All Chapters of TS:悪役令嬢のモブメイドの俺が霊獣になった件: Chapter 11 - Chapter 20

24 Chapters

第11話 去り際もイケメンだ

「学園はどうだ? フィロメニア」「まだ二日目ですが今のところ不自由さは感じません」  次の日、本格的な学園生活が始まった二日目の放課後、フィロメニアの部屋をある人物が尋ねていた。 青色の髪が混じった金髪を長く伸ばした、つり目気味の美男子。 髪も顔もフィロメニアとよく似ている。 それもそのはず。 俺たちとテーブルを挟んで座る彼の名は【ファブリス・ノア・ラウィーリア】。 フィロメニアのひとつ年上の実兄だ。  そして、ついでに言うと攻略対象の一人でもある。  乙女ゲーでもキザでプライドの高いモテ男という設定だが、公爵家の次期当主である自分に媚びを売らないヒロインに対し、興味を持つという流れで恋愛に発展していくキャラクターだ。 ゲーム中ではモテ男にしては珍しく、ヒロインに対し熱心にアタックを仕掛けてくる根は素直な性格だった。 けれど、いかんせんこれまでに努力せずモテてしまっていたせいで不器用でヘンテコな誘い方しかできず、やたらと学園中で顔を合わせる半分ストーカーみたいなヤツである。 けど、今の俺から見たファブリスの評価は少し変わっていた。 俺もお屋敷で働いていたのだから、ファブリスと会話したことは一度や二度じゃない。  お屋敷では実家ということもあって稚拙な部分が隠せていないものの、割と親切な性格だったと思う。『ウィナフレッド。どうだ? 遠方から取り寄せた希少な毛皮を使った外套だ。似合うか?』『わぁ、あったかそう! よかったですね。ファブリス様』『あ、ああ……』 という風に気軽に声をかけてくれていたし。『ウィナフレッド。手が空いているなら私に茶を淹れろ』『畏まりました』『言っておくが私は茶にはうるさいぞ。砂糖など――』『はい。ミルクでお出ししたものに砂糖が三つ、でしたよね。メイド長から聞いています』『あ、ああ、それで……いい』 こんな感じでフィロメ
last updateLast Updated : 2026-06-26
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第12話 声は出さないでいいんだわ

 フィロメニアが無事に入学して、一週間が経った。 その間に予想していたような神殿関連の問題はなんの音沙汰もない。 平和すぎる。 いや、それでいいんだけど、いかんせん悪役令嬢という特大の問題抱えている身からすると妙に感じてしまう。  そう思っていた最中、問題は内側から噴出した。 「パーティに行かない!?」 俺の絶叫が広い部屋で反響する。 ベッドに腰かけたフィロメニアが、目を逸らして小さく頷いた。 「ああ……」「や……駄目だろ。殿下主催のパーティなのに、婚約者のフィロメニアが行かないのは」 誘ってくれたクレイヴに対して失礼という面もあるけれど、そもそも彼が主催するパーティに未来の正妻がいないというのはもはや異様と言っていい。 正式に結婚していないとはいえ、クレイヴとフィロメニアはすでに互いのパートナーだ。  二人の仲が悪い、なんて見方をされようものなら、王家と公爵家の仲どころか国政にも影響してくるだろう。フィロメニアがそれを理解していないはずがない。  だというのに――。 「だからこそだ。私は殿下のお飾りではない」「フィロメニアなら誰もお飾りだなんて思わないって! どうしたんだよ、いきなり~……」 突然、我儘を言い出した主に俺はこめかみを掻く。 これが今に始まったことでないならわかるが、これまでフィロメニアと殿下の関係は悪くなかったはずだ。  今日だって一緒に歩いていたっていうのに、何があったんだろう? 俺はフィロメニアの前に屈んで、ぎゅっと握りしめたその手を取る。「なぁ、学園で何かあったか?」  聞くと、フィロメニアは首を横に振った。「フィロメニアは才能があって、努力もできて、みんなが尊敬してる。本当はそんな理由じゃないんだろ? 俺にも話せないのか?」 ゆっくりと語り掛けるが、目が合
last updateLast Updated : 2026-06-26
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第13話 何も考えていなかったわけかい

