Semua Bab 恋わずらいの小児科医、ハレンチな駄犬に執着されています: Bab 11 - Bab 19

19 Bab

Love too late:遅すぎた恋心5

「すっ、すおおうぅ!?」 桃瀬は素っ頓狂な声をあげ、ビックリついでに、勢いよくベッドから派手に転がり落ちた。「なななんで、おまえとこんな……」 「なんでって酷い。自分から押し倒して襲っておいてー」 「そんな!? 友達に対してこんなこと、するわけがないだろ」 嘘みたいな現実を、どうしても受け入れたくないのか、桃瀬は俺に向かって酷いことを言いながら頭を抱えて、首をぶんぶんと横に振りまくった。「友達、ね。その友達に思いっきり手を出したのは、どこの誰だ?」 着ていたシャツを脱ぎ捨て、付けられたキスマークを、これでもかと見せつけてやる。「うわっ、ゴメン……その、なんか夢の中の出来事みたいな感じで」 「ももちんがしあわせな夢の中でも、俺の中ではリアルなんだよー。しかもなんなの、あの拙いキスは?」 「ええっ!? キスしたのか?」 薄暗がりの中でも、赤面した桃瀬がわかってしまった。(そんなかわいい顔するなよ、もっと欲しくなってしまうじゃないか)「……そうだよ。下手っクソなキスされた上に、この場に押し倒されてさ。あんなんじゃ恋人ができても、みんな逃げるっちゅーの」 見る間に落ち込み、俯いている桃瀬の顎を掴んで、強引に上向かせた。「こうやって、感じさせなきゃダメなんだ」(俺からの最初で最後のキス、受け取ってくれ――) 無防備な桃瀬の唇に優しくキスをして、一瞬離れてから角度を変え、するりと舌を滑り込ませた。「うっ、ふぅ……」 舌先を使って口内を犯す俺に、なんども躰をビクつかせて、甘い声をあげる桃瀬。「……っと、レクチャー終了!! もっと自分を磨けよな」 言いながら大きく振りかぶって、思いっきり桃瀬の頭を叩いてやる。「いって! 周防、酔っ払ってんだろ」(ああ酔ってるさ、おまえにな……)「なんなの、その口の利き方。酔っ払ってたら、ももちんをおぶって、ここに帰って来られないでしょ」 「あ……ごめん」 「罰としてそこのコンビニ行って、ビール買ってきてよ。俺、全然呑めてないんだから」 リビングに置いてある、桃瀬の服を手渡した。「桃瀬が帰って来たらシャワーを浴びて、失恋パーティしよう」 「え? 周防も失恋したのか?」 「恋人よりも、実習の患者さんを優先しちゃうせいかな。だからキスがうまくても、振られちゃうわけ」 肩をすくめて桃瀬を見つめ
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-02
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Love too late:おとしもの

桃瀬が先に大学を卒業、念願の出版社に入社し、営業マンとして活躍している最中、俺は医師免許を無事に取得し、六年間の大学生活に別れを告げ、数年間研修医として医大に勤めたあと、親父が経営していた内科の病院をアレルギー専門の小児科医院に転換し、小児科医として頑張っていた。 俺が忙しくしているところに、桃瀬は営業の途中で急患を持ち込んだりして、相変わらずのお節介焼きなことをする。 呆れながらも対応する俺に、愛しの友人はとびきりの笑顔をくれた。それを見られるだけで充分だと思った。 だが今回の急患は、予想外の人物だった。桃瀬の初恋の人だったのだから。 そんなふたりが付き合いだして、仲良く同棲していると話を聞いた。それから数ヶ月後のある日。「……わるぃ、周防。往診に来てくれないか?」 「でたよ、またこの時期なの! 寝込む前に病院に来いって、いつも言ってるでしょ!」 診察中に、いきなり電話がかかってきた。お盆から十月にかけての時期は、出版社はなにかと忙しいらしい。年末やら正月の調整でバタバタしていて、桃瀬はいつも体調を崩す。それでもお盆前は、なんとか病院に顔を出して、周防スペシャルという名の栄養たっぷりの注射をしてあげたから、このときは大丈夫だった。「ゲホッ! 病院に顔を出す暇も作れなくってさ。気がついたら、ゲホゲホ……くっ、風邪引いちまった」 ところどころ咳きこみながら、すっごくつらそうに喋る。「悪いけど午前中は診察があるから、そっちに行くのは昼からになるよ。熱は高いの?」 今日がちょうど土曜でよかった。平日なら夜になってしまうから。「熱はそれほど、高くないんだけど。ゲホゲホッ! 咳がつらくて寝ていられない」 「胸から上を少し高くして横になれば、少しは咳が治まるからやってみて。加湿を忘れずに、大人しく待ってること!」 さっさと桃瀬に要件を告げて、電話を切った。 桃瀬と一緒に暮らしている涼一ってコは、なにをやってるんだか。無理をするなって、注意くらいできるだろうに! 内心ムカつきながら、待っているであろう患者さんの名前を呼び、診察をはじめる。今日も一日、忙しくなりそうだ。
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-03
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Love too late:おとしもの2

