Semua Bab 転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜: Bab 31 - Bab 40

42 Bab

31.湯上がりからの

 女子寮の浴場から上がり、シンプルなワンピースに身を包んで、前世の温泉のようにズラリと並んでいるドライヤーの一つを取りレッドブラウンの髪を乾かす。 魔法でポンと乾かすこともできるけれど、調整のために意識を集中しなければならない。集中を欠いて火傷をしても大変なので、日常的にはあまり魔法は使わない。 とはいえ、電気も魔法を使った発電システムによるものだ。女神様の力のようなイメージが電気に対してもあるので、過剰に使ってはいけないという意識を誰もが持っている。だから、テレビのようなものが開発されていないんだと思う。「ラビちゃん、これから行くんですよね?」 偶然一緒になったルリアンが話しかけてきた。あまり浴場で会わないと思ったら、いつも早めに入っているのね。「そうよ」「頑張ってください」 白のコットンの寝間着に着替えたルリアンが、火照ったニコニコ顔で両手を拳にしてグッと胸元で力を入れてみせた。「ええ。ちゃちゃっと終わらせてくるわ」「ふふっ、はい。行ってらっしゃいませ。もう暗いので、お気をつけて」「ありがと」 彼女にも間違いなくバレている。私がものすごく楽しみにしていることを。 談笑しながら自室へと戻り、すぐに制服に着替える。鏡の前でしっかりと髪を整えて――、「……よし」 湯上がりのせいで頬が少し赤い。 かっこ悪いかな。それとも、色っぽいと思ってもらえるかな。……外はもう暗いから分からないか。 思わず変な顔になってしまったのを誤魔化すように、もう一度髪にクシを通す。学園地図と文房具を斜めがけのコンパクトな鞄に入れて、折り畳みの杖も持った。 廊下に出ると、浴場へ向かう生徒と戻ってきた生徒がポツポツと行き交っている。「あら、ラビッツ様。もう寮の門限は過ぎているはずですが、何かありますの?」 いかにも出かける格好だものね。 彼女は貴族の知人だ。それ相応に振る舞わなければ。「ええ。頼まれ事がありまして」「あら」 軽く内容を説明する。「そんなわけで、私は記録担当よ」「大変ですのね。そして、さすがニコラ様ですわ」「ええ。たまにふざけてしまうこともあるけれど、学園のために尽くす方よ」 彼を立てるのも私の義務だ。「ふふっ、交流会のお二人はとても素敵でしたわ」 ふざけてしまうは余計だったわね……思い出させてしまった。「あ、あれは途中で
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-08-21
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32.夜のデート

「お待たせ」「じゃ、行くか」 月明かりの中で見る彼は新鮮だ。いつもとは違う特別感があって、まるでデートのような気になる。「許可、取れたのね」  彼の持っている杖は学園支給の折り畳みのものではない。安定して二人乗りができるくらいの大きさだ。ふわっと浮かび上がり、深い青の木目がほのかに光った。「バッチリさ。後ろ乗って」「ええ」 彼はこれから行うことについて、事前に学園の許可を取り、私にも一度報告に来てくれた。自前の杖を使う申請はこれから行うと言っていたけれど、全ての手続きを終わらせてきたらしい。私の杖の出番はなさそうだ。 ドキドキしながら、彼の後ろに横乗りする。落ちないように、ぎゅっとしがみつく。 ひと蹴り。 杖が夜空を滑るように上昇し、眼下の学園が遠ざかる。下では寮の灯りがキラキラと灯っている。「……綺麗」「だよな。びゅんびゅん行こーぜ!」 もうっ! ロマンチックな言葉の一つや二つ、くれたっていいのに。「まずは……っと」 彼が手を前に掲げると、あちこちから虹色の強い光が立ち昇った。頭上には夏の星座が瞬き、眼下には虹色の灯りが散らばる。視界いっぱいに光が煌めく光景は、とても幻想的だ。「えーっと。あっちに三、向こうには五……。思ったよりもあるな」「そうね。虹色にわずかには発光しているわけだし、見つけられなかった生徒は夜に探すことにしてもいいのに」「綺麗すぎて、皆昼間には見つけられなかったことにしそうだ」「……それはそうね」「夜のイベントにしてもいい気がするけどな」「確かに」 運営側が大変そうではあるわね。 ――って。「虹色の光、消えちゃったわね」 まったく数えてなかった。「この季節だしな。冬――夢結びの月のようには、いかないな。数は覚えた。生徒会から聞いた残りの数と同じだ。近づけば見えるし、行こう」「……よく覚えているわね」「この頭、記憶力いいんだよな。ちょっと血筋がいいからってずるいんじゃねーのって、自分に嫉妬するよ」 ふとした瞬間に、彼の能力の高さを感じることは多い。もう少し、かっこよく見せればいいのになんて思う。ひけらかすタイプではないのは、分かっているけど……。 それに、どうしてこんなに綺麗な景色が広がっているのに、いい雰囲気にならないんだろう。 ……私のせいなのかな。可愛げのあることを言えないから
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-08-23
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33.プール1