『ひとつ聞いてもいいかい? 我が君』「なに?」  パーティ会場から帰り道で、セファーが問いかけてくる。『我々の目的はあくまで君の主人の死を回避することなんだろう?』『そう言っただろ』  するとセファーは燐光をまき散らしながら俺の目の前に飛んできた。『なら、なぜあのヒロインを王太子と恋仲にさせる手伝いをしたんだい?』 ああ、なんだそんなことか、と俺はこめかみを掻く。  単純な話だ。俺はあんな風に落ち込んでいるシャノンを見過ごすなんてできない。 例の乙女ゲーをやっていた俺からすれば、あの子は最初に自分を投影した女の子で、そして幸せになるべき存在だと今でも思ってる。 だから手を差し伸べた。 ……。 いや、つまり、その……。『えっと……』『思考が漏れているよ。それに汗もすごいねぇ。体温は正常なようだが』『う、うん……』『もしかして君――』 やめてほしい。思考だけとはいえ、言葉にすればするほど汗が止まらなくなる。『――何も考えていなかったわけかい』 気がつけば俺はさっきのシャノンと同じベンチに、同じような姿勢で座っていた。『いやはや、本当に愚かだねぇ! やってしまったねぇ!』 だはは、と人の膝の上で腹を抱えて大爆笑している小さな神様を見下ろしつつ、俺はため息をつく。  べ、別に何も考えていなかったわけじゃない……。 あのイベントはどの攻略対象ルートでも共通であり、序盤も序盤。 パーティに参加したからってクレイヴも「俺はこの子と結婚するぞ!」とはならないはずなのだ。 ……たぶん。 『思考を垂れ流すのはともかく、無言で頭を抱えて体を揺らすのはやめたまえ。この暗がりじゃ怪異の類にしか見えない
last updateLast Updated : 2026-06-27
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第14話 それはきっと益虫だな

「と、いうことで今日からガチでシャノンを邪魔しようかと思うんだが」 俺は黒い髪を風になびかせながらそう話し始める。 他人には独り言を言っているように見えるだろうけど、目の前には空中に座り込んだセファーがいた。 『それはいいがこんな屋根上まで登ってきた意味はあるのかい?』「真正面から入れないんだからしょうがないだろ。それにここなら喋ってても怪しまれないし」 訝しげに聞かれ、俺は答えながら周囲を見回す。  ここは教室棟の屋根上だ。 この建物は使用人出入り禁止だが、これからすることを考えればシャノンの近くにいる必要がある。 『ここまで壁の突起を伝って登ってきた君の姿を、君の主人に見せてあげたいねぇ。巨大な虫なんじゃないかと我が目を疑ったよ』「それはきっと益虫だな。あとこの世界、魔物以外に虫っぽいのいないから」『じゃあ魔物だったんだろうねぇ』 呆れ顔で皮肉るセファーを無視して、俺は本題に入った。「とりあえず、他の攻略対象とシャノンが会うイベントを阻止することにする」『ふむ』『クレイヴのルートはもう仕方ない。けどジルベール、セルジュ、ファブリスの三人とは、そもそも接点を持たせなきゃフィロメニアが暴走する確率はぐっと下がると思うんだ』『火種は少ない方がいい。それは否定できないねぇ』 セファーはゆっくりと頷く。 先を促されていると感じて俺は話を続けた。 「まずジルベール。あのオラオラ系はシャノンが普通の食堂とは違ってお金のかかる食堂――特別食堂でランチをしてるときに声をかけてくる。これが今のところ一番邪魔しやすいと思うんだ」『つまりヒロインが二度とそこでランチできないようにしてやると』「言い方」『悪役令嬢のメイドなのだからそれくらいのノリでいいと思うんだが』 確かにゲーム的には一番外道に近いキャラのそばに俺はいる。 けれどそれを変えるため、ここにいるのだ。  ……まぁ他人の恋愛を阻
last updateLast Updated : 2026-06-27
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第15話 ネバーギブアップ!

