運命の人は、この世にふたりいるらしい。ひとりめで人を愛することと失うつらさを知ったのちに、ふたりめで永遠の愛を知るという。 だがそんなのは嘘っぱちだ。だって俺の場合、後にも先にも進まないのだから。 実らない恋愛だとわかっているのに、どうして諦めきれないのだろう。手を伸ばせば届きそうなのに、寸前のところで相手と俺の未来に不安を覚えた瞬間、思いっきり躊躇して固まったように動けなくなってしまう。 だから彼は、俺の手の届かない遠くへ行ってしまった。 俺が経営する病院に急患を持ち込んだ、同級生の桃瀬とその患者が、仲良く並んで挨拶してくれた。「周防悪かったな。おまえの病院は小児科なのに、大人の急患を持ち込んで」「本当にありがとうございました。死にそうなくらい具合が悪かったのに、一気に治せちゃうなんて、すごいです!」 目と目を合わせてほほ笑み合いながら俺に告げる、ふたりの仲のよさで、なるようになったと安堵した。 俺は彼らにつられるように瞳を細め、ニッコリと笑い返してやる。まさか何十年前の恋が叶った瞬間に、自分が立ち合うことになろうとは、夢にも思わなかった。(あ、でもなんとなくだけど、当たり前のような奇跡にも感じる。桃瀬が心の奥底で、無意識にずっと彼を想っていて、彼に似たような相手ばかりを恋人にしていた、そんな気がする) だから俺がどんなに想っても、アイツの好みじゃないせいで親友どまり。どんなに好きになっても、けしてこの想いは届かない。 病院を去っていくふたりの後ろ姿に、そっと手を伸ばす。もう何度目だろうか。溢れ出しそうな気持ちをぐっと噛み殺して、桃瀬が他の誰かと歩いていく姿を、こうやって眺めるのは。 燃えるような夕焼けの中、影が長く伸びる。あっちは仲良くふたり分の影が伸びて重なり、俺の背中には寂しくひとり分の影。それがまるで、未来の自分の姿であるように思えてならなかった。
Terakhir Diperbarui : 2026-06-22 Baca selengkapnya