 ボトルフェスが終わってから、学園には相変わらずの穏やかな日々が戻った。 あの翌日はボトルを探しきれなかった生徒向けに、ラビッツのメモしたマップを元に場所が掲示され、無事に全員がボトルを入手した。フェスが終わったあとは、相手を見つけられなかったり見つけてもらえなかった生徒が生徒会へと報告し互いの名前を教えてもらう。それはそれであとから受け渡しが行われ、交流が生まれる。  あの夜のきらめきは、ずっと胸に残っている。ラビッツに頬にキスしてもらって、これから新たな関係が生まれる――、と思ったものの。『あれは、と、特別だったから。忘れて……ん、忘れてもらっても困るけど、気にしちゃ駄目なんだからね!』 と翌日に言われ、俺はどう動いていいのやら少し戸惑ったままだ。 ま、ツンデレだからな! 普段の態度からも、かなりの恥ずかしがり屋さんであることは理解している。少しずつ進展していることは確かだし、好意も感じている。焦らないようにしよう。 パトロール隊への小さな頼まれ事なんかもある中、一ヶ月が過ぎて六月の雨の時期も終わり、学園は一気に夏の色に変わった。プールの水面も、陽を跳ね返してきらめいている。「いやっほーい! プールだ!」「気持ち悪いプールにゃんね」「これを処理したら、プールだぜ!」「応援はするにゃん」 ……トラも俺に律儀に突っ込むよな。 この学園に水泳の授業はない。が、水魔法の練習のためのプールはある。水泳のためではないせいか、正方形だ。申請を出せば個人でも使用できる。人数制限はありつつ、他のグループと一緒になることが多い。水は自ら魔法で生み出さなくてはならず、一ヶ月に一度の全体清掃に駆り出される。ただの遊びでは使わないでねということだろう。 夏の季節になると申請者は多くなり……今、目の前にあるプールの中には、くらげもどきがたくさん蠢いている。 本日、土曜のおやつの時間に生徒の何人かがパトロール隊の部屋へと駆け込んできた。『パトロール隊の皆さん、すみません! 幻影魔法で遊んでいたら消えなくなっちゃって。プールを管理している職員さんにも許可はとったので、よろしくお願いします。お任せする形で、僕たちはもう全員プールからあがりました』 リュークが浄化魔法を使えることは、いつの間にかもう有名だ。剣術科で色々あったのだろう。ゲームでもそうだった。 
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-08-25
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34.プール2

