神崎恭介(かんざき きょうすけ)と付き合って7年も経つのに、私・篠原葵(しのはら あおい)は一度も彼からプロポーズをされていない。それどころか、ある結婚式に出席したとき、新婦・吉川莉奈(よしかわ りな)に腕を絡ませて笑っている新郎が、彼だったのだ。「本物の新郎が式直前に逃げ出したんだよ。でも式は止められないから、俺が莉奈の手助けをしただけだ」彼は必死になって言い訳をした。それでも、新婦を見つめる時の嬉しそうな様子は隠しきれていなかった。「ほら、俺たちの式の練習になっただろ?お前も最高の結婚式にしたいって言ってたじゃないか」確かにそうだ。私はいつか挙げる結婚式のために、5年間もかけて計画を練り上げてきた。けれど今、彼がその身を置いているのは、私と歩むはずだった誓いの場ではない。莉奈の新郎として、彼女の隣に立っている。私の結婚式は、もう絶対に幸せなものにはならない。会場は大盛り上がりだ。まわりの招待客たちが楽しそうにグラスを持ち上げる。「本当に恭介さんがいて助かったよ。そうでなきゃどうしようもなかったね」「でもさ、彼と莉奈さんが並ぶとお似合いじゃないか。高校時代、有名な美男美女カップルだっただけのことはあるな」噂話をしていた招待客の一人に、隣の人が小さくツッコミを入れた。「声がでかいよ、いまの彼女が同じ席にいるんだから……」相手は慌てて口を塞ぎ、声を潜めた。「え、彼女も来ているのか。よくやるよな」「でもあの上機嫌な笑顔は、絶対に莉奈さんとまたやり直したいって表情だよ。あれが演技に見えるか?」ひそひそ話が、どうしても私の耳に滑り込んでくる。恭介と一緒に7年歩んできたけれど、私にはプロポーズすらしたことがない。なのに今、他の女の子の手をとって、永遠を誓い合っている。私は手元にあるお茶をすする。もうかなり前に冷めきったお茶は、胸が痛くなるほど苦い。儀式自体が終幕に向かい、いよいよ挨拶回りの時間が始まる。人だかりがざわつき、彼らを見上げる方向に目を向けてみた。やはり。恭介は自分から進んで、莉奈から空のグラスを貰おうとしていた。「残りは俺が飲んであげるよ」という風に、優しくグラスを奪ったのだ。その光景を見た親族や友人たちが、ひゅうひゅうと声を上げて二人を囃し立てた。莉奈は恥
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