慌てて病院を閉め、昼ご飯も食べずに桃瀬の家に向かった。「遅くなって悪かったね。本当はもっと早く来たかったんだけど季節柄、患者さんが立て込んじゃって」 「いえ、こちらこそ。お忙しいところ、ありがとうございます」 桃瀬の恋人の涼一くんは、にこやかに対応してから、俺を寝室に案内してくれる。ベッドで寝ている桃瀬の顔を覗き込んでみたら、ビックリするほどやつれていた。「おい、こらっ! 不良患者め。なんだその、ゾンビみたいな顔は」 「……あ、周防。ゲホゲホッ! 来てくれてありがとな……」 「麗しの美貌が台無しじゃないのさ。さっさとお尻を出しなさい、周防スペシャルをぶち込んでやるからー」 足元に置いたカバンから、聴診器をいそいそ取り出して、桃瀬の額に当ててやる。「お尻はヤダ……ゴホゴホッ。もう変なこと言って、俺の元気度を測るのやめてくれよ。涼一がおまえのことを、不振な目で見てるぞ、ゴホゴホッ!」 桃瀬が頭をあげて、寝室の隅っこにいる恋人に視線を飛ばした。その視線に応えるように、涼一くんが小声で話し出す。「あの、えっと、周防さんのことは信頼していますので、安心してください。僕がかかったインフルエンザを、瞬く間に楽にしてくれましたし……」(――なにをのん気なこと言ってんだ、コイツ) その言葉にイライラして、涼一くんを睨んでしまった。「こんなになったももちんも悪いけど、涼一くんは傍で見ていて、どうして無理させたの?」 イライラついでに、文句を言ってやる。「周防、それは俺が――」 それなのに涼一くんを擁護しようと、桃瀬がすかさず口を開いた。俺の苛立ちに余計、拍車がかかる。「患者は黙ってなさい! どうなの涼一くん?」 「無理はしないようにって、郁也さんには声をかけていました。だけど――」(――だけど、だと?)「ふざけんな! いいわけすんなよ!」 俺の怒鳴り声に、涼一くんは肩を震わせてビクつく。「俺にとっても桃瀬は、大事なヤツなんだ。この時期は、毎年ぶっ倒れているからな。小まめに連絡とって、注意を促していたさ。だけどな俺の言うことよりも、アンタの言うことのほうが、きちんと聞くだろう? 恋人なんだし……」 悔しいが、ただの友達じゃなにもできない。恋人の言うことなら、桃瀬は喜んできくに決まってる。 自分の怒りをやり過ごすべく、奥歯をギリッと噛み
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-04
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Love too late:おとしもの3

怯える桃瀬に注射をして、これまでどんな生活をしていたかを、根掘り葉掘り尋問してる最中に、息を引き取るように眠りについてくれた。「あっあの、周防さん、お茶でもどうですか?」 あどけなく寝ている顔を見てから頭を優しく撫でて、ゆっくりと立ち上がる俺を見た涼一くんが、弱々しい声で話しかけた。「ごめんねー。これから済ませなきゃいけない用事があるから帰るよ」 まくし立てるように告げてやる。長居は無用――涼一くんにいらない嫉妬をして、口撃しそうな自分がいるからだった。 なにか言いたげな面持ちの涼一くんの横を、さっさと通り過ぎ、急ぎ足で玄関に向かう。そして靴を履き、くるりと後ろを振り返った。「じゃあね」 手短に挨拶をし、素早く出て行こうとしたら、いきなり腕を掴まれた。「……なに?」 掴まれた腕と涼一くんの顔を交互に見やると、さらにぎゅっと力を入れて握られた。「えっと指示をください。この後、どうすればいいですか?」 その様子は、見るからに必死って感じだった。そんなに一生懸命になって、俺となんの話がしたいんだか。「なーんだ。ももちんが寝てる間に、涼一くんから迫られるのかと思ったのにさ。すっごく残念」 緊張を解くべく、ありえないことを言ってやると、涼一くんは首を横に何度も振った。「そんな大胆なこと、しませんしできません!」 「そうなんだ、へぇ」 いい感じの拒否っぷりだね。「それに周防さんは郁也さんのこと、す――」 言いかけて口をパクパクしてから、きゅっと引き結ぶ。俺を見る瞳はせわしなく動き、顔にはヤバイとしっかり書いてある。「なに、どうしたの?」 「すみませんっ。その周防さんは郁也さんのこと、すっごく大事にしているので、見習わないといけないなと思ったんです」 さすがは桃瀬が大事に育てている小説家、うまいこと言葉を誤魔化してくれたね。だけどバレているのならしょうがないか、認めてやるよ。「……大事にするさ、好きなんだから」 「周防さん――」(そんな憐れんだ目で見るな。同情なんて、まっぴらゴメンだ) 俺が瞼を伏せると、涼一くんは掴んでいる腕を恐るおそるといった感じで、やっと外した。解放された反動で、握りしめてるカバンの持ち手に、意味なく力が入る。「涼一くん、僕の男に手を出すな、とか言わないの?」 俺を慮る涼一くんの態度にまたイラついて、
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-05
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Love too late:おとしもの4