 青く澄み切った空の下、俺たちは全力で遊んだ。「水を使った、かっこいい必殺技考えよーぜ!」「ニコラ、はしゃぎすぎ」「灼熱スプラッシュ!」「ま、待って! 今、炎出したでしょ!」「この辺だけ温泉になったぞ!?」「やっぱりニコラ王子はおバカ王子にゃんね」 と、自分たちの考えたかっこいい必殺技を披露もした。一緒にいることが当たり前になった仲間しかいないから、確かにはしゃぎすぎたかもしれない。 ベル子の「水割り」はまるでモーゼの海割りのようで(モーゼはラビッツにしか通じないけど)、どうしてそのネーミングなんだと笑った。オリヴィアの「レインボーシャワー」は綺麗だったし、リュークは「水面ダッシュ」とか言いながら忍者のように走っていた。ルリアンは「水球です〜」とふわふわさせて、ラビッツは「アクア・トルネード」と小さな水の竜巻を作ってから、「子供っぽいかなぁ」と恥ずかしがっていた。 我が嫁は、最高に可愛い。 早く本当の嫁にしたい。 一通り遊び、管理人室にいる職員に報告すると「ご苦労様、学園からの差し入れだよ」と「学園長の気まぐれバーガー」をドサッとくれたので、そのままプールサイドへと戻って皆でモグモグと食べた。ルリアンがなぜかレジャーシートまで持ってきていたので、ピクニック気分だ。 少しずつ日が落ちていく。「空が赤くなってきましたね」 誰もが自然と空を見上げた。 まるで絵画のようだ。雲の端が燃えるように輝き、プールの水面にもその色が映り込んでいる。風が少しだけ涼しくなり、さっきまでの自分たちの笑い声まで遠く感じる。「ずっと、こうやって皆と遊んでいたいです」  ルリアンの言葉に、誰もがうなずく。「うん。すごく楽しかった」 ベル子もよく笑うようになった。無表情キャラだったんだけどな。そんなゲームとの違いが嬉しい。「今から卒業するのが寂しくなるわね」「卒業してからも、毎年集まるのもいいかもしれないな。王宮にプールつくっとくぜ!」「……夏しか集まれないにゃんね」「俺の炎で温泉にしておこう」「加減が難しそうにゃん。普通にお湯を入れる方がいいにゃん。そもそもプールにする必要性を感じないにゃん」「……トラはほんとに律儀に突っ込むよな」 「ニコラ王子がおかしいだけにゃん」「まぁでも……」 リュークがポツリと呟いた。「皆で集まれたらいいよ
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-08-27
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35.ラッキースケベ1

 夏休みがやってきた。 王宮に戻るのは二週間が経ってからにすると伝えてある。課題に即した参考資料も学園の図書館にはある。皆と協力しながら課題やレポートを終わらせるつもりだ。他のメンバーもベル子とリューク以外は家へと一度戻るようで、皆して一緒に二週間で終わらせたいと気合いを入れている。 今まで何度もラビッツにお願いをしてきた。『どうしても、ポチの部屋が気になります! 俺が行っちゃいけない理由を教えてください、ラビッツさまぁ!』『言わないったら言わないし、行かないったら行かないの』 他のメンバーに聞いてはいけないような空気を感じたので、リュークにしか話は振っていない。リュークは、『ラビッツがいいんならいんじゃないか? 俺が浄化できないのはまぁ……元持ち主への同情かな。残ってしまったあの願いを誰かが叶えてやってもいいんじゃねーのと思ってさ。やる気が出ないと、浄化できないからなぁ』 と言っていた。 もう気になって仕方がない。 最近はラビッツもやり取りに疲れたのか、少しずつ情報が漏れていた。『呪いが発動すると……たぶん、私だけ酷いことになるのよ。たぶんニコラもキツイと思う』『ラビッツと俺が!? よく分からないが、そんなのをずっと学園に置いておくのも、さすがに問題だろう。俺たちが卒業したら、他のパトロール隊に見つかるだろうし』『それは、そうかもしれないけど』『もう、管理だけ俺のとこでなんとかしようか? 王宮のどこかの部屋に置いておこう。侍従に取りに行ってもらうよ』『ま、待って。そこまで大事にしなくても』『でも、リュークにすら無理なんだろう?』『そうだけど、もう少し待って』 と、少しずつ心が動いている様子だった。 思念の内容が気になるのもあるけど、正直リュークにすら浄化が無理なものが学園にあるというのは、かなり気持ち悪い。あまりいいことには思えない。『どうしても、どうしても知りたいのなら……一応、大雑把な呪いの内容だけはリストで見ることはできるけど。部屋に置いてあるし』『ラビッツから聞くことは?』『口にしたくない。でも……行かないで。どうしても行くなら他の物には触らないでね』 ということで、俺は皆がまだ来ないだろう朝早くに、ポチの部屋にやってきた。心配させないよう、誰にも伝えていない。ひっそり確認するだけだ。リストを読んだら、すぐに戻
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-08-29
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36.ラッキースケベ2

