All Chapters of 琥珀色とフランメ: Chapter 1 - Chapter 2

2 Chapters

第0話

  果たして、その憧れがいつからのものだったのか。 姉は私にないものを全部持っていて、私は何も持っていなかった。 届くはずのないものを見て、それでもただ後ろをついていく。 ただ「すごいね」と言われたくて。 姉は色々なことに挑戦し、できるようになっては捨てていく。 私はそんなことはできなくて、ただただ置いていかれるばかり。 例えば習い事、例えばスポーツ。 姉は一か月くらいでもう別のことに乗り換えていたっけ。 初めはそんな姉と同じように色々なことに挑戦したけど、次第に劣等感が降り積もっていくだけになった。 そんな中、私はドラムを叩くだけになった。 姉が疾うの昔に捨てたもの。 見てもらうと、姉は褒めてくれた。 その唇は、私にとって心地よい言葉を紡いだ。 褒められたくて、熱中した。 そんな姉が、突然天国に旅立った。  頭が真っ白になる。 私は、これから何の為にスティックを握ればいいのか分からなくなった。   ◆  ふう、と一つ息を吐く。 ようやく仕事に区切りが着いて時計を見上げると、既に針は二時を指していた。一つの事に集中すると時間を気にしなくなるのは昔からだ。 一端昼休憩に入ろうと他の職員に声を掛けると、まだ食べてなかったの、なんて驚かれる。七時が定時であることを考えると、今日想定している残りの作業量的にはあまり昼食に時間は費やせない。 ただ、意識してしまうと空腹というのは厄介で、常にお腹を風が通っているかのような感覚に襲われる。仕方ないので、私はオフィスを出て休憩室へとやってきた。 誰もいない一室に、ポットとゴミ箱だけが置いてある。 そこは幾つも白いテーブルが置かれた部屋で、個人的には食べ物を持ち込んで用を済ます、というだけのスペースという認識だ。誰も利用してない際には軽い会
last updateLast Updated : 2026-06-05
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第1話

 なんとか終業時刻ぎりぎりで残りの作業を終わらせ、帰路に着いた。寄り道などせずに真っすぐに、何も考えずとも身体に染み付いた動作が勝手に私を家へと導いていく。電車に乗り、外を眺めていると、見慣れた街の佇まいが連続して飛び去って行くが、最早視線上をただ流れて通ったとしか感じない。 そうして何駅かスルーすると、目的の場所へたどり着く。 退社して四十分程度で帰宅できるのは立派な利点だろう。遅くなったとしてもタクシーを利用すればなんとかなるし、電車を経由する必要があるため終電を逃した者の宿屋として使われることもほとんどない。 住んでいるのはよくある普通のマンションだ。特に高級というわけではないが、防音もしっかりしており、エントランスも立派で明るい。最寄り駅から見上げてもしっかりと視認できることから、まあまあ良いところに住めていると思う。 しかしそんなこと、いまはどうでもよくて。 エントランスの前で、キャリーケースの上に腰掛けながら中空を眺めている少女がいた。制服を着ているところを見るに、中高生だろうか。淡く光る金髪と、人形めいた顔立ちはそこにいるだけで彫刻のような存在感を放っている。 夜中、とまではいかないが、こうして社会人が帰宅する時間に学生がマンションの前で何をしているのだろうとは思う。キャリーケースを持っていることから、面倒臭い件であることはたしかだ。 厄介事に巻き込まれたくはないのだが、自宅マンションの前なので通らないわけにもいかず、出来るだけ気がついていないフリをして彼女の前を通る。万が一、いや億が一、話しかけられない可能性に賭けて。 しかし、「あの」 琥珀色の目は、しっかりと私を見据えている。 そんな期待はするものではないのだ。昔から、嫌な予感だけは当たるのだから。「火原沙綺さんですか」 そのハスキーな声色に、驚かずにはいられなかった。まるで背中に氷水でも流し込まれたのではないかと錯覚する、それくらいの驚き。 沙綺という名前は私の名前だ。このマンションのどこかに違う沙綺という名前の者がいる可能性もなくはないが、それよりも驚いたのは、その声
last updateLast Updated : 2026-06-05
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