*** 桃瀬の家に行く直前は、ふたりの仲の良さを見せつけられるんだろうなと、どこか躊躇した気持ちがあったけど、今は清々しい気持ちに満たされていた。(今までこんなに、完敗って思ったことがなかったしな。涼一くんになら安心して、桃瀬をまかせられる。うん――) はじめは頼りなさを感じ、こんなヤツには桃瀬を渡せないって、あからさまにイライラした。そんな態度の悪い俺を見ているのに、涼一くんはなんとかして俺と仲良くなろうと、いろいろ行動する姿に驚かされつつ、胸を打たれてしまった。 しかも玄関先で俺に抱きついた涼一くんを桃瀬が見たら、いったいどうなっていたのか――考えただけで、からかいのネタになる。 笑みを浮かべて、澄んだ秋空を眺めた。底抜けに明るい青色が、差し込むように目に眩しく映る。これくらい、俺の心も綺麗だったらなと思わずにはいられない。 そんなことをしんみり思っていたら、ポケットに入っているスマホが震えた。画面を確認すると、さっきまで死んだように寝ていた桃瀬からだった。(おや、思っていたよりも目覚めが早いな。注射にもっと、眠り薬を盛っておけば良かったか。まったく大人しく寝ていればいいのに、変に気を遣うんだから) 妙に律儀な親友のことをやれやれと思いつつ、スマホの画面をすぐにタップした。「もしもーし。もうお目覚めとは、早すぎるんじゃないの。ゆっくり休みなさいって」 若干呆れながらも、ぼやくように言ってやった。「悪かったな周防、迷惑かけてさ。昼からオフだったろ?」 「オフってわけでも、なかったけどね」 「おまえこそ、ちゃんと休みをとってるのか? 疲れた顔をしてたし」 こっちの心配をする言葉に、胸がじわりと熱くなる。耳のすぐ傍で響く、大好きな桃瀬の声が心地いい。 嬉しくて口元に、笑みが浮かんでしまった。「バカにしないでよ。誰かさんと違って、俺はきちんと休息しているってば」 「そうか。なんかイラついていたから、疲れが溜まってるのかと思ったんだが」 それって、涼一くんに八つ当たりしたことだろう。歩きながら視線を伏せて、小さいため息をついた。「イラつきもするさ。あんな桃瀬の姿、俺は見たくなかったし。涼一くんは俺を見て、おどおどしているし」 「怒ってるおまえは、俺だって怖いって。普段は仏のような優しい顔をしてるから、余計におっかない」 ――そ
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-06
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Love too late:押し付けられるキモチ

