妻にした男。もう一人は彼女を渇望し続けた男。彼らが死んだ女を巡って争っている最中、私は屋上から下の車道に突き飛ばされ、眩いヘッドライトの光の中で命を落とした。再び目を開けると、私はすべての始まりに戻っていた。今度こそ、あの忌まわしい記憶を持っているのは私だけだと思っていた。だが、それは間違いだった。陸も、弦も、記憶を持っていた。そして、やり直すチャンスを与えられてなお、あの男たちは二人とも沙耶を選んだのだ。今生では、誰かに選ばれるのを待つことも、取引の道具として扱われることも、無惨に捨てられることも二度とごめんだ。今度こそ私は自らの手で、彼らが絶対に奪えない「自分の居場所」を築き上げてみせる。……沙耶はまだ泣いていた。「ごめんなさい」と彼女は泣き叫び、刃先
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