「こんなドロドロで自分の部屋を汚したくないわよ」「自分の部屋じゃなくても……」「こんな格好で他の場所なんて行けない」「うっ」 自分たちの姿を改めて見る。 エロい。 どこからどう見ても、エロい。「それに……真実の愛を見つけられないまま、逃げるの?」「えっ」「私たちの間には……やっぱり、まだないの?」 瞳がうるんでいる。唇はかすかに開かれ、吐息に混ざった甘い香りに理性が溶かされそうだ。 喉が乾く。いや、体全てが乾いているようだ。駄目だと分かっているのに、全て欲しくなってしまう。「前世……でも、よく知らないけど真実の愛なんて用語が流行ってたよな。何をもって真実の愛だったのか知っているか?」 逃げた、のかもしれない。 ラビッツの問いから。「真実の愛に目覚めたからって、婚約者に婚約破棄された女の子が幸せになるストーリーが流行っていたわね。こっちでも一時期流行っていたわよ、翻訳本がね。今はちょっと……違うのが流行っているけど」「それは真実の愛じゃないんじゃ……」「違うわね。大体ざまぁされる側の勝手な言い分よ」「参考にならないな」「ならないわね」 これの持ち主が何をもって真実の愛だと思っていたのかによるのか……。 思念は、叶わなかった強い願いが叶わないまま残ると形になってしまう。この持ち主は、真実の愛を見つけられないまま人生を終えたのかもしれない。「真実の愛ってなんだー!」「あっ、ネズミ人形のしっぽに引っかかって……っ」「えっ」 ラビッツの水着がずらされていく!?「おいっ、返せって。うわ、また滑って――」「ちょっと、どこ触ってんのよ!」「手がっ! 手が離れないっ!」「離れないことある!? あぁもうホックも外れた!」「離したくない!」「もー! エロ王子!」「布団だ、布団で隠せ! 根性で上がるぞ! ほら手を出せラビッツ」「手を出したら見えるでしょうが!」「あっそうか。よし、俺が。よーいしょっ。ああぁ!」「ちょっと! どこに顔埋めてるのよ!」「ぶもももも」「変なとこでしゃべらないで!」 次から次へとラッキースケベが引き起こされていく。もはや止めようがない。「もう限界だ、ラビッツ。責任とるから襲わせてくれ! あとでいくらでも謝る!」「もう少し頑張りなさいよ!」「無理なんだぁ〜!」 態勢を変えて組んず解れ
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-08-31
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37.秋

 夏休みはラビッツとたくさんデートに行った。どうしても護衛は必要だったけど、満喫したと思う。 魔法で動く仕掛け満載のアスレチック・ワールドや、幻影迷路まである遊園地。植物園ではしゃべる珍しい花なんかも見た。魔法世界を二人で存分に楽しんだ。 デートの終わりには小さくキスをさせてくれる。『ラビッツ』『……ん』 いつもの終わり。 あの深いキスを知っていると少し寂しさもあるけど、目をつむって待ってくれるのが可愛すぎて尊さまで感じる。 ――学園に戻る前、王宮の静かな書斎で父に呼び止められた。 父は椅子に腰掛け、静かに俺を見た。金糸のように輝く髪、碧眼は鋭く深い。俺も同じ金髪で碧眼なのに、父の纏う空気には遠く及ばない。「ずいぶんと入れ込んでいるようだな」 低く、重みのある声だ。どこか探るようでもあり、少しだけ心配も滲んでいた。前世とは違って父親との距離は遠いものの、家族の絆は感じている。「そうですね。ラビッツに恋してます愛してます離れてる時間が辛くて仕方ないです今すぐ彼女の元へ飛んでいきたい」 一瞬、父の眉がぴくりと動いた。まだまだ子供のような話し方をするとでも思われたんだろう。「そ、そうか……」 引かれたのは気にしない。 何が起こるか分からないからな。前世だっていきなり人生が終了したわけだし、正しく現状は伝えたい。「ゴホン。もうすぐ秋だ」「はい」「そして冬がくる」「はい」 父は立ち上がり、窓辺へと寄った。王の風格が漂っている。その佇まいを見ると、いつか国王陛下になることへのプレッシャーを強く感じる。「お前にはこれから……例年の行事の遂行をする義務が生じる。夢結びの儀だ。学園にいる間は、学園で行う」「父上がそうしたようにですよね」「そうだ」 このゲームが「泣きゲー」と言われるゆえん、それが始まってしまう。「それで……だな。秋になると、もしかしてなんだが……」「知っていますよ」「……なんだと」「秋になれば、あの少女が現れる。父上の時と同じように」「……!!!」 父の顔に驚きが広がる。 ゲームのニコラは、それとなく父親から聞かされていただけだった。だから、その時が来るまで心を痛めながらも傍観者に徹していた。 十二月は夢結びの月。 人の願いが光となる。 伝統的に王家の者が「光の塔」にて人々の願いを空へと昇らせる。夢
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-09-02
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38.その少女は