『さっきの件、君の機転は見事だった。周囲の環境と君自身の力を理解したうえで的確に行動し、テラスに鳥を落とすという状況を作ることに成功した』「ど、どうも?」 部屋に入るなり褒められて、俺は不思議に思いつつも称賛を受け入れる。 けれどセファーは難しい顔で首を横に振った。 『だが失敗だ』「えぇ!? なんで!」 思いがけない言葉に俺は仰天する。  なんで? 運命の出会いなんか吹っ飛ばすほどのハプニングを作ってみせたのに。『君は鳥が落ちればヒロインはそれを避けると踏んだのだろうけれど、まずそこが間違っていたのさ』「って言うと?」『彼女は驚きはしたが、その場から離れることはなかった。むしろ逆だ』 セファーは人差し指を立てて説明し始めた。 『他の生徒が散っていく中、彼女だけは落ちた鳥に手を差し伸べ、その力で治癒した。そして騒ぎが収まった頃には鳥の翼は完治し、彼女の手から飛び去っていった。その様子を見ていた筋肉くんは彼女に声をかけ………まぁ君の言う以下省略といった具合さ』 他者を治療できるというシャノンの特別な力。 そして実際に会って感じた彼女の真っ直ぐな性格を考えれば、確かにやりかねない。 やりかねないとは思うんだけど……。 「嘘だろ……」『事実だよ』 素直に受け止めきれなかった。 あれだけのことが起こっても結局はジルベールとの出会いが発生してしまった事実を。 『ヒロインと王太子が出会う際にも言ったが、やはり小手先の介入では修正力に勝てず、大きな影響を与えることはできないようだねぇ』「くそ~……。運命には抗えないってやつか……?」 俺は頭を抱えてベッドにひっくり返る。 セファーの言う通り物語にちょっかいをかけても結果は同じになってしまう可能性は、俺の中でも捨てきれて
last updateLast Updated : 2026-06-27
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第16話 毛玉吐いてんのか?

「あいつ、今やったな」『【やった】の定義がわからないが、手を動かしたのは確かだねぇ』  人通りの多くはない歩道が見えるベンチで、俺はセファーに確認する。  生徒たちを眺めていると、目を惹く姿があった。 猫耳のように結んだ黒いリボン、そして横から見ると姿勢がやや曲がった使用人――サニィだ。 シャノンの世話は最低限しているようだけど、パーティの日のこともあり熱心に仕事をしているようには見えない。 そんな彼女が、お喋りをしながら歩く数人の女子生徒とすれ違った瞬間、俺は見た。  サニィの手が素早く動くところを。  俺はフィロメニアのことを一度頭の隅に置いて、歩く速度を速める。 すると頭の中にセファーの声が響いた。 『あれに声をかけるなら気をつけたまえ。彼女は獣人だ』『魔族なんて珍しい』『おや? 帝国の書物では獣人と記載してあったが、こちらでは違うのかねぇ』『さぁ。こっちじゃケモミミだろうがケモ顔だろうが、魔族で括られてるな』 それは例の乙女ゲーでもそうだ。 獣人――つまり獣の身体的特徴を持つ人型の生物はゲームでも魔族と称されていて、主に敵として登場する。 俺がこっちにきて、そういった種族にも国があり、普通の人間と変わらない暮らしをしていると聞いて驚いたほどだ。 それほど、モルドルーデン王国で魔族を見ることは少ない。 あの黒いリボンはたぶん耳を隠しているんだろう。  俺は警戒心を強めて、サニィの前へと立つ。 「こんにちは。ちょっと時間いいかな?」  ◇   ◇   ◇ 「なんでしょうかー? あたし結構忙しいんですけどー」 学園を覆う高い壁のそばには木が多く植えられている。 だからこうして人気のない場所を見つけるのには苦労しない。 「すぐ終わる。――とりあえずポケットに突っ込んでるもの、全部出せよ」 
last updateLast Updated : 2026-06-27
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第17話 貴族主義めんどくせぇ

