会社の創立記念パーティーの日。私・藤原凛(ふじはら りん)は社長である・宮城駿介(みやぎ しゅんすけ)が、ついに私を副社長に抜擢すると発表してくれるものと期待していた。ところが駿介は、隠していた愛人・白石紗雪(しらいし さゆ)を壇上に上げ、彼女を新しい副社長に任命すると発表した。それだけではない。私が担当していた主力プロジェクトも、すべて彼女に奪われてしまった。「凛さんは会社に欠かせない人材だからこそ、現場にいたほうが力を発揮できる」冷酷な言葉が、駿介の口から放たれた。周囲の社員たちが、一斉に私へ同情や嘲笑の視線を向ける。私は騒ぎもせず、冷静に結婚指輪を外してデスクに置くと、駿介へ社員証を差し出した。「そこまでしなくても大丈夫です。私が辞めて、あなたの愛人に席を譲ります」駿介はまだ知らない。彼がずっと提携を望んでいた上場企業が、すでに私をスカウトしようとしていることを……「どういうつもりだ?」駿介の声には不機嫌さが滲み、眉間に深い皺が刻まれていた。それでも、社員たちの前という手前、表面上は平静を装い、苛立ちを抑えて私に問いかけた。今にも爆発しそうな彼の怒りがひしひしと伝わってきた。場の誰もが、これから始まる修羅場を待ち構えるように、私を嘲笑の目で見つめている。駿介が私に向かって社員証を突き返してきた。声のトーンは少しだけ抑えられている。彼にしてみれば、これが精一杯の譲歩だったのかもしれない。「白石さんに与えたのは形だけの肩書きだ。昔からの知り合いでな。しばらく会社にいてもらうだけだ。そのうち時期を見て、凛さんも副社長に推薦してやるから。いい大人なんだから。子供っぽい意地を張るな」しかし、私の心はすでに冷めきっていた。私は決意を込めて言い返す。「いいえ、宮城社長。私はもう辞めたいだけです」駿介の表情がみるみる曇った。多くの社員の前で公然と面子を潰されるとは夢にも思わなかったのだろう。その様子を見ていた紗雪が、どこかか弱く、譲歩するような口調で割り込んできた。「宮城社長……凛さんは会社にとってなくてはならない方です。そんな方が急にこんな形で辞めるとなったら、周囲のみなさんも内心では思うところがあるはず……私は現場から学び直しますから。彼女にその役職をお譲りください」けれど紗雪の控えめ
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