「みんな、おっまたせ〜っなのです!」 元気いっぱい花丸印☆ といった様子で、彼女がパトロール隊室へと飛び込んで来たのは十月に入ってからのことだ。 薄い水色のツインテールを左右に揺らしながら、黄色いリボンをぴょんぴょん跳ねさせている少女。 ――わずかな間。そして。「今日はどうして遅かったんですか、セイナちゃん」 初めて会うはずなのに、ルリアンはいつも通りの笑顔を向けて。「栄養補給をしていたのです! 今日も美味しかったよぉ、購買の怪獣キャンディちゃん」「にゃーはアレ、嫌いにゃん。舌が不気味な色になるにゃん」 トラは訳知り顔で話に乗り。「えっ。ネコちゃんまで食べたって売り出せば、大ヒット受け合い! これは、チャンスなんじゃないですか〜!」「やめなさい。普通の猫がお腹を壊すわ」「ああ〜っ、盲点だった。さすがオリヴィアさん、痺れちゃいます!」 オリヴィアも当たり前のように受け入れて。そしてベル子も。「私は購買の駄菓子だと、なぞなぞガムが苦手……解けなくてモヤモヤする……」「えっ、答えも書いてあるのに!?」「見たら負け……」「何に負けてるのか分からないですよ?」「自分に」「きゃぁっ。かっこいいのです!」 おかしな丁寧語がよく混じる、初めて見るはずの女の子。 セイナ・ラミエル。 彼女がやってきた。 そして俺たちは……。 さっき部屋に彼女が入ってきたその一瞬で、記憶にある過去が書き換わっている。「遅刻ではないから気にしなくていいわよ。ルリルリはまだペンデュラムを取り出してもいなかったし」 ラビッツは俺をチラリと見てからいつも通りを装って。「ギリギリセーフでしたか!」「お前が皆を待たせてたんだろ」 リュークがセリアの額を小突く。 とても親しそうに。「うぎゅ。リュークくんだって、美味しいって言ってたよぉ」 そう。リュークはさっき、ルリアンの後ろから入ってきた。「お前に付き合っただけだ」 違う。 ゲームと違う。 俺は心臓の音をバクバクと感じながら流れにのる。「つまり、二人そろってベロが怪獣色になっているわけか。今日は何色なんだ?」「ひぃほぉひぃ〜」 んべっと出したセリアの舌は緑色に染まっている。怪獣色に染まるのが怪獣キャンディの特徴だ。 またもやリュークが彼女を小突いて。「ベロを出しながら答えるな、何言って
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-09-04
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39.アナザーストーリー1

