All Chapters of クズな夫に捨てられた私を拾ったのは冷徹と噂の若頭だった: Chapter 11 - Chapter 12

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十一話【黒く重たい物】

その言葉を聞いた瞬間、不思議なくらい胸の奥が静かになった。 普通なら怖くてたまらないはずなのに。 九条さんがそう言うと、本当に大丈夫な気がしてしまう。 その時、部屋のドアが開いた。「失礼します」 入ってきたのは黒いスーツ姿の榊さんだった。 いつも通り落ち着いているけれど、空気が張っていた。「あいつら、かなり露骨ですね」 榊さんが苦笑する。「黒蛇の連中、隠す気ありませんよ」「三流の脅しか、それとも余裕アピールか」 九条さんが煙草を揉み消す。「どっちにしろ気に食わねぇな」 榊さんは私を見る。「美月さん、大丈夫ですか」「……はい」 本当は全然大丈夫じゃない。 でも二人を見ていると、不思議と落ち着いてしまう。 すると榊さんが少し真面目な顔になった。「若頭、流石にそろそろ必要かと」「あぁ」 九条さんが短く返す。 何の話だろうと思った瞬間。 九条さんが棚の引き出しを開けた。 中から取り出されたのは黒いケース。 私は嫌な予感がして息を呑む。 カチャ、と音を立ててケースが開かれる。「……っ」 中から取り出された物を見て私の心臓は跳ねた。 ……本物だ。 映画でしか見たことのないような冷たい黒。「九条さん……これ……」「護身用だ」 そう言って見せられたのは小型の拳銃だった。「今後、万が一って事もある」「で、でも……!」 私は思わず後ずさる。「わ、私なんかに無理です……!」「必ず撃てとは言ってねぇ」 九条さんが静かに言う。「ただ持っとけ」 その目は真剣だった。「黒蛇は脅しだけで済む相手じゃねぇ。お前が一人になる可能性もゼロじゃない」 怖い……こんな人の命を簡単に奪える物が目の前にあるなんて……。 ナイフなんかの比じゃない。これは人の命を奪うための道具。「……そんな顔するな」 九条さんがこちらへ来る。「これはお前を怖がらせるためじゃねぇ」 大きな手が私の頭へ触れた。「生き残らせるためだ」 胸が詰まる。 私は小刻みに震えながらケースを見る。「……私、こんなのを人に向けるなんてできません」「出来なくていい。いや、できない方が本来は良いんだ。俺達極道だってこの道に足を踏み入れると自らが決めたやつでも引き金を引く……いや、持つことすらビビるやつなんて大勢居る。それにチャカは持ってるだけで状況
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十二話【普通の生活】

黒蛇の車が去ったあとも部屋には重たい空気が残っていた。 私はソファへ座ったまま、膝の上のケースを見つめる。 中には小型の拳銃。 まだ現実感がない。「……変な感じします」 思わず呟く。 九条さんが煙草を咥えながらこちらを見る。「何がだ」「全部です」 私は苦笑する。「私の知らない世界ばかりで、まるで生まれ変わったみたいです」「……だろうな」 九条さんは短く返す。「普通は一生関わらねぇ世界だ」 その言い方が少し寂しそうに聞こえた。「……九条さんは」 私はケースを閉じながら聞く。「普通の生活に憧れたりしなかったんですか」 九条さんは私の問に沈黙した。 榊さんが空気を読んだように「少し外見てきます」と部屋を出ていく。 静かになったリビングで、九条さんがソファへ深く座り直した。「昔はあったな。普通の学校行って、普通に仕事して、普通に家庭作るみてぇなの」 やっぱり九条さんにもそんな時期があったんだ。「でも無理だろうな「……どうしてですか」「結局、こういう世界でしか生きられねぇ人間もいる。それにこの渡世に足を踏み入れるって事は表の世界からの離脱みたいなもんだ」 その横顔は妙に大人びて見えた。 私はぼんやり九条さんを見つめる。「……でも、九条さんは思ってた極道の人と全然違います」 そう言うと、九条さんが小さく笑った。「どんな想像してた」「もっとこう……すぐ怒鳴って殴る感じというか」「偏見酷ぇな」 珍しく声を出して笑う。 その瞬間だった。 ブブッ――。 再びスマホが震えた。 九条さんが画面を見る。「……椿か。なんだ」『九条、黒蛇のやつら明日にでも本格的に動くかも』 空気が変わる。「根拠は」『さっき港側で人動かしてた。しかも結構な人数』 九条さんの目が細くなる。『でも殆どの人はこっちの世界の人間とは思えない見た目と雰囲気だった。多分高額債務者達か逆らえない半グレ連中ね」「……なるほどな」『美月ちゃんは一人にしない方がいいよ』「分かってる」 電話が切れる。 私は嫌な予感に胸がざわついた。 九条さんが煙草を揉み消す。「黒蛇が何か仕掛けてくる可能性がある」 怖いけど今までみたいに、ただ震えているだけなのも嫌だった。「……私、何かできますか」 九条さんがこちらを見る。「何かって?」「
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