その日の夜は計画どおりに、睡眠薬を太郎に手渡し、無事に就寝させることに成功した。 しかし安心しきって寝ていたベッドの中で、妙な違和感を覚えた朝方、ふと目が覚めてしまった。背後に人の気配がする。 そのぬくもりをじわじわと背中に感じて、たらりと冷や汗が流れた。しかも寝息まで聞こえる、距離にいるっていったい……。 首を少しだけ動かし、恐るおそる背後を窺うと、予想どおり太郎がいて、俺の肩口に頬を寄せているだけじゃなく、すごくしあわせそうな顔で、すやすやと寝ているではないか!(――コイツ、いつの間に……) 俺の貴重なサンデーモーニングが、ぜーんぶ台無しじゃないか、この野郎! くっついている体を、素早く引き離そうとした瞬間、「わんっ!」 太郎は目を閉じてる状態で口元に笑みを浮かべ、俺の耳元で犬のように鳴いた。「起きていたのか。さっさと出て行ってくれ。俺の休暇である日曜を、わざわざ奪い取ってくれるな!」 「散歩に連れて行ってよタケシ先生。朝の新鮮な空気は、すっげー気持ちがいいんだぜ」 散歩って――マジで犬化しているのかコイツ。「散歩なら、ひとりで行って来い。俺はまだ寝ていたい」 「わかった。ひとりで行って来るけど、途中で発作が起きたら、死ぬかもな俺」 その言葉に、奥歯をぎゅっと噛みしめる。面倒くさい犬を拾ってしまった――って、ちょっと待て。冷静になれ俺。一緒に寝ていたことに、気をとられすぎていた。「危うく散歩を許したが、おまえは安静にしなきゃならないんだった。ゆえに外に出るの、絶対に禁止な」 「はい、そーですかと言うことを聞く、素直な犬じゃないんでね。勝手に行かせてもらいますよ」 止める俺の手から逃れるべく、太郎は素早く身を翻し、飛び出すように寝室を出て行った。「こらっ、待ちやがれ!!」 どうして朝から青筋を立てて、これでもかと怒鳴り声をあげなきゃならないんだ。絶対に体に良くない。 すたすた玄関に向かって歩く、太郎の首根っこをなんとか掴み、強引に引き止めることに成功した。「わん♪」 ぜーぜー息を切らして見上げる俺に、太郎はくるりと顔だけ振り向いて、ニッコリと満面の笑みを浮かべる。「早く着替えてきなよ。一緒に行こうぜ! タケシ先生に見せたいものがあるんだ」 ……おいおい、なんで一緒に行く設定になってんだよ。「行かないってば」
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-07
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Love too late:押し付けられるキモチ2

渋々着替えて行き着いた先は、行ったことのある公園の高台だった。「秋は夕暮れって、清少納言が言ってたろ。だけど俺は、朝焼けだって思うんだ」 まるで自分が清少納言から直接聞いたように語りだしたが、眼下を望む町並みは、夜明け前の見慣れた景色があるだけで、特に変った様子もない。「これのどこが、後悔させないものなんだよ。夜景の方が、もっと綺麗だったぞ」 「もう少し……」 空がどんどん白みはじめ、徐々に太陽の光が見えはじめたとき、太郎が俺の右手をぎゅっと握りしめた。「おい、コラ――」 眉根を寄せ、苦情を言おうとした瞬間、隣で嬉しそうに瞳を細めて笑みを浮かべ、俺の顔を見てから顎で景色を指す。「黙って見てなって。日の出とともに侵食していく太陽の赤い色が、夕日の赤い色とは全然違う、透明感のある綺麗な色なんだよ。なんつーか一日の応援を、町に降り注いでるって感じなんだ」 確かに、見慣れた景色が言われたとおりに、澄んだ緋色に染まっていく。最初から真っ赤ではなく、じわじわと赤く染まっていく様子を、握りしめられた手を振り解くのを忘れ、じっと見入ってしまった。(しかし朝日って、こんなに眩しかっただろうか? 体に光がグサグサッと深くつき刺さってくる感じがする) 目にする景色に感動しつつも、ちゃっかり自分の年齢を地味に考えさせられた。心から清々しく思えないって、本当に悲しすぎる。「な? すげー綺麗な景色だろ」 「ああ、すげーすげー」 「なんだよ、その棒読みみたいな口調。せっかくこの感動を、一緒に分かち合いたかったのに!」 「赤に対する、認識の違いだろうな。いい加減、この手を放してくれ」 目の前に持ち上げて、わざわざ見せたのだが、放すどころかさらに握りこんでくる始末。「タケシ先生にとっての赤ってやっぱ、救急車の警光灯の色とか赤十字の色だから、イヤな感じなのか?」 「まぁ仕事柄、医療従事者として赤は、緊急の治療を要する色だけどね。個人的には、嫌な感じではないけど」 災害や大事故で大勢の患者が出た際、治療の優先順位をつけるタグを付ける。黒・赤・黄・緑の色で、それぞれ振り分けられる仕組みになっている。 これを踏まえて太郎の病状を考慮した場合、きっと黄色に分類されるだろう。今のところ俺の見立てからは、そのレベルでしか測れない。病院に着いてから軽く診察したとき、ほかに
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-08
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Love too late:防戦