 終わらない夢を見ている。 ずっとずっと長い間。 大人になれず。 どこにも行けず。 ただこの場所で。 誰かにとっての大切な時間を見ているだけ。「来たぞ、セイナ。あいつの息子が。ニコラ・スタッドボルトが」「えっ。とうとうバルト王子の息子くんが来たの!」「もうあいつは国王陛下だ。ニコラが王子だよ」「……自分の名前も顔もイカツイって気にしてたから、息子くんの名前は軽い響きのニコラくんにしたのかな」「さぁな。ほら、感じるだろ? 学園に入ってきた」 ほんとだ。 バルトくんと同じ匂いがする。 存在の香り。 女神様に愛されている匂い。 学園の中から感じる。 ……隣にいるのは友達かな。 目をつむって集中さえすれば、学園内だけなら|視《・》|る《・》こともできる。声も聞こえる。「ん? ニコラくんは、なぜか先生と似た香りがしますよ?」 あとから来た女の子もだ。 少しだけ異質な……。 今までは先生からしか感じなかった。だから、同じ香りが自分もすると思っていた。でも、違ったのかもしれない。「俺もちょっと訳ありだからなぁ……」「これだけ長い付き合いなのに、まだ隠し事が!?」「ふっふっふ、その通りだ。気になるだろう」「人間、一つや二つ隠し事くらいありますよね。それよりニコラくんです」「スルーされた!?」 おじさんは油断するとすぐに説教くさくなるからなぁ。スルーが一番だよね。「今度こそ私……」「ああ、きっと大丈夫だ」 ――どうして私がまだここにいるのかは分からない。 きっとまだまだ足りなかったんだと思う。だってあの時、バルトくんも皆も悲しそうにしていたから。私の最期を皆、知っていたから。死んだはずの私が現れて、楽しく一緒に過ごすなんてできない。そんなこと、分かってた。 楽しい学園生活を夢見ていた私の願いが大きすぎて、足りなかったんだ。 今なら。 私のことを知らない人たちと一緒なら、きっと楽しいだけの時間を過ごせると思う。未練もきっとなくなる。 そうして今度こそニコラ王子に、天に還してもらうんだ。 ◆ 彼女を見た時、なぜかそのままふっと消えてしまいそうに見えたんだ。溶けてしまいそうだと。  「何やってるんだ?」「うぎゅ!? わ、私のことが見えるんですか!?」 入学式を終えて、一人になりたくて旧校舎へ来た。普通は立ち
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-09-06
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40.アナザーストーリー2

「パトロール隊の活動、すごく楽しそうだね」「ああ。顧問の言ってた通りになったな」 ニコラとは学科が違うことだし、俺はパトロール隊室に入る前に、いつもこの旧校舎の屋上へ寄ってセイナに会っている。入口近くを上から眺めながら雑談し、パトロール隊のメンバーが集まった頃に俺も部屋へと入る。 案外皆、上は見ない。「先生も、トラちゃんのことは意外だったみたい」「そうなのか?」「ネコキャラがいるとは聞いてないな……とかなんとか言ってた。なんだか寂しい。先生だけは、私と同じものを見てるんだってずっと信じてたのに」「前世を覚えていると」「うん」「俺も寂しいよ。俺の知ってるニコラとラビッツとはさ、やっぱり少し違うんだよ」「あははっ、寂しい同盟だね」 伊達に幼馴染をやってたわけじゃない。というか、ニコラは隠さなさすぎる。『飯の美味い世界でよかった』とか、隠す気があったら言わねーだろ。「ま、バカなままだけどな」「いいな、羨ましい。私には仲のいい友達なんていなかったから」「そうなのか?」「うん。学園でも、仲がよくなる前に……ね」 こんなに毎日のように会っているのに、まだセイナについて何も知らないんだなと思う。「変な丁寧語を使うからか? 今はなくなってきたけどな」「し、失礼だよぉ。だって、私すぐに距離感間違えちゃうから。それで引かれちゃって、ひとりぼっちになっちゃうの。だから、気をつけようとしてるんだよ」「そんな理由か」「うぎゅぅ……」 金持ちの愛人の子。 母親も奔放。 父親の金でお手伝いさんが世話をしてくれたものの、愛に飢えている。だからこそ、距離感を間違えるんだろう。 家庭教師もつき頭はよく魔法の才能もあったので、学園に入って学園警備隊の話を持ちかけられ、ニコラの父親と共に活動し……死亡、か。「ま、話したいように話せばいいさ。皆、いい奴らだしな。距離感だっていくらでも間違えたらいい。フォローしてやる」 そういえば、ルリアンも丁寧語で話す。あっちは祖父母にそう教育されたらしい。家族相手でも誰に対してもそうするようにと。もう癖だと言っていた。「うん。その時が来たらそうするね」「皆に姿は見えなくてもさ、参加したらどうだ」「……そんなの、リュークくんが誰もいない空間に向かって話す、変な人になっちゃうよ」「事情を皆に俺から伝えればいい」「
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-09-08
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