トランジットで待っている時、娘の学校から電話が入った。「牧野さん、大変申し訳ないんですが、娘さんの死亡を確認できる書類を学校までご提出いただけませんか。お父さんのほうがずっと電話に出てくださらなくて……本日中に来ていただければ助かるのですが」私は航空券の行き先に目を落とし、そのまま振替手続きで東都へ戻る便に変えた。三年ぶりに、娘が通っていた小学校の門をくぐった。あいにく、今日は親子参観日だった。水島英一郎(みずしま えいいちろう)が、一人の小さな女の子と写真撮影コーナーに立ち、ドレスの背中のリボンを丁寧に直してやっている。祥子(しょうこ)という子だ。私の娘ではない。英一郎の恩師の遺族の子どもだった。三年前、うちの娘を廃棄された倉庫へ突き飛ばした、まさにその子だった。周りの保護者たちが、声をひそめて囁き合う。「水島社長の元奥さんじゃない?よりによって親子参観日に来るなんて」「未練に決まってる。親権と財産を狙ってるのよ」ざわつきに気づいた英一郎が顔を上げ、私を見つけた。とっさに祥子を背中にかばい、不快そうに眉を寄せる。「牧野絵美(まきの えみ)、子どもも大勢いるんだ。学校で揉め事を起こすな」祥子を守るその手が、やけに目に障った。そこへ学校の先生が書類を手に駆け寄り、小声で急かすように言った。「牧野さん、遥(はるか)ちゃんの死亡診断書のコピーはお持ちでしょうか」一瞬、あたりが水を打ったように静まり返った。英一郎の顔色がさっと変わる。鋭い眼差しで私を睨みつけた。「死亡診断書だって……?」私は彼のほうを見もせず、落ち着いた手つきで書類を先生に差し出した。「できるだけ急いでください。親権を争いに来たんじゃない。娘の学籍の手続きに来ただけ」英一郎は、私の手にある書類を穴が開くほど見つめていた。数秒の沈黙のあと、彼はふっと笑った。「絵美、俺を屈服させるために、そんな嘘まででっちあげるのか」その口調には、確信と、上に立つ者の傲慢さがありありと滲んでいた。俺の気を引こうとしているのが手に取るようにわかる、とでも言いたげな顔だった。「前から言ってるだろ。美佳子と祥子を受け入れさえすれば、いつでも俺のもとに戻ってこられるって。三年も姿を消しておいて、今度は遥を使って脅しか
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