くつろぐことのできる自宅にいるのに、まったく気が抜けない。ギラギラした目で見つめてくる太郎の視線が、俺を欲しいと言ってるからなんだけど。 とにかく今夜は安心して寝られるように、遅めに薬を渡した。目の前で薬を飲み干したのを確認し、布団に入ってくるなとしつこく念押しして、一日の疲れをこれでもかと引きずりながら、ベッドに寝っ転がった。「どうやって頑固な太郎に、治療を受けさせればいいんだか」 額に手をやり、いろいろ考えても思いつかない。医者として、俺の中にある使命感――早めに手を打ったほうが、太郎のためにもいいはず。それだけで生存率が、ぐんと上がる。「いっそのこと、この身を提供――って、無理無理っ!」 そこまでしてやる、義理もなければ愛情もない。迷案ですら思いつかなくて、軽い頭痛を抱えながら、なんとか就寝した。寝入りばながこんなだったので、疲れが相当溜まっていたのだろう。目覚まし時計が鳴るまで、しっかりと眠ることができたのに。「ん~、目覚ましマジうっせー……」 背中に伝わってくる、あたたかい太郎の存在。目覚ましの音を綺麗にかき消す声にショックを受けて、一瞬で全身を硬直させた。「コラッ! なんでまた、勝手に寝室に入り込んでるんだよ!」(太郎になにもされてないのが、せめてもの救いだ) 慌てて起きあがり、自分の肩を抱きながらベッドの隅に移動して、しっかりと距離をとる。「俺の定位置っていうか、居場所みたいな感じだから」 顔を思いっきり引きつらせる俺に、太郎はじりじり這いつくばって、にじり寄ってきた。「ふざけんな! なにが定位置だ……」 さぁここで運命の選択だ。やってくる太郎に――。 1ぶん殴る 2引っ叩く 3蹴っ飛ばす 4黙って押し倒される まず4はあり得ない、阻止することが優先だから。 とりあえず手っ取り早く右手を振りかぶって、思いきりぶん殴ろうとしたら、簡単に腕をとられてしまい、ぐいっと体を引き寄せられてしまった。振り上げた腕の勢いも見事に加算されていたので、拒否る間もなく太郎の体に向かって、バカみたいにみずから倒れこんでしまう。 ――ヤバイっ!! 肩をすくめながらぎゅっと両目をつぶったとき、右目尻に柔らかいなにかが、そっと触れた。そして耳に聞こえる、クスクスという笑い声……完全にバカにされている。「おはよ、タケシ先生。
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-09
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Love too late:防戦2

***「えー、今週のカンファレンスを実施します。季節柄、これからインフルエンザの予防接種者と患者が増えるので、それぞれ物品の確認やこまめな補充と――」 毎週月曜にやっている、カンファレンスという名の医療会議。働いている看護師三名に伝えつつ、それぞれの意見を持ち寄り、病気の予防対策や季節によって変わる患者に対する接し方など、病院の運営を円滑に行うべく話し合いをする。「あと病院の前で行き倒れていた、自然気胸の男性患者が一名、入院しています。治療は安静だけなんだけど、じっとしていない人なので、見かけたら注意を促してください。以上!」 「珍しいですね、入院させるなんて。名前はなんていうんですか?」 年配の看護師に不思議顔で訊ねられ、ちょっとだけ、たじろいでしまった。「見た感じ、俺よりも若いのは確実なんだけどね。名前や年齢を明かさないので、太郎という仮の名前をつけていますが、誰か名前を聞き出してほしいかなぁと……」 苦笑いをしながら告げると、目の前にいる看護師たちは信じられないといった表情を、それぞれ浮かべた。「子どもに人気のある周防先生がそんなに手こずるなんて、すっごく珍しいです。入院させたことといい、なにかあったんですか?」 「……あ、いや。特になにもないんだ。あの年頃はどうも、なにを考えているのかわからなくて、手を焼いちゃってるの」(俺自身になにかあったら、今頃ここにはいないと思われる)「だったら周防先生が学生になった気分で、気軽に接してみればいいんじゃないですか?」 学生時代の周防先生見てみたい! なぁんて声が上がってしまったが――。「もう無理だわ。心はくたびれたオッサンだから、若返る気力もなーい」 事実、朝からくたびれ果てて、食欲もなかった。 いつもより賑やかに看護師たちと話し合い、カンファレンスを終了してから、午前中の診察を開始する。 ふと視線を感じ、診察室をぐるっと見渡すと、仕切ってあるカーテンに隠れて、太郎がこっそりと俺を見ていた。「……太郎、ちゃんと安静にしてろよ」 思わず声をかけてやると、苦笑いしながら一言。「タケシ先生の喋り方、どうしてオネェみたいにしてんの? すっげぇ似合わない」 「このままだと、子どもが怯えるからだ。しょうがないだろ」 「変な気遣いしないで、そのまま接したらいいのに。笑った顔が超かわいいんだ
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-10
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