「来たのか」 そう言われて、俺はこめかみを掻く。 偉そうなことを言っておきながら遅刻なんて、フィロメニアを失望させるところだった。 「ごめん、寝坊した。ちょっと道も混んでてさぁ。苦労したよ」 適当な言い訳を思いついたまま口に出すと、視界の横に目を見開いたマリエッタが見える。 だがフィロメニアはそんなことには関心も示さない。 代わりに、どこか懇願するような顔で聞いてきた。「私といれば、これからも同じようなことが……いや、これ以上の苦労が待っているぞ。それでも――」「――だからこそ」 そんな質問、俺の答えなんてわかっているだろうに。 けれど、思いは言葉にすることも大事なのだ。 名を呼べる距離にいても、手を握れる距離にいても、それは変わらない。 だから、俺はこの先も続くこの世界に対して言う。 「俺はそばにいるよ。フィロメニア」 返ってきたのは、零れるような笑顔と、名を呼ぶ声だった。 「ならば来い――ウィナ!」「あいよ!」 勢いよく答えると、腕輪が金属音を立てて変形する。そして、俺の体は風のような光に包まれた。 一歩ずつ階段を下る度、体に力が漲ってくる。 霊獣の姿となった俺を見て、決闘場はどよめきに包まれた。 俺は階段を下った先にいた知った顔へ笑いかける。 シャノンは姿が変化した俺に戸惑いながらも、涙でぐちゃぐちゃになった顔で近寄ってきた。 「ウィナ……ちゃん? 大丈夫なの……?」「シャノンこそめっちゃ目腫れてるけど大丈夫? ほい、ハンカチ。鼻水はかまな――かむなっつの!」 ズビーッと盛大に鼻水を噛んだシャノンに抗議すると、「ご、ごめん、洗って返すから……!」とか言っている。 当たり前だろ! 呆れているとそ
Última atualização : 2026-06-28 Ler mais