 そして、今日も俺は仕事を終えて自室に戻る。  まだ日も落ちていない。 もうフィロメニアが自分から悩みを打ち明けることはないだろうと諦めていたので、最短最速で身の回りの世話は終わらせた。あまりの早さにフィロメニアの方が目を回していたくらいだ。 俺はベッドに身を投げ出してセファーを呼び出した。 『ここ一週間のフィロメニアの様子、教えてくれるか? あの態度の手掛かりとかないかな』『あるんじゃないかな』 腕組みして真顔で言うセファーを叩き落そうと手を振る。 だが避けられてしまった。コノヤロー。 『早く言えし!』『聞かれなかったからねぇ』 協力的なのかそうでもないのかわからない神様を俺は睨む。 そんな視線もなんのその。セファーは手を頭の後ろで組みながら話し始めた。 『どうやら神殿の動きについて調べているようだよ。燃やしてしまったあの手紙も、ヒロインの入学に神殿が関与していることを示す内容だった。きっと何かを企んでいるんだろう』『その割にはなんのイベントも起こんないだけど』『いやいや、君の主がだよ』『え? フィロメニアが?』 俺は驚いてベッドから起き上がる。 『フィロメニアが企んでるのか? 俺に黙って?』『ああ、そうさ。というか……彼女は君を関わらせないためだろうねぇ。君が霊獣であることを口外しないよう徹底している。君は彼女が学園内で陰口を叩かれていることを知っているかい?』 俺は教室棟の中には入れないので、学生たちの噂話などは耳に入りにくい。 ぶんぶんと首を横に振って否定すると、セファーはため息交じりに教えてくれた。 『霊獣召喚に失敗した公爵令嬢、さ。ヒロインも同じような扱いだがね』「はぁ!?」 思わず声に出してしまう。 それほど貴族にとって霊獣という存在は大きい。  この学園に通うのならば、どんな霊獣だとしても召喚していることが絶対ともい
last updateLast Updated : 2026-06-27
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第18話 俺以外メイド失格だな!

「フィロメニア様が……内容はわからないけれど教師を相手に騒ぎを起こしているの! それになぜか殿下たちまで加わってて……!」 教師を相手に、という言葉に、俺は確信する。マリエッタだ。 何を考えているのかはわからないけれど彼女はひたくしに、一人で神殿という組織と戦っていたんだろう。 俺は自室のカギをリーナに渡しながら聞く。 「場所は!?」「教室棟の玄関ホールよ! けど私たち使用人は出入り――」「ちょっと行ってくる! 鍵頼む!」 そう言って駆け出したのは自室の窓だ。 両開きのそれを勢いよく開けると――そのまま外へ飛び降りた。 「ウィナ!? ここ三階……っ!」「知ってるー!」 リーナが慌てふためく声に、落下しながら応じる。 元々、俺は霊獣になる前から二階くらい高さを飛び降りることができた。今ならもっと上からでも怪我はしないだろう。 どうしてそんなことをしていたかと言うと、だだっ広い公爵家のお屋敷で一々廊下を歩いていては仕事が回らないからだ。 かといって廊下をドタドタ走ればメイド長に怒られる。 だから、窓から飛び降りて庭を走ってショートカットをするのだ。 時には屋根伝いに別館へ飛び移って開けておいた窓に滑り込りもしていた。 そんな運動神経に育ててくれた両親に感謝だ。メイドたるものこれくらいできないと。『この広い世界でもそんなメイドは君くらいだよ』『じゃあ俺以外メイド失格だな!』 言いながら、俺は柔らかい芝生に柔らかく着地した。 土もスカートに撥ねていない。ならばいい。 俺は全力でダッシュする。 歩道ではなく芝生を走り、邪魔な茂みを飛び越えて、一直線に教室棟へ向かった。 そうして辿り着いた先で俺は立ち止まる。  教室棟の大きな扉の玄関は開かれていて、その奥には溢れんばかりの人込みが出来ていた。 階段を上が
last updateLast Updated : 2026-06-27
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第19話 面白くさせてくれちゃって

「ウィナ……! 命令だ下がれ!」「おいおい。ここは使用人出入り禁止だぜ」 肩を掴もうとするフィロメニアの手を避け、ジルベールの睨みをスルーして、俺は観衆のド真ん中に立った。 俺がそこで深く一礼すると、それまでの喧騒が困惑の静けさに変わる。「僭越ながら皆様にお伝えしたいことがございます」  公爵家のメイドたるもの凛々しくあれ。 メイド長の言葉を胸に、喉を震わせると俺の声はロビーによく響いた。  こんな場所で声を上げれば、いくら俺でも心臓の鼓動が高鳴るのを抑えきれないだろう。 けれど、なぜか今は酷く落ち着いている。 「なんだなんだ?」「あれ、フィロメニア様の使用人でしょ?」  そうだよ。 俺は悪役令嬢の使用人。 場合によってはここにいる全員の敵になるかもしれない存在を主人にしているんだ。 「私、ウィナフレッド・ディカーニカは――我が主、フィロメニア・ノア・ラウィーリア様の霊獣にございます。故に代理人については不要。この決闘、皆様のお目を楽しませるものになるとお約束致しましょう」 周囲がしんと静まり返る。 そして、笑い声がそこかしこで上がった。「ははは! なにいってんだよあのメイド!」「使用人がでしゃばってくんなっつの」「フィロメニア様をかばってんじゃないの?」「じゃあ、あの小さい子が出てきて戦うの? いやいや、平民が魔法食らったら死んじゃうじゃない!」 反応は様々だ。 それでいい。その方が面白くなるだろう。  そんなことを考えていたら、フィロメニアに両手で掴みかかられた。 「ウィナ、お前はッ!」「なに? やり方が雑だからこうなってんだけど、なんか文句あるんですか? お嬢様?」 フィロメニアが言葉を詰まらせる。 彼女は腕力を強化しているのか、襟首を掴まれた俺は足が浮いてしまっていた。  正直
last updateLast Updated : 2026-06-28
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第20話 全力で来い

 Detoxification Progress Status…… 98%…… 99%…… ……Completed Checking All System……All Green ……Sentitive Mental Reboot ……Ready …… ………… ……………… 気がつくと、そこは白かった。 眠りとは違う、なだらかな意識の浮上ではなく、スイッチのオフオンに近い感覚だ。  夢……? 『うん。だいたい解毒は完了したね』『……ん!? なんだここ!?』 セファーの声がして、俺は夢の中ではないことを理解して仰天する。 けれども現実でもないことを同時に理解していた。 視界はあるが、体がないのだ。俺の。 意識だけが真っ白な空間に漂っている。 すると、目の前にセファーが現れた。 いつもの妖精のような手のひらサイズじゃない。 普通の人間サイズのように見える。 色のない背景も合わさって遠近感覚が狂っているように感じて、俺はわずかな眩暈を覚えた。 『半覚醒状態というのかな。この状態で話す方が君への情報伝達に時間を取られないからねぇ』『なるほど、わからん』『じゃあ状況を説明しよう。君は今、学園の医務室で寝ている。看病についてくれているのは王太子のメイドだねぇ』 相変わらず人の話を聞かない相棒だ。 仕方なく俺は話の続きを催促する。 『決闘
last updateLast Updated : 